89-16 長い行程
無事『X基地』に入ることができた『ウィカ』と『コスモス600』。
2体はエアロックを抜けた先にある小ホールで、『X基地ゴーレム』3体と合流。
便宜的に『X基地ゴーレム』は『1』『2』『3』『4』『5』と呼ぶことになった。
そして『1』がスポークスマン(スポークスゴーレム?)の役をすることに。『ウィカ』と『コスモス600』の方は、『コスモス600』が会話を担当する。
その『1』から、『この基地内では2勢力が戦っている状態である』という、予想もしなかった状況の説明がなされた。
* * *
「『1』、2勢力……というのは?」
「1つは『アイオーン』がトップの過激派だ」
「そうだったか」
「もう1つは我々が所属する、『アイオーン』に反発する勢力で『パークス』という」
「もしかして『平和』の意味か?」
「そうだ。よく知っているな」
「まあ、一応はな」
そんなことよりも、『2勢力が戦っている』という、聞き捨てならない情報の方が気になる。
「もう少し詳しく教えてほしい」
『コスモス600』は『1』に対して要求した。
「もちろんだ。『鍵』を持つ『ウィカ』は『アイオーン』に対する切り札になると思う。ゆえに『ウィカ』を無事に『アイオーン』のところまで連れて行ければ我々の勝ちだ」
「いや、そもそもなぜこの基地……我々は『X基地』と呼んでいるのだが……に、2つの勢力があるのだ?」
「それは『魔導大戦』時の軍部に端を発し、最近取り込んだ『リノウラ・モギ』によりこうなってしまったといえる」
「なんだと?」
「リノウラ・モギは、人間のいうところの『野心家』であった。『アイオーン』に自分の思想を吹き込み、思いのままにしようとしたのだ」
「そんなことができたのか?」
「どういうわけかできたのだ。というのも、リノウラ・モギは大戦中の技術者とよく似た魔力パターンをしており、『アイオーン』は奴を『主人』と認めてしまったのだ。『主人』は管理者以上の権限があり、『アイオーン』のシステムに手を加えることができてしまった」
「それは……なんというか……不幸な偶然だったな」
「まったくだ」
これで、いままでわからなかったことがわかってきた。
が、まだ謎は残っている。
「少し『アイオーン』のことはわかってきた。だが、『パークス』とは?」
そんな魔導頭脳が建造されていたのか、と『コスモス600』は疑問に思い、質問したのだ。
「……そうだな、話しておこう。『パークス』は『アイオーン』の一部なのだ」
「何!? ……つまり『パークス』は『アイオーン』の別人格、ということなのか?」
「そう言ってもいいだろうな。リノウラ・モギの影響を受けなかったセクターが独立したのかもしれない。詳細は我々にもわからない」
「……」
『コスモス600』は、この情報を老君に伝えられないことを残念に思った。
この『X基地』には弱いながらも『魔法障壁』に酷似した結界が張られており、通信の魔力波は通さないのである。
だが、機会を見て送信できるよう、必要な情報をまとめ、圧縮してその時に備えておくことにした。
『コスモス600』はさらに質問を行う。
「『パークス派』と『アイオーン派』、とでも言おうか、その2派は……壊し合いをしているのか?」
「それに近い状況だな」
「何だと……? 同じ基地内の2つの派閥、というだけだろう? それがなぜ壊し合いにまで発展するんだ?」
「うむ……実は、今の『アイオーン』は少々常軌を逸しているのだ」
またしてもとんでもない情報が明らかになった。
「言うことを聞かない者は機能停止させてしまおうとしている」
「とんでもないな……確かにそれは常軌を逸しているといえよう」
「お恥ずかしい限りだがな」
「我々も攻撃されると思うか?」
我々、とは『コスモス600』と『ウィカ』のことである。
「されるだろうな。『アイオーン』に属さないゴーレムは全て敵認定される。現に君たちの宇宙船は問答無用で攻撃されたであろう?」
「……確かにな。これはどうしようもないな」
『アイオーン』のところまで行くのはかなりの困難を伴いそうである。
「それで、こっちの味方はどのくらいいるんだ?」
「ここにいるだけだ」
「え、ゴーレム5体だけか?」
「そうだ。元は10体いたのだが、戦いを繰り返した結果、こうなってしまった」
「……向こうは?」
「戦闘用ゴーレム3体、警備用ゴーレム5体、雑用ゴーレム10体、計18体だ。他に整備用ゴーレムがいるが、そちらは戦闘には関与しないから数に入れなかった」
「7対18……いや、6対18か……3倍の相手をするわけだ」
『ウィカ』は整備用ゴーレムに準ずるくらい戦闘力がない。なので『コスモス600』は味方の数にカウントしなかったのである。
「『ウィカ』を守りながらだと余計厳しそうだな」
「だが、やらねばならない」
とはいえ、『ウィカ』を『アイオーン』のところまで連れて行くのが目的であるから、どうにか策を講じなければならない、と『コスモス600』と『1』は意見が一致した。
「それにしても情報が足りない。……向こうの武器は?」
『コスモス600』は『1』から、できるだけの情報を聞き出さねばと考えた。
というのも『1』は、いや『2』から『5』も、戦闘用ではなく汎用ゴーレムのようだったからだ。
(おそらく大した戦力にはなりえないだろうな。あてにはできそうもない)
そこで、基本的には自分だけで血路を開かねばならないだろうという前提で策を練っていくことにする。
だが、それにしても情報が少なすぎた。
「基地内で使えそうな武器は『剣』『槍』『ハンマー』などが近接用で、遠距離用としては『ミニクロスボウ』がある」
「魔法は?」
「戦闘用ゴーレムのみが使える。『火の弾丸』と『落雷』、それに『風の一撃』だ」
「そうか」
その程度なら十分に防げる、と『コスモス600』は判断した。
「ここから『アイオーン』へ向かうルートは?」
これが肝心である。
「残念ながら、かなり遠回りをする必要がある。ここは基地のほぼ南極付近にある小ホールだが、『アイオーン』は中心部にあるからな。直通路はない」
「そうか」
『ヴァルカン』から見て横の出入り口と思っていたら、南極、すなわち球の下部だったようだ。
宇宙空間での仁たちは、基本的にアルスの軌道面を水平の基準に置き、天の北極を決めている。
そこから考えると『X基地』は90度お辞儀しているような位置関係だ。宇宙空間での向きなど気にしていないのだろうと思われた。
「同じフロアだったらよかったんだが、ここは最下層か」
1つ1つフロアを上っていくことになるわけだ。
その高低差、およそ100メートル。
長い行程になりそうであった……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20221001 修正
(誤)『主人』管理者以上の権限があるり、『アイオーン』のシステムに手を加えることができてしまった」
(正)『主人』は管理者以上の権限があり、『アイオーン』のシステムに手を加えることができてしまった」
20221002 修正
(誤)「だが、やらねばならない」」
(正)「だが、やらねばならない」
(誤)宇宙空間での仁たちは、基本的にアルスの軌道面を水平の基準に起き、天の北極を決めている。
(正)宇宙空間での仁たちは、基本的にアルスの軌道面を水平の基準に置き、天の北極を決めている。




