88-06 会議と手伝いと
『こそ泥ゴーレム』の行動が大分わかってきたところで、今後の行動指針を決めようということになった。
メンバーは『アヴァロン』最高管理官トマックス・バートマン、最高管理官副官イルミナ・ラトキン、世界警備隊情報局局長マーカス・ハガード、アヴァロン技術管理官リンカス・カンデ、アカデミー技術指導主任アーノルト、そしてデウス・エクス・マキナ3世。
「俺としては、『フェニーチェ』の量産を一刻も早く進めてほしいと思っている。敵……とりあえず『敵』と呼ぶぞ、敵飛行船の速度は高いからな」
「そのようですな」
時速350キロは、今の『アヴァロン』が所有する航空機では無理な速度だ。
「俺が手伝ってもいいから、『アヴァロン』に1機でも2機でもいい、配備するんだ」
「マキナ殿がそう仰るなら、非常事態ということで、最高管理官権限で指示を出しましょう」
「そうしてくれ」
トマックス・バートマンは、こうした判断が早く、適切だ。
その分、彼に掛かる責任の重圧は大きく、副官や秘書らがしっかりとサポートする必要がある。
「それから、この件をどう収束させるかだ。『採掘量』を元に戻すのを優先するなら『こそ泥ゴーレム』を捕まえるなり破壊するなりすればいい」
「そうですな、これは議論が必要でしょう」
ということで、会議の参加者たちはこれについての議論を交わした。
「1箇所でも『こそ泥ゴーレム』を捕らえたなら、操っている奴は気付くでしょうな」
「むしろ気付かないほうがおかしいでしょう」
「うむ。その場合、全部の『こそ泥ゴーレム』を引き上げるでしょうな」
「飛行船も引き上げるでしょう」
「そうなると、その飛行船を追跡できるかどうかが鍵ですな」
「マキナ殿、どう思われる?」
「……」
マキナは少し考えるふりをしてから答える。
実際にはコンマ数秒で結論は出ているのだが。
「これ以上資源を奪われるわけにもいかないと思う。だから『こそ泥ゴーレム』を捕らえ、飛行船を追跡することに賛成だ」
「おお」
結局、紆余曲折はあったが、マキナの言うとおり『電撃作戦』的に、11箇所全てで『こそ泥ゴーレム』を確保し、飛行船も拿捕する方向で作戦を立案しようということになる。
「『こそ泥ゴーレム』の確保はそれほど難しくないと思う」
マキナが言った。
「飛行船に比べ、大したことはなさそうだ」
「ふむ、マキナ殿がそう言うのでしたらそうなのでしょうな」
「つまり、我らのゴーレムで捕まえられると?」
「そうだ。だが、飛行船はそうはいかないだろう。時速350キロ以上出せると思わないといけないだろうな」
「それは確かに『フェニーチェ』が必要でしょうな」
高速な航空機の必要性に関しては異議は出なかった。
が、別の意見が出る。
「いや、待ってくれ。『フェニーチェ』でどうやってその飛行船を捕まえるのだ? いや、『フェニーチェ』だけの問題ではない。飛行船をどうやって拿捕するというのだ?」
「そこを決めねばならないな」
「撃墜なら簡単……いや、撃墜そのものを簡単と言っているわけではない。撃墜する『手段』が比較的簡単だと言っているだけだ」
いろいろな意見が飛び交う。
「その飛行船の乗員と通信で話すことはできないのか?」
「それは不明だな」
「ならばなおのこと、どうやって拿捕するのだ?」
「機関を停止させ、強制着陸させるのはどうだ?」
「可能ならいいとは思うが、実際には難しいだろう。銃撃で機関を撃ち抜くことができるかどうか……」
現実に即した意見が多い。
そして技術的に足りない部分も見えてくる。
「飛行船がどこに戻るのか、それを突き止められればいいのではないか?」
「それも1つの案だな」
「そもそも、実現できないような案は検討の余地がないだろう」
などという意見も出る。
「うむ、現実的な話だと、『ゴーレムの確保は可能』だが『飛行船の拿捕は無理』だろうな。ならば『行き先を突き止める』なら出来そうということか」
「行き先を突き止めたなら『世界警備隊』で制圧することもできるな」
「いや、まずは交渉からだ。制圧は最後の手段だ」
「そう、だな。すまん、気が急いてしまった」
問題は『突き止めた』後のことも少し考えておかないと、そこで手詰まりになってしまいかねないことだ。
「突き止めた後はどうする?」
「世界警備隊が制圧することになるのだろうかな」
「問題は、それが可能なのかどうなのかだろう」
「正直わからんとしか言いようがないな……」
それはマキナも(老君も)同じ。
ただ、今回飛行船を見逃してしまうと、次に目にするのはいつになることか……
「やはり、数台はほしいところだな」
「理想論だけではだめだ。撃墜するか、あるいは帰っていく先を突き止め、何らかの手を打つことになるだろうな」
「どちらがいいんですか?」
「すぐには決めかねるな」
その時にならないとわからない、ということも多々ある。
会議はなかなか終わりそうもない……。
* * *
『マキナも苦労していますね。ここは、御主人様にも手助けしてもらいましょう』
蓬莱島の頭脳である老君は、デウス・エクス・マキナ3世が参加している会議の様子を傍聴し、そう結論した。
* * *
「何だって? ……ふんふん、そういうことか……また手伝いに行くか? ゴウとルビーナも連れて」
『それはいいと思います。お2人の技術向上にもきっと役立つと思います』
「そうか。……なら、連れて行く検討をしよう」
そういうことになったのである。
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本日7月28日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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を更新します。
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20220728 修正
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