88-07 サポート
「行きます!」
「行くわ!」
ロイザートにあるニドー家の屋敷。
仁が『アヴァロン』で『フェニーチェ』の量産化の手伝いをするという話をしたところ、ゴウもルビーナも大乗り気だったのだ。
「メルちゃんも行くわよね?」
「え? 私も行っていいのかな……」
「もちろんだよ。ねえ、ジン様?」
「ゴウの言うとおりだ。いろいろ勉強になるから、むしろ行ったほうがいい」
「それなら、行きたい……です」
「よし、決まりだな」
そういうわけで話はまとまり、翌18日の朝、『ハリケーン』で『アヴァロン』へ向かうこととなったのである。
* * *
「それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「ジン様、エルザ様、皆をよろしくおねがいします」
「ルビーナ、ジン様たちに面倒をかけちゃ駄目だよ」
「わかってるわよ、おばあちゃん」
ダイキとココナ、アマンダらに見送られ、仁、エルザ、ゴウ、ルビーナ、メルツェらは『ハリケーン』に乗り込んだ。
もちろん礼子も一緒だし、操縦士はホープである。
* * *
道中はまったく問題なく、予定どおりの時刻に『ハリケーン』は『アヴァロン』に到着した。
「ようこそ、ジン殿、エルザ殿、ゴウ君、ルビーナさん、メルツェさん」
トマックス・バートマンが一行を出迎えた。後ろには秘書自動人形のマノンが控えていた。
「出迎え、恐れ入ります」
「なんの。『魔法工学師』御一行を無視するなどということはできませんからなあ」
「……無理はなさらないでくださいね」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫、マノンもシモーヌもおりますので」
トマックス・バートマンはそう言って笑い飛ばした。
が、ここにはエルザがいるわけで。
「……閣下、それでも疲労が溜まっています。せめて睡眠時間は、1日7時間以上とってください」
と言われてしまった。
「は、はあ、エルザ様にそう言われては……」
だがエルザは、マノンとシモーヌの『製作主』にして『至上の主人』、仁に頼むことができる。その内容とは……。
「マノン、これから言う指示を、シモーヌにも伝えておけ。……トマックス・バートマン殿の睡眠時間を1日あたり7時間以上確保するように、と」
「はい、承りました」
「エ、エルザ殿、ジン殿……」
だが、エルザは真剣な顔でトマックス・バートマンに向き合い、
「閣下、今の『アヴァロン』には閣下が必要です。ですからどうか、ご自分を大事になさって、ください」
と訴えかけたのである。
「……エルザ様……ありがとうございます」
自分の健康を気遣ってくれたエルザに対し、トマックス・バートマンは深々と頭を下げたのだった。
* * *
さて、そんな一幕があったものの、仁一行は『アカデミー』にやって来た。
「ここもかなり組織が変わったという話だけど……」
1階エントランスの総合案内で簡単に説明を受け、『技術指導主任』であるアーノルトの部屋を教えてもらった。
在室だというので(もちろん『仲間の腕輪』で仁たちの来訪は前もって知らせてある)皆で訪問すると、
「やあ、いらっしゃい。よく来てくれたね」
「いらっしゃいませ、皆様」
と、上機嫌のアーノルトとその自動人形チェルに出迎えられたのだった。
* * *
アーノルトの執務室に招き入れられた一行は、チェルが淹れてくれたお茶を飲みながら話をしている。
「なんでも、『フェニーチェ』の量産化を手伝ってくれるという話だが?」
「そのとおりだ。元々『フェニーチェ』はゴウとルビーナの『ナイルⅧ』を元にした飛行機だからな」
「ええ、できることでお手伝いできたらと思いまして」
「それは助かるよ」
「ゴウとルビーナにとってもいい勉強になると思うから、手伝わせてやってくれ」
仁もそう言って2人の指導をアーノルトに頼むのだった。
「エルザはどうする?」
「私は、メルツェに付いていてあげる」
「そうだよな。そうしてあげてくれ」
「ん」
メルツェはこの機会に、『アカデミー』内の各研究室を見学したいという希望を出しており、ならばエルザが付き添う、という話になっていたのである。
ちなみに、デウス・エクス・マキナ3世は、昨日夜、一旦拠点の『アルカディア』に戻っている。
「俺は必要なところのサポートをするよ」
「そう言ってもらえると助かるなあ」
『技術指導主任』になったばかりのアーノルト。雑務レベルの仕事もかなり溜まっていた。
「そういえば、サポート用ゴーレムもいるんだよな?」
「うん、『サポ03』と『サポ04』が」
「その2体をチューニングしてもいいかな?」
「構わないよ。2体をもらった時に、『改造も好きにしてくれて構わない』と言われたから」
「よし」
そこで仁は、アーノルトの負担を軽減するための一手として、サポート用ゴーレムの改造をすることに決めた。
まず2体を作業台の上で停止させる。
それを、礼子を助手に解体していく仁。
2分で2体は解体されてしまった。
「ふうん、いい出来だな。これは元の『ゴー研』が作ったものかな?」
「その量産機だと聞いているよ」
「やっぱりな。グローマやエイラの癖みたいなものがところどころに見られるよ」
軽銀製の骨格を64軽銀に変えながら仁が呟く。
その手は止まることなく、筋肉組織、魔導神経線を次々に品質アップさせていく。
「『制御核』も少しグレードアップしよう」
仁は礼子に頼んで『ハリケーン』から『魔結晶』を持ってきてもらい、それを加工していく。
「これでよし、身体性能は2倍に、知力は5倍に上がったと思う」
ここまでの作業時間はおよそ6分。
ゴウとルビーナ、メルツェも見学していたが、その妙技に絶句していた。
だが慣れているエルザだけは、
「ジン兄、今日は少しゆっくりだった」
と悪気のない呟きを漏らしたのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220729 修正
(旧)ここまでおよそ6分。
(新)ここまでの作業時間はおよそ6分。




