88-01 新事実
6月15日、老君が『こそ泥ゴーレムが潜入している』と看破した11箇所の鉱山の1つに動きがあった。
そこはクライン王国の東の外れにある『チヒ鉱山』。
ここでは『魔結晶』の他にアダマンタイト鉱石が採れる。
そのアダマンタイト鉱石のおよそ4分の1が横取りされていたのだ。
発見したのは第5列の『レグルス15』通称『トム』と『デネブ2』通称『ルーシー』。
2体はクライン王国東部地域の担当だったため、『チヒ鉱山』に配属されたのである。
「老君へ連絡。チヒ鉱山東の無名峰より、アダマンタイト鉱石100キログラム相当を積み込んだ飛行船が発進しました」
『了解。監視を強化します。トムとルーシーはそのまま待機。飛行船が戻ってきたならまた監視に戻るように』
「了解」
* * *
『今回転送されるものは約100キログラムのアダマンタイト鉱石、これなら『転移探知システム』に引っかかるやもしれません』
前回はもっとずっと軽い魔結晶だったためか、『転移探知システム』に引っ掛からなかったのである。
果たして今回はいかに。
* * *
クライン王国東部の無名峰から飛び立った飛行船。
老君はそれを『覗き見望遠鏡』と『観察衛星ウォッチャー』を使い、追跡している。
『ドーサ鉱山にいた飛行船と同型ですね』
他の9箇所でも、同型の飛行船の存在を確認している老君である。
『しかし、飛行船を11隻もよくぞ作ったものですね』
これらは小型とはいえ、かなり性能がいい。
『飛行船には『魔法探求者』の色は見えないんですがね』
使役しているゴーレムにはまぎれもなく『魔法探求者』の色が見てとれた。
だが飛行船にはそれがない。
『リノウラ・モギ1人ではない……?』
そんな推測もしてみる老君だが、検証する術がないため、仮説にとどまる。
『しかし、特徴のある飛行船ですから、設計者の癖が出ているという可能性がありますね。ならばそうした技術者を当たっていけば、ルーツが分かるやもしれません』
老君はそう結論し、移動用端末『老子』を使い、飛行船について調べさせることにしたのである。
* * *
飛行船のスケッチを持った老子は、まずはヘールへ行き、『仁ファミリー』の面々にそれを見せることから始めた。
が、結果はゼロ。
今現在ヘールにいる『仁ファミリー』には、『飛行船』に関する手掛かりを持つ者はいなかったのである。
『では、次ですね……』
だが。
「老子、ちょっと待った」
アルスに戻ろうとした老子を、ラインハルトが止めた。
「まだ『長老』に聞いていないだろう? それから『紛い物』たち」
『確かにそうですね。ヘールに来たなら聞いておいたほうがいいでしょうね』
「僕はそう思うよ」
『ご助言、ありがとうございます』
* * *
『なるほど、確かに徹底しておいたほうがよいかもしれませんね』
老子がラインハルトに助言を受けたことで、操縦している老君は認識を新たにしていた。
『調査時間を優先するだけでなく、小さな可能性もまた無視してはいけないということですね』
正直な話、老君としては『長老』はともかく、『紛い物』に聞いてみようという気はなかったのである。
というのも、彼らの時代と現代とではあまりに時が隔たっているからである。
5000年以上も前の存在に現代のことを聞いてもわからないだろうと判断し、時間を有効に使うために次の調査に取り掛かろうと考えていたのだった。
『ですが、往々にして、そうした推測が的外れということもあるわけですね』
老君は早計な判断は禁物と、判断基準を上書き修正したのである。
* * *
『紛い物』たちは、もとは『始祖』であったが、不完全な魔導頭脳の中に意識を移植し、3000年以上そのままで過ごしていた。
それを仁たちに救われ、『自動人形』のボディを得て『人並み』の生活を満喫しているわけである。
「ふうむ……」
老子の話は、技術系の『ルサンク』が代表して聞いている。
「その飛行船とやらは、我々が子供用の乗り物としていたものに似ているな」
「子供用、ですか?」
「うむ。生まれる子供も激減していたが、それでも皆無ではなかった。そんな子供用の玩具として与えた乗り物に似ているのだよ」
「なるほど、参考になります。ちなみに、その仕様はどのような?」
「うむ……確か……」
『ルサンク』が語ったスペックは、ほぼ報告にあった飛行船と一致した。
ただし、その飛行船に『隠蔽結界』は搭載されてはいない。
また、浮力を発生させているのは『力場発生器』と類似した力場発生機であって、『重力魔法装置』ではないとのことだった。
「参考になりました、ありがとうございます」
「うむ、また何か聞きたいことがあったら来てくれ」
「ありがとうございます」
老子を通じてそんな言葉を聞いた老君は、『紛い物』たちは少々退屈しているのかもしれないな、と思ったのであった。
* * *
『決定的ではなかったとはいえ、収穫はそれなりにありましたね……』
老子が惑星ヘール訪問から戻り、老君は得た情報を整理し、新たな仮説を構築していく。
そうして真実に一歩一歩近づいていくのだ。
だが、残念なこともあった。
『アダマンタイト鉱石』100キロが転送された先を特定できなかったのである。
『かなり距離が離れているということなんでしょうね……』
老君はめげず、次の策を考え始めるのであった。
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