86-43 再会したが
テレジアと約束をした12時まで、仁Dたちはウラウの町巡りをして時間を潰した。
そして約束の時間、店の前へ行くと、テレジアが待っていたのである。
「久しぶりね、ロードトス。そちらの方は?」
「ああ、こちらはジンさん。そちらはレーコさん」
「ジン・ニドーです」
「礼子です」
ロードトスに紹介された仁Dと礼子は、それぞれ自己紹介を行った。
「え? え、ええと、もしかして『魔法工学師』のジン様、ですか?」
「そうだよ」
仁Dに代わってロードトスが答えると、テレジアは狼狽えた。
「え、ええええええええ!? ほ、ほんとに、あの?」
「どのなのかよくわからないけど、今代『魔法工学師』のジン・ニドーです」
「ええと、お、お会いできて光栄です!!」
深々とお辞儀をするテレジア。
仁Dを通してその慌てっぷりを見た仁は既視感を覚えた。
(ちょっとだけマリッカに似てるかもな……)
ロードトスと共にマリッカの教えを受けていたというのだから、そういう面もあるのかもしれない……とも思う仁だった。
「どこか、静かに話ができるところはないかな?」
「ええと、心当たりがないです……」
「じゃあ、昼休みって1時間くらいあるのかな?」
「あ、はい、1時半までです」
「そうか。じゃあ、『ハリケーン』へ行こう」
軽食なら出せるし、と仁Dは言った。
「え、ええ? 『ハリケーン』って、ジン様の乗機ですか? こ、光栄ですっ!!」
喜んでいるようなので、一行は早足で10分ほど歩いて『ハリケーン』へ。
「サンドイッチとおにぎり、どっちがいい?」
おにぎりとほうじ茶、あるいはサンドイッチとシトラン(オレンジ)ジュースは『ハリケーン』の定番である。
「あ、それではおにぎりで」
「私も」
「具は?」
「あたしはコンブがいいです」
「私はおかかで」
「よし」
そんなやり取りの後、仁Dはメジカ、テレジアはコンブ、ロードトスはおかかのおにぎりを食べた。
そして2個目は、仁Dは塩、テレジアはおかか、ロードトスは梅干し。
3個目……仁Dは梅干し、ロードトスはメジカ。テレジアは2個で終わり。
ほうじ茶を飲みながら、いよいよ本題に入る。
「それでだ、テレジア」
「はい」
質問はロードトスが担当した。
「……『販売代理店』のテツヤ・レアーラを知っているか?」
「……知ってるわ。付き合ってくれってしつこいのよ何度振っても言い寄ってくるの」
「それだけか?」
「あと何が?」
「暗示を掛けてはいないか?」
「暗示? ……えええ!? ま、まさか!」
「本当か?」
「本当よ!」
「……うーん……」
「な、なんでそんなことを?」
ここで仁Dが説明をすることに。
「実はな、今……世間に問題のあるゴーレムが広まっているんだよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。その問題というのを我々は『バックドア』と名付けた。あまり正確な命名じゃないが、そこは気にしないでくれ」
「は、はい」
「で、その『バックドア』というのは『制御核』に仕掛けられていて、『謎の黒幕』の信号に呼応して情報を送信する、またその命令を聞くようになる、というような働きがある」
「そんなゴーレムが増えたら一大事じゃないですか!」
説明を聞いたテレジアは憤った。マリッカに付いて工学魔法を学んだだけのことはある。
「その一部が『販売代理店』で行われていたんだ」
「ええ!? もしかしてそのテツヤ・レアーラが!?」
「残念ながら、そうだ」
「ええええ!? な、何やってんの、あの人!?」
「それが、調べてみると暗示を受けていてな……」
暗示、という単語を聞き、テレジアははっとした。
「それで、私のところに」
「まあそういうわけだ」
「あたしじゃないです。覚えがないです!」
テレジアは首を振り、全力で否定した。
その様子には嘘はなさそうなので、仁Dとしてもそれ以上追及しかねた。
「うーん……」
「ジンさん、テレジアも暗示を受けている可能性がありますから、それを調べてみましょう」
「あ、ロードトスの言うとおりです。調べてください」
「いいのか?」
「はい。あたしとしても、自分のことですから」
「わかった」
そこで仁Dは店員テツヤをマキナが確認したのと同じように、魔結晶にテレジアの深層意識までの転写を行う。
「『知識転写レベル6マイルド』」
そして転写した魔結晶に『知識確認』を掛けて必要な部分を解析。
すると。
「……テレジア、君もまた、『暗示』が掛けられているぞ?」
「え、ええ!?」
「ほら、ここ。……これによると、テツヤ・レアーラが言い寄ってきた時に『特定の内容』の暗示を掛け直す、となっているな」
「ええええ!?」
「その『特定の内容』は……ああ、『制御核を選別する際、一旦『銀色のトレイ』に1分以上置く』というものだ」
「覚えがないです……」
「そりゃ、暗示だからな。……しかし、君に暗示を掛けたのは誰だろう?」
「……わかりま……あ、もしかして」
「心当たりが?」
「はい。あたしをこの町のあのお店に斡旋してくれた人です」
「その人もノルド人?」
「そうです」
「なるほど、それならテレジアに暗示に掛けることもできるか……」
だがこれで、また1段階、手掛かりを遡ることができたわけだ。
「その人は?」
再びロードトスが質問する。
「『傀儡のラクスス』って名乗ったわ」
「どこで会った?」
「当時はテルルスの町で。職業訓練所みたいな『教室』があって、そこの講師をしていたの」
テルルスはセルロア王国リーバス地方最西部にある都市で、トーレス川のほとりにある。
川を渡ればすぐリツの町、そして首都エサイアだ。
「今もいるかはわからないわ」
「だろうな……」
だが、どんなに細い手掛かりでも、今は手繰ってみなければならない。
次の目的地はテルルスの町である。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日4月30日(日)は14:00に
『蓬莱島の工作箱』を更新します。
https://ncode.syosetu.com/n0493fy/
お楽しみいただけましたら幸いです。
お知らせ:急用で4月30日(土)昼まで不在となります。
その間レスできませんのでご了承ください。
20220430 修正
(誤)『制御核を選別する歳、一旦『銀色のトレイ』に1分以上置く』というものだ」
(正)『制御核を選別する際、一旦『銀色のトレイ』に1分以上置く』というものだ」




