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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
86 暗示事件篇
3296/4345

86-43 再会したが

 テレジアと約束をした12時まで、仁Dたちはウラウの町巡りをして時間を潰した。


 そして約束の時間、店の前へ行くと、テレジアが待っていたのである。


「久しぶりね、ロードトス。そちらの方は?」

「ああ、こちらはジンさん。そちらはレーコさん」

「ジン・ニドーです」

「礼子です」


 ロードトスに紹介された仁Dと礼子は、それぞれ自己紹介を行った。


「え? え、ええと、もしかして『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のジン様、ですか?」

「そうだよ」


 仁Dに代わってロードトスが答えると、テレジアは狼狽うろたえた。


「え、ええええええええ!? ほ、ほんとに、あの?」

「どのなのかよくわからないけど、今代『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のジン・ニドーです」

「ええと、お、お会いできて光栄です!!」


 深々とお辞儀をするテレジア。

 仁Dを通してその慌てっぷりを見た仁は既視感を覚えた。


(ちょっとだけマリッカに似てるかもな……)


 ロードトスと共にマリッカの教えを受けていたというのだから、そういう面もあるのかもしれない……とも思う仁だった。


「どこか、静かに話ができるところはないかな?」

「ええと、心当たりがないです……」

「じゃあ、昼休みって1時間くらいあるのかな?」

「あ、はい、1時半までです」

「そうか。じゃあ、『ハリケーン』へ行こう」


 軽食なら出せるし、と仁Dは言った。


「え、ええ? 『ハリケーン』って、ジン様の乗機ですか? こ、光栄ですっ!!」


 喜んでいるようなので、一行は早足で10分ほど歩いて『ハリケーン』へ。


「サンドイッチとおにぎり、どっちがいい?」


 おにぎりとほうじ茶、あるいはサンドイッチとシトラン(オレンジ)ジュースは『ハリケーン』の定番である。


「あ、それではおにぎりで」

「私も」

「具は?」

「あたしはコンブがいいです」

「私はおかかで」

「よし」


 そんなやり取りの後、仁Dはメジカ()、テレジアはコンブ、ロードトスはおかかのおにぎりを食べた。

 そして2個目は、仁Dは塩、テレジアはおかか、ロードトスは梅干し。

 3個目……仁Dは梅干し、ロードトスはメジカ()。テレジアは2個で終わり。


 ほうじ茶を飲みながら、いよいよ本題に入る。


「それでだ、テレジア」

「はい」


 質問はロードトスが担当した。


「……『販売代理店』のテツヤ・レアーラを知っているか?」

「……知ってるわ。付き合ってくれってしつこいのよ何度振っても言い寄ってくるの」

「それだけか?」

「あと何が?」

「暗示を掛けてはいないか?」

「暗示? ……えええ!? ま、まさか!」

「本当か?」

「本当よ!」

「……うーん……」

「な、なんでそんなことを?」


 ここで仁Dが説明をすることに。


「実はな、今……世間に問題のあるゴーレムが広まっているんだよ」

「え、そうなんですか?」

「うん。その問題というのを我々は『バックドア』と名付けた。あまり正確な命名じゃないが、そこは気にしないでくれ」

「は、はい」

「で、その『バックドア』というのは『制御核(コントロールコア)』に仕掛けられていて、『謎の黒幕』の信号に呼応して情報を送信する、またその命令を聞くようになる、というような働きがある」

「そんなゴーレムが増えたら一大事じゃないですか!」


 説明を聞いたテレジアは憤った。マリッカに付いて工学魔法を学んだだけのことはある。


「その一部が『販売代理店』で行われていたんだ」

「ええ!? もしかしてそのテツヤ・レアーラが!?」

「残念ながら、そうだ」

「ええええ!? な、何やってんの、あの人!?」

「それが、調べてみると暗示を受けていてな……」


 暗示、という単語を聞き、テレジアははっとした。


「それで、私のところに」

「まあそういうわけだ」

「あたしじゃないです。覚えがないです!」


 テレジアは首を振り、全力で否定した。

 その様子には嘘はなさそうなので、仁Dとしてもそれ以上追及しかねた。


「うーん……」

「ジンさん、テレジアも暗示を受けている可能性がありますから、それを調べてみましょう」

「あ、ロードトスの言うとおりです。調べてください」

「いいのか?」

「はい。あたしとしても、自分のことですから」

「わかった」


 そこで仁Dは店員テツヤをマキナが確認したのと同じように、魔結晶(マギクリスタル)にテレジアの深層意識までの転写を行う。


「『知識転写(トランスインフォ)レベル6マイルド』」


 そして転写した魔結晶(マギクリスタル)に『知識確認(リードインフォ)』を掛けて必要な部分を解析。

 すると。


「……テレジア、君もまた、『暗示』が掛けられているぞ?」

「え、ええ!?」

「ほら、ここ。……これによると、テツヤ・レアーラが言い寄ってきた時に『特定の内容』の暗示を掛け直す、となっているな」

「ええええ!?」

「その『特定の内容』は……ああ、『制御核(コントロールコア)を選別する際、一旦『銀色のトレイ』に1分以上置く』というものだ」

「覚えがないです……」

「そりゃ、暗示だからな。……しかし、君に暗示を掛けたのは誰だろう?」

「……わかりま……あ、もしかして」

「心当たりが?」

「はい。あたしをこの町のあのお店に斡旋してくれた人です」

「その人もノルド人?」

「そうです」

「なるほど、それならテレジアに暗示に掛けることもできるか……」


 だがこれで、また1段階、手掛かりをさかのぼることができたわけだ。


「その人は?」


 再びロードトスが質問する。


「『傀儡くぐつのラクスス』って名乗ったわ」

「どこで会った?」

「当時はテルルスの町で。職業訓練所みたいな『教室』があって、そこの講師をしていたの」


 テルルスはセルロア王国リーバス地方最西部にある都市で、トーレス川のほとりにある。

 川を渡ればすぐリツの町、そして首都エサイアだ。


「今もいるかはわからないわ」

「だろうな……」


 だが、どんなに細い手掛かりでも、今は手繰ってみなければならない。


 次の目的地はテルルスの町である。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日4月30日(日)は14:00に

 『蓬莱島の工作箱』を更新します。

   https://ncode.syosetu.com/n0493fy/

  お楽しみいただけましたら幸いです。


 お知らせ:急用で4月30日(土)昼まで不在となります。

     その間レスできませんのでご了承ください。


 20220430 修正

(誤)『制御核(コントロールコア)を選別する歳、一旦『銀色のトレイ』に1分以上置く』というものだ」

(正)『制御核(コントロールコア)を選別する際、一旦『銀色のトレイ』に1分以上置く』というものだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 86-43 再会したが 更新ありがとうございます。 [気になる点] 『そして転写した魔結晶《マギクリスタル》に『知識確認《リードインフォ》』を掛けて必要な部分を解析。』 うっかりテレジア…
[一言] >3個目……仁Dは梅干し、ロードトスはメジカ。テレジアは2個で終わり。 1個1合くらいのでかいおにぎりなので十分満腹である。 >「……テレジア、君もまた、『暗示』が掛けられているぞ?」 …
[一言] >>テレジアと約束をした12時まで、仁Dたちはウラウの町巡りをして時間を潰した。 仁は仁Dの操縦を変わってもらって部屋でのんびりしてたぞ! >>「え? え、ええと、もしかして『魔法工学師…
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