86-44 テルルスの町へ
テレジアから有益な情報を聞くことができた仁Dたち。
「とりあえず、テレジアに掛けられた暗示を解いてみるか」
「そうですね」
そもそも暗示なのか、解けるものなのか、試してみなくてはならない。
そして暗示を解くのはテレジアの希望でもあった。
「やってみるぞ」
「ええ、ロードトス、やってちょうだい」
「『desalusion』……どうだ?」
「…………うん、なんだか頭の中がすっきりしたわ」
「解除できたか、よかった」
どうやらテレジアの暗示は無事に解除されたようだ、と仁Dの目を通して様子を見ている仁もほっとした。
「ジン様、本当に解除されたか、確認してもらえません?」
「ああ、いいよ」
本人にとって不安があるのだろうと、仁Dは再び『知識転写』を使う。
「『知識転写レベル6マイルド』」
そして転写した魔結晶に『知識確認』を掛けて必要な部分を解析する。
「……うん、大丈夫だ。暗示は解除されている」
「ああ、よかった」
テレジアはほっと肩の力を抜いたのだった。
「ありがとうございました、ジン様。ロードトス、ありがとうね」
「ああ。……テレジア、ノルド連邦に帰ってくる気はないのか?」
「今のところないわね。……両親に会ったらよろしく言ってちょうだい」
「仕方ないな……わかったよ」
「頼むわね」
そしてテレジアは昼休みが終わる前に店へと帰っていった。
「テレジアのやつは、両親と大喧嘩して家を飛び出したんですよ」
「家出の理由は?」
「意に沿わない相手と婚約させられそうになったから、と聞いてます」
シオンから聞いた理由と同じであった。
誤解や行き違いなら、なんとか仲直りさせてやりたい仁であったが、
「そうか……。難しい問題だな」
第三者が気軽に口出ししていい問題じゃなさそうだ、と仁は思ったのであった。
* * *
仁Dと礼子、ロードトスらはこのまま『ハリケーン』でテルルスの町を目指すことにした。
「慌ただしいけど、いいよな?」
「もちろんですよ、ジンさん」
というわけで『ハリケーン』は一路テルルスを目指したのである。
その『ハリケーン』内で仁Dとロードトスは打ち合わせだ。
「私は『傀儡のラクスス』という人物は知らないのですが、大丈夫ですか?」
「それは心配ない。『知識転写』した魔結晶があるから、これを読み取れば相手の顔はすぐに分かる。それに名前は偽名かもしれないしな」
「ああ、そうでしたね。さすがジンさんです」
「老君ならすぐに写真を送ってくれるよ。……ほら来た」
そして仁Dは、老君から送られてきた『傀儡のラクスス』のモンタージュ(?)写真を見せた。
「ははあ、これがラクススですか」
『傀儡』氏族なので灰色の髪、金色の目の男性。やや背が高い印象を受ける。この点は偽っていないようだ。
外見年齢はローレン人の50歳くらい。なのでノルド人としては250歳前後だろうと思われた。
「やはり見覚えはないですね」
「そうか」
「しかし、この男が犯人なんでしょうか?」
「いや、これまでのことを考えると、この男も手先の可能性が大だ」
「そうなりますか……」
黒幕のトップがやることではない気がする、と仁Dは言った。
「なるほど、確かにそうかもしれませんね。この男も手下である、ということですか……」
顔を顰めるロードトス。
仁Dはさらに言葉を続ける。
「あと、もう1つ」
「何でしょう?」
「これはマキナからの情報なんだが、あのテツヤとかいう店員が学んだ『教室』がリマにあるそうなんだ。で、そこでテツヤは『暗示』を埋め込まれたらしい」
「そうなんですか」
「で、そんな『暗示』を埋め込める人間がそうそういるとは思えないから……」
「ああ、その『教室』の講師も『ラクスス』ではないか、と?」
「そういうことだ」
「……その人物の容姿は?」
「それも老君に頼もう」
そこで仁Dは老君からその『講師』のモンタージュも送ってもらうことにした。
テツヤの知識を転写した『魔結晶』もあるので簡単だ。
1分ほどで送られてきたそれは……。
「同一人物だな」
「まず間違いないですね」
髪を染めたかウイッグを被っているのか、そこまではわからないが、髪の色が焦げ茶色なこと以外、その『講師』は『傀儡のラクスス』にそっくりであった。
「とにかく、この人物を見つけたいものだ」
「いるといいんですが」
「行ってみるしかないな」
『ハリケーン』はテルルスを目指し、飛翔していく。
テルルスまではおよそ260キロメートル、時差は50分。
『ハリケーン』が時速260キロで飛べば、時刻のズレはほぼなしで到着できる。
実際、テルルス郊外の飛行場に着いたのは現地時間で午後1時だった。
* * *
駐機場に『ハリケーン』を預けた仁Dは、ホープを留守番兼整備のために残し、礼子、ロードトスらと共にテルルスの町へ。
「ジンさん、当てはあるんですか?」
「あるぞ。実は老君が『覗き見望遠鏡』で『教室』を捜しておいてくれた」
「す、すごいですね」
「老君は有能だからな」
とはいえ、わかっているのは『教室』であり、そこに今も『ラクスス』がいるとは限らない。
いや、むしろいない可能性が大である。
それでも、『ラクスス』がどこへ行ったのか聞くことができれば……と仁Dを操縦する仁は考えていた。
* * *
蓬莱島でも、老君がロードトスたちと同じ結論に達していた。
『問題は、その『傀儡のラクスス』がどこにいるか、ですね……』
どうやら頻繁に居住地もしくは拠点を変えているようで、なかなか尻尾を掴めそうにない。
だが老君には『覗き見望遠鏡』があり、人捜しに使うなら効果的である。
とはいえ捜すべき場所は広大で、闇雲に捜しまわっても、そう簡単に見つけられるとも思えない……。
『何かもう1つ、手掛かりがあればいいのですが』
テルルスの町を捜しまわりながら、老君は仁Dたちが何か手掛かりを見つけてくれることを期待したのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220501 修正
(誤)* * *」
(正)* * *
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(旧)
「意に沿わない相手と婚約させられそうになったから、と聞いてます」
(新)
「意に沿わない相手と婚約させられそうになったから、と聞いてます」
シオンから聞いた理由と同じであった。
誤解や行き違いなら、なんとか仲直りさせてやりたい仁であったが、




