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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
86 暗示事件篇
3295/4342

86-42 接触

 蓬莱島の夜。

 仁はロードトスをまじえ、近況整理をしていた。


「まず、大きく分けて2つの事件があったんだ。1つは『球形基地』でもう1つが『バックドア』」


 仁は、かいつまんで過去の事件の説明を行った。


「で、この2つはまったく別の背景を持つことがわかったのさ」

「大変でしたね」

「まあなあ。……蓬莱島だけで解決するならもう少し簡単だったかもしれないが」


 だがそれは、400年前の仁が失敗した道である。

 できる限り『今』を生きる人々の手で解決してほしいと思っているのだ。

 とはいえ、まだまだ仁のおせっかい……というと語弊ごへいがあるが……はなくならないが。


 閑話休題。

 仁はまず、ほぼ解決している『球形基地』についてロードトスに説明した。


「そうだったんですか。さすがジンさんですね。あとは掘り出す工事ですね」

「その前にセルロア王国に報告して正式に譲渡してもらう必要があるけどな」

「それは単なる手続きですから、技術的な問題はないですね」

「それはそうなんだけどな」


 本題はこの後、『バックドア』である。


「……と、いうわけで、いまだに『黒幕』にたどり着けないでいるんだよ」

「うーん……ジンさんがそう言うからには、かなり手強い相手なんですね」


 ロードトスも腕を組み、難しい顔をした。


「で、その手掛かりになりそうなのが、例の『テレジア』だ」

「あ、そうでしたね」


 店員その4……テツヤ・レアーラに『暗示』を掛けたのではないかと仁たちは思っており、調べてみようとシオンに尋ねたわけだ。


「ロードトスが顔見知りのようで助かったよ」

「ええ、1年ほど彼女もマリッカ様のところで工学魔法を学んでいましたからね」


 ちなみにロードトスはもっと長く学んでおり、自他ともに認める『マリッカの弟子』である。


 その後、翌日の打ち合わせを行ったあと、彼らはのんびりと休んだのである。


*   *   *


 25日。

 時差を考慮しつつ、仁D、礼子、ロードトスらは『ハリケーン』でウラウの町へ向かった。操縦士はホープだ。

 到着は現地時間で午前8時。

 『ハリケーン』を郊外に置き、仁D、礼子、ロードトスらはウラウの町へ。

 町の入り口で『第5列(クインタ)』のブラウとディーナに出迎えられた。

 経緯いきさつを知っているロードトスは特に驚くことはなかった。


「で、『テレジア』の居場所は?」

「はい、ジン様。こちらです」


 ブラウとディーナが仁たちを案内していった先は食堂であった。


「夜は酒場になります」


 テレジアはそこの看板娘だそうだ。


「食堂は9時に開きますのでもうすぐです」


 時刻は午前8時40分。

 ブラウがそう言っていると、店の扉が開き、ほうきを持った店員が出てきた。

 テレジアではない。

 赤髪を左右のおさげに結って姉さんかぶりっぽくバンダナを頭に巻いている。

 仁Dたちに気がつくと。


「あ、お客さんですか? もう少しお待ち下さいね」


 と言い、さっさかと店前を掃き掃除し終えると中へ戻っていった。


 このあたりは普通の店に見える。

 が、テレジアが働いている店なので、店長も疑ってかかる必要がある、と仁Dたちは再度言い交わしたのであった。


*   *   *


 午前9時となり、店が開いた。


「お客さん、どうぞ」


 その頃には仁Dたち以外にも2人の客が待っており、一緒に店内へ。

 中は高校の教室2つ分くらいの広さで、大きさの違う丸テーブルや四角いテーブルと椅子が並んでいる。

 右手がカウンターになっており、その奥が厨房のようだ。


(ふむ、いい材木を使っているな)


 仁Dの目で見ても、床、壁、天井、テーブル、椅子に使われている木材は上質のものであった。


(店はまとも……いや、これも偽装のため、欠陥を少しでも減らそうという意図があるのかもしれない)


 仁Dを操縦する仁はそう考えていた。


 とりあえず一行は席に着く。

 窓際の4人席だ。いているので問題ない。


「ご注文は?」


 先程の店員が注文を取りに来た。


お茶(テエエ)を3つ、それからケーキ(小)を1つ」

「かしこまりましたー」


 店員は朗らかに答え、戻っていった。


「……今のところ、全然怪しくないな」

「そうですね」

「ですが、『販売代理店』も見かけは怪しくなかったですよ?」

「そうだな、礼子の言うとおりだ」


 こそこそとそんな話をしているうちに、お茶(テエエ)が運ばれてきた。


「お、美味いな」

「ええ」

「美味しいですね」


 そして礼子はケーキ(小)も食べる。

 甘さもほどほどで万人向けの味だそうだ。


「さて、テレジアは……」

「あ、あそこにいました」


 仁Dたちと一緒に入店した2人組の方へ飲み物を運んでいる。


「……間違いない。テレジアですね」

「そうか。……どう声を掛けよう?」


 仕事中に無闇に声を掛けると営業妨害と言われるかもしれない……と仁Dは心配した。

 だが。


「おーい、テレジア!」


 ロードトスはそんな仁Dの懸念を払拭するように声を上げ、テレジアを呼ぶ。


「お客さん、店内で……あら?」


 一瞬顔をしかめたテレジアだったが、ロードトスの顔を見て表情が柔らかくなる。

 テレジアは『森羅しんら』の氏族らしくセミロングの銀髪、水色の眼をしている。

 可愛げのある美人といった容姿で、お客から人気があるのもわかるな、と仁Dは思った。


 そのテレジアは仁Dたちのテーブルまで歩いてくると、ロードトスと親しげに言葉を交わした。


「ロードトスじゃない! 久しぶりね!」

「ああ、ほんとだな」

「元気そうね。今日はどうしたの?」

「ちょっといろいろと仕事があってね」

「ふうん」

「そっちも元気そうでよかった」


 が、当のテレジアが仕事中である。


「今、お仕事中だから後でね」

「そうだな。昼休みならいいか?」

「いいわ。12時にまた来てくれる?」

「わかった」


 こうして、テレジアとの接触は成功したのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


お知らせ:急用で4月29日(金)朝から30日(土)昼まで不在となります。

     その間レスできませんのでご了承ください。


 20220430 修正

(誤)「で、その手掛かりになりそうなのだ、例の『テレジア』だ」

(正)「で、その手掛かりになりそうなのが、例の『テレジア』だ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] >が、テレジアが働いている店なので、店長も疑ってかかる必要がある ああ、それで、定食屋っぽい食堂にもかかわらず、注文内容が作り置きっぽい喫茶店メニュー……。 [気になる点] >「で、その手…
[一言] _| ̄|○ あっという間に読んでしまいました。
[気になる点] 細やかな誤字報告です。 >「で、その手掛かりになりそうなのだ、例の『テレジア』だ」 「で、その手掛かりになりそうなの『が』、例の『テレジア』だ」
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