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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
86 暗示事件篇
3294/4341

86-41 ナンパ相手

 ウラウの町の『販売代理店』では、『しのび部隊』が調査を続けていた。

 樹脂を塗布する工程がまだ不明だったからだ。


 老君の推測によると、梱包工程が怪しいという指摘がなされており、『しのび部隊』はそのあたりを重点的に監視していた。


(それでも、樹脂がどこからもたらされたかわからない)

(そうなんですよね)


 『しのびいち』と、『』が内蔵魔素通信機(マナカム)で会話をしている。


(店員その4……テツヤ・レアーラという前例があったのだ、他の店員にも気を付けねばな)

(と、すると怪しいのは店員1です)

(そのようだな)


 だが、店員その1は入庫担当である。

 どちらかといえば、怪しいのは梱包を担当している店員その2だ。


(真面目すぎる、というのもちょっと怪しいかもしれません)

(そうだな)


 余計な疑いをいだかれないよう、真面目に振る舞っているとすれば、それがかえって疑いを抱かせることになったわけだ。


*   *   *


 そして『第5列(クインタ)』のレグルス48『ブラウ』とデネブ12『ディーナ』。

 彼らもまた、老君からの指示により、店員その4……テツヤが『ナンパ』していた女性を密かに調べていた。


 そしてわかったこと。

 名前は『テレジア』。

 銀髪、水色の眼をしている。一人称は『あたし』。自称18歳。中肉中背。


「……『森羅しんら』の氏族じゃないかな?」

「だと思うわ」


 そう、身体的特徴がノルド人のそれで、特に髪色、目の色が『森羅しんら』氏族のものであったのだ。


「チーフに確認してもらおうか」

「それがいいわ」


 ブラウとディーナは、テレジアというその女性が、どうやらノルド人らしいと思い、仁を通じて『森羅しんら』氏族長の奥方で『仁ファミリー』の一員であるシオンに確認してもらおうと判断したのであった。


*   *   *


御主人様(マイロード)、と、いうわけなのです』

「なるほどな。そういうことなら『仲間の腕輪』でシオンに確認しよう」


 仁は即そう判断し、『仲間の腕輪』でシオンに連絡を取った。

 ちょうど手が空いていたシオンはすぐに応答。


『ジン、どうしたの?』

「ああ、ちょっと聞きたいことがあってな」

『何かしら?』

「ええと……『森羅しんら』の氏族に、『テレジア』っていう女性はいないか?」

『どこでその名前を?』


 テレジアの名前に、シオンは驚いた声を上げた。


『テレジアは、確かに『森羅しんら』氏族の子よ。……ただ……』

「ただ?」

『10年くらい前に出奔してそれっきりなの』

「出奔? また何で……」

『一言で言うと、意にそぐわない結婚を迫られたからね』

「……」


 そうした者が出るのはわからなくもない、と仁は内心で思っていた。

 どんな集団でも、そこの暮らしや風習、慣習をよしとせず、変化を求めて飛び出す者が出るものだ。


 ところで、ノルド人はローレン人に比べて4倍から5倍も長寿である。

 それゆえ変化が乏しいともいえる(とはいえ仁の協力でここ数百年間の変化はそれ以前の数倍の速さであるが)。

 だが、やはり例外はあるのだ。


「そういう子も出るんだなあ」

『幸せに暮らしてくれていればいいんだけどね』

「で、その子はどんな魔法が使えるか、わかるか?」

『わかるわ。『alusion(アルシオン)』や『tranquilizeトランキライズ』のような精神干渉系の魔法が得意だったわ』


 『alusion(アルシオン)』は暗示、『tranquilizeトランキライズ』は精神安定のノルド式魔法である。つまり『始祖(オリジン)』の魔法に近く、効果も大きい。


『で、その子がどうしたの?』

「実は……」


 有益な情報をもらった仁は、『テレジア』についてわかったことをシオンに詳しく説明した。


『まあ……! なんてことかしら!!』


 仁の説明を聞いたシオンは憤慨した。


『出ていったことは仕方ないにしろ、そんな犯罪まがいの行為をしているとしたら放っておけないわ』

「協力してくれるか?」

『ええ、もちろんよ。私が行きたいけど……ちょっと難しいので、ローを行かせるわ』


 シオンが『ロー』と呼んでいるのは曾孫である『傀儡くぐつ』のロードトスのことだ。


『テレジアも、ローと同じくマリッカの弟子だったこともあるから、お互いに顔は見知っているはずよ』

「それは心強いな」

『詳しいことはジンからローに説明してあげてちょうだい。私からは簡単な事情だけ話しておくから』

「わかった。ロードトスが来るのを待ってるよ」

『すぐに行かせるから』


 そして通信は終わった。


「ロードトスが来るなら、いよいよ俺もウラウの町へ行くか」

御主人様(マイロード)、それは『分身人形(ドッペル)』にまかせて、ご自身はここで全体の指揮を取ってください』

「うーん、やっぱりその方がいいか?」

『はい』

「……わかったよ」


 というように、仁は老君に説得され、分身人形(ドッペル)である仁Dを向かわせることにした。


 今、仁Dは『球形基地』にいるが、一旦引き上げさせることにする。

 ハンナDも一緒に戻ってくることにした。

 ただし、お目付け役兼連絡係として、青髪の自動人形(オートマタ)、アンがしばらく残ることになった。

 ちなみにアーノルトとチェルは申請した休暇期間が終わる前に『アヴァロン』へ帰っている。


*   *   *


 1時間後、仁Dと礼子、そしてホープが蓬莱島に戻ってきた。もちろん『ハリケーン』も。

 その30分後、ロードトスがやって来た。


「ジンさん、お久しぶりです。テレジアが何かやらかしているんですって?」

「どうもそうらしい」


 そこで仁は、まずロードトスに現在の状況を詳しく説明する。


「そんなことになっているんですね……もしもテレジアが悪事に加担しているなら止めなくては」

「頼むよ」


 現地時間は現在午後7時。

 仁は、ウラウの町へは翌日の朝に向かうことにし、この日はロードトスも交えて状況の整理をすることにしたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日4月28日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20220430 修正

(誤)シオンが『ロー』と呼んでいるのは曾孫である『森羅しんら』のロードトスのことだ。

(正)シオンが『ロー』と呼んでいるのは曾孫である『傀儡くぐつ』のロードトスのことだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >『森羅しんら』のロードトス 『傀儡くぐつ』じゃないのかね?
[一言] テツヤが『教室』で教育を受けていた時の教師がテレジアだったとして、 教育内容が『読み書き、計算、それにいろいろな職業のコツ』ですから、 それがテツヤの少年期の話であれば、 仁「『僕、大きくな…
[一言] >>『|tranquilize(トランキライズ)』 > 縦線を省略してみたら消えました…… 縦線と括弧の間が11文字だから縦線はルビ開始記号として扱われなくてただの縦線として表示されるんで…
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