86-34 3つの施設
さて、仁は『バックドア問題』だけに関わっているわけにはいかない。
『球形基地』の問題があるからだ。
「こちらが考えている流れとしては、こうだ」
仁Dは魔導頭脳『ファースト』に説明する。
1.セルロア王国をはじめ、世界各国に『球形基地』発見を通知する。
2.『球形基地』は仁の配下になったことを説明する。
3.仁は現所有者と思われるセルロア王国に対し、対価を支払い、『球形基地』の所有権を譲ってもらう。その際、『世界会議』が立会人となる。
4.『球形基地』を掘り出す工事を行う。
5.同時並行で『メガフロート』を建造する。
6.『球形基地』を掘り出し、『転移魔法陣』を使って『メガフロート』へ転送する。
「……という流れを考えているんだ」
『素晴らしい計画です』
「それでだ、掘り出す工事について『ファースト』に計画を立案してもらいたい」
この言葉に『ファースト』は即了承した。
『承りました。何か条件はございますか?』
「そうだな、工期は1年くらいでなんとかなるか?」
『はい、ジン様。休眠させているゴーレムを総動員すれば容易いことです』
「それは何体くらいあるんだ?」
『汎用と技術系合わせて200体です』
かなりの台数である。
仁Dは頷き、次の疑問点を口にした。
「そうか。だとすると工事用の道具があるとなおいいかな」
『スコップやツルハシは揃っております』
「なら、何の問題もないか。……どのような工事をする?」
『はい、それは……』
『ファースト』は、工事の概略を仁Dに説明した。
それによると、
1.『球形基地』周辺の土砂を掘り出しつつ側面を固めていく。穴の直径は最小で300メートル程度。
2.穴の側面は70度以下の傾斜とし、土砂の崩落を防ぐ。
3.側面数箇所にジグザグの道を付け、徒歩での行き来を可能にする。
というものであった。
「なるほど、いいかもしれないな」
周囲はボロロン荒野なので、掘り出した土砂の置き場には困らない。
『球形基地』が転移した後、土を戻すことにすればよい。
『球形基地』がなくなった分、少し凹むであろうが、そこは致し方ない。
また、いっそのこと溜池として利用するという手もある。
「計画書をまとめておこう」
仁Dは『ファースト』の意見も取り入れ、計画書をまとめることにした。
『ところでジン様、この基地を受け入れる、その『メガフロート』の方はどのようなものなのですか?』
「そうだな、詳細はまだ決めていないが、概要はもう決まっている」
仁Dは『ファースト』に『メガフロート』の構想を説明する。
1.中心部には『球形基地』がすっぽり入るような半球状の窪みを設ける。
2.全体の大きさは直径1キロメートルのドーナツ型構造体。中空にし、『球形基地』込みで水に浮く比重とする。
3.動力を持ち、海上を移動可能。
「まあ、ここまでなんだが」
『素晴らしい計画です』
本日2度目の賛辞が飛び出した。
『ジン様は、そのように巨大な建造物を1年で作り上げられるのですね。しかも、個人で』
『球形基地』はディナール王国が相当数の技術者と工夫、ゴーレムなどを投入して2年近く掛かって建造されたという。
「できるよ。だいたい1ヵ月もあれば」
『さすがジン様です』
そんな仁Dの背後では礼子が得意顔をしていたようだ。
* * *
仁Dがひととおりの話し合いを終えた後、ハンナが『ファースト』と話し始めた。
「どうして移動用の手段を搭載しなかったの?」
『これだけの巨大な物体を動かす手段がなかったのだろうと推測します』
「以前見つけた、半球形の『最終兵器』は下面に脚が生えていたんだけどね……」
『その兵器のことは情報にあります。……おそらく、動力が間に合わなくて完成しなかったのでは?』
「まあそうだね。それにしても、『最終兵器』だの『球形基地』だの、よく作ったよね……」
ここでアーノルトも参加。
「結局、『魔導大戦』当時、巨大兵器開発に走ったのはどうしてなんだろうな?」
『単純に、『大きければ強い』と考えた指導者がいたのだろうと思います』
「そんなものか……」
『はい。アーノルト様もお心当たりがあるのでは?』
「あるといえばあるな……」
当時の軍部は迷走していたと言っても過言ではない状況だった、とアーノルトは昔を思い出した。
「その当時、もう1つの魔導頭脳? を建造した人って、どんな人か、情報はあるの?」
『ごく僅かですが、ございます。……名前は『ハリー』。魔導頭脳が専門の技師だったはずです』
「なるほどね。攻撃、守備、そして指導と、三者三様に特色をもたせたのかな?」
『ハンナ様、ご明察です。おそらくそうした意図で作られたのだと思います。……素晴らしい推理力ですね』
「ありがと」
『ファースト』はハンナが僅かな情報で、自分と同じ結論を導き出したことに驚いていた。
「でも、だとするとその3つ目の『指導』を目的とする施設はどんな設備を持っているんだろうね?」
『それにつきましてはまったく情報がありません。推測するしかありません』
「互いの干渉を嫌ったのかな? あるいは、3箇所が全部完成してからリンクするつもりだったとか」
『後者の可能性が高いですね』
「だとすると、残念だね、3つとも未完成だったなんて」
『いえ、ハンナ様、『指導』の施設は真っ先に建造が始まりましたし、規模も小さいはずですので、完成度は高い可能性があります』
「そうなんだ」
老君が探している『バックドア』の黒幕が、もしその『指導』の施設だったら……。
ハンナDを操縦しているハンナは、そんな心配をするのであった。
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都合により
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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の更新は4月24日(日)14:00の予定です。
20220421 修正
(旧)少し心配なハンナDであった。
(新)ハンナDを操縦しているハンナは、そんな心配をするのであった。




