85-13 巨大ゴーレムの操縦
さて、魔導頭脳『ロギス』と管理魔導頭脳『アーサー』のリンク、戦闘用ゴーレムの修理と来たなら残るは巨大ゴーレムである。
「ボディの修理は問題ない。操縦系統をどうするか、決めてほしい」
とマキナは最高管理官トマックス・バートマンに要求した。
「そうですな、遠隔操縦にはできるのですかな?」
「距離さえ問わなければできる」
「おお、それはありがたい。ちなみに最大離れてどれくらいでしょう?」
「目視できる距離なら問題ないな。……まあ500メートルから1000メートルといったところか」
「十分です。遠隔操縦にしていただきたい」
「わかった。だが……」
遠隔操縦にするには、1つ問題がある、とマキナは説明を行う。
「動作を全て操縦者が操作で行うのは困難だろう。なので、補助魔導頭脳にサポートしてもらう必要がある」
「ふむ、どういうことですかな?」
「『歩く』という動作をさせる際に、上体のバランスや地面の傾斜を考慮しなくてもいいということだ」
「ああ、なるほど……」
微妙に地面が傾いていた場合、ゴーレムの姿勢もそれに合わせる必要があるが、それを補助魔導頭脳に行ってもらう、ということになるわけだ。
「……時間が掛かるのですかな?」
「いや、特には」
「他に何か問題が?」
「問題というわけではない。操縦方法を決めてもらいたいと思ってな」
「どんな方法があるのです?」
「ああ、そこからか」
マキナはトマックス・バートマンにゴーレムの操縦方法について説明を始めた。
周囲には『新技研』の面々やイルミナ・ラトキン、トモシデ・ヨダ以下3名他、多数の人々が集まり、マキナの話に耳を傾けていた。
「まずは音声入力だな。『進め』とか『止まれ』、『右に曲がれ』などの言葉で操縦できる」
「おお!」
「それから操縦装置の場合は、自動車や飛行船のように、スロットルや操縦桿もしくはハンドルを使って歩かせ、レバーで腕を動かすんだ」
レバーで腕を動かす操作は、ショベルカーの操作に似ている。
「おすすめはハイブリッドだな」
「は?」
「大まかな操作はハンドルやアクセルで行って、細かな操作は音声で指示をするわけだ」
「なるほど」
「遠隔操縦でないとすると、どうなりますかな? 参考までにお聞かせください」
「完全自律型かな。まさに巨大なゴーレムだ。それから搭乗型。操縦者が乗り込むんだが、人間にはまず向かない」
「それは?」
「揺れるし、上下動が激しいし、結局手足の操作はしなければならないし」
「ああ、確かにそれはつらそうです」
「まあ、ゴーレムに操縦させるという手はあるがな」
「なるほど……」
「で、どうする?」
「……ハイブリッドでお願いします」
「わかった」
こうしてマキナは巨大ゴーレムの操縦装置を作ることになったのであるが、さすがにこの日のうちには終わらず、完成は翌日に持ち越しとなる。
* * *
「……もうできあがったのですか……」
とはいえ、翌8日の午前9時には、操縦装置が完成していたのである。
トマックス・バートマン以下の面々が驚いたのは言うまでもない。
「……小型の自動車ですか?」
そしてそれは、小型の自動車になっていた。
「そうしないと、この巨大ゴーレムを操縦するのに不便だろうから」
「確かにそうですな」
例えば地下に操縦装置を設置してしまったら、巨大ゴーレムが動いているところを目で見ることができないからだ。
(もちろん、蓬莱島ではモニターでタイタンやダイダラの動作を追うことができる)
マキナが作った操縦装置は、小型の自動車の後部座席に操縦装置を載せたもの。
その操縦席は自動車の運転席よりも高くなっており、透明な屋根が付いているので非常に視界がいい。
「……一晩でこれを?」
「あ、いや、夜はちゃんと寝ているぞ?」
そう。デウス・エクス・マキナは、基本的には仁よりも規則的な生活をしているのだ。
人間ではないことを悟らせないため、より人間らしい生活習慣を持っているのだった。
「じゃあ、そんな短時間で……」
驚くしかないギャラリーである。
だが、驚いてばかりもいられない。
主目的は『巨大ゴーレムの操縦』である。
そしてその巨大ゴーレムは、礼子との戦いによる損傷は全て修理され、全体的な整備も行われて、工房前の広場に横たわっている。
(あれって、工房内にあったよな?)
(うん、間違いない)
(つまり、運び出したか自分で外に出たか……)
(普通に考えれば、試験的に操縦したんだろうな)
(まあそうなるよなあ)
などとギャラリーがボソボソと話しをしている中、マキナはトマックス・バートマンに操縦席に座ってくれと言った。
「私にできますか?」
「できるように作っているからな」
というごく短いやり取りの後、トマックス・バートマンは操縦席に着いた。
「まず、始動キーを差し込んでくれ」
マキナはカード式のキーをトマックスに手渡した。
「これを、ここに」
「はい」
トマックス・バートマンはカードキーをスリットに差し込んだ。
「『魔鍵語』は『起動』『始動』『起動せよ』どれでも大丈夫だ」
「では……『起動』」
巨大ゴーレムの目に光が灯った。起動した証拠である。
「『起き上がれ』とか『立ち上がれ』と言えば立ち上がるぞ」
「では『立ち上がれ』」
巨大ゴーレムはゆっくりと立ち上がった。
「おお」
ギャラリーからも声が上がる。
身長18メートルの巨大ゴーレムは威圧感たっぷりだ。
「姿勢や進行方向は操縦桿で制御する。少し前に倒せば前進、後ろに倒せば後退。中立に戻せば停止するが、音声でも同じことができる」
「では」
トマックス・バートマンは慎重に操縦桿を前に少し倒してみた。
すると巨大ゴーレムはゆっくりと前進を始めた。
一歩、二歩。
四歩歩いたところでトマックス・バートマンは操縦桿を中立に戻す。
巨大ゴーレムは停止した。
その後、後退や方向転換なども行い、トマックス・バートマンは巨大ゴーレムの操縦に少しずつ慣れていった。
「次は上体の動作だ。腕の上下は左右のレバーで行う」
操縦桿の左右についているレバーを動かすと、それに応じて左右の腕も動く。
「細かい動作は指示してやってくれ」
ものを掴む、拾い上げる等の動作はレバーでもできるが、音声で指示を出したほうが早くて確実であった。
「そうだ。まずは慣れてくれ。そしてトマックス殿以外の操縦者候補にも同じように教えよう」
そういうわけで、この日から3日間、操縦者候補の訓練を行ったマキナである。
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本日の 異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す は
都合により2月22日(火)14:00に更新予定です。




