84-32 蓬莱島、始動す
やや遅まきながら、カチェアとグローマの失踪事件に全力で取り組むことを決めた仁。
「まずは情報収集だ。……が、老君はあらかたまとめているな」
『はい、御主人様』
『覗き見望遠鏡』で周辺の町を調べた結果。
先程、亜自由魔力素波使用の『覗き見望遠鏡』で調査したデータ。
数日前から『第5列』を送り込んで収集した情報。
等々、老君は現状を把握している。
それを総合的にまとめ、考察することで見えてくる現状がある。
それによると……。
『まず、今回の事件の黒幕は『仁ファミリー』の子孫あるいは弟子が作った魔導頭脳です』
「うん」
『その魔導頭脳は未完成で、自ら情報を集めて完全体になろうとしているようですが、基礎が不完全だったため、それは叶わないでしょう』
「そうだな」
『ですが、その過程でこれまで、そしてこれからも、貪欲に知識を求めることと思います』
「だろうな」
『あと、ちらりとですが、魔導頭脳を守っている強力そうな戦闘用ゴーレムを多数見かけました』
「要注意だな」
『ここまでが魔導頭脳についてわかったことです』
「うん」
『続いて、現状の問題点を』
「頼む」
『『第5列』からの報告によりますと、町の住人の大半は仮称『支配の輪』というもので操られているようです』
「支配の輪か……そうだったな」
『はい。これまで『支配装置』や『操縦針』といった、洗脳装置がありましたが、あれらと同系統です』
「そこまではわかったのか。あとは?」
『はい、御主人様。『支配の輪』は銀色の輪で、被支配者の頭に嵌めて使う形式です』
「なるほど」
『ですので、日常生活では帽子を被って隠しているようです』
「なるほどな」
『支配の深度はまだ不明です。……今のところ、『操縦針』と同程度と考えております』
「そうか」
ここで老君は少し間をおいてから続けた。
『カチェアさんとグローマさんは無事で、フレクの町の地下に監禁されています。他にも数名、別室に監禁されているようです』
「全部は調べきれなかったか」
『はい。そしてエイラさんも無事で、『第5列』2体と行動を共にしております』
「そうだったな」
『エイラさんに危険が及ばないよう、2体の第5列には指示を出しております』
「そうしてくれ」
そしてもう1つ、仁がまだ知らない情報も。
『ショウロ皇国からベルリッヒ・ベッカーさんがウラウの町にやって来まして、カチェアさんたちの失踪を知りました』
「何?」
『カチェアさんが手紙を出していたようで、ウラウの町で合流する予定だったようです』
「そういうことか」
『そして代理店を見つけ出し、そこの店長と共にフレクの町へ向かっています。護衛として、ご自分で製作したゴーレムを連れておられます』
「そうか……」
ここまでが老君の掴んでいる現状であった。
「エイラとベッカーを合流させることはできるか?」
『はい、御主人様。可能です。それをおすすめしようと思っておりました』
「そうか。ではまずそれを進めてくれ」
『承りました』
老君は魔素通信機を使い、『第5列』の『デネブ15』と『デネブ16』に指示を出した。
「あとはどうするのがいいかな?」
『御主人様、相手は魔導頭脳ですので、『老子』を派遣するのも1つの選択肢です』
「なるほど、『老子』か」
『老子』は老君が直接操る移動用端末自動人形で、初老の執事タイプ。
身体能力は礼子の3割ほどだ。
もちろん単独での行動も可能。
400年前、『ノルド連邦』における『負の人形』との戦いでも活躍している。
『御主人様が自ら乗り込まれずとも、十分に役目を果たせると思います』
「だな」
『ですが、『支配の輪』の存在がありますので、これについての対策を講じる必要があります』
「それは当然だな」
もしも『支配の輪』で操られた人々を盾にされたり人質に取られたりしたら、行動が制限されてしまう。
『そして『支配の輪』は、魔導頭脳が指示を出さずとも、ある程度の行動ができると思われます』
「……ああ、そうか。魔導頭脳が『魔法障壁』の中にいるからだな?」
『はい、仰るとおりです』
魔法障壁を展開している限り、中からの魔力波も遮ってしまうため、直接の指示は出せないわけだ。
にも関わらず、装着された人々が従っているところを見ると、指示をもらわずとも一定の行動をとるだけの知性は残されていると思われる、と老君。
『あるいは、有線で繋がれた命令を出す端末が魔法障壁の外にあるという可能性もありますが』
「うん、俺の勘だとそっちの可能性が高い気もするな」
『参考にさせていただきます』
「うん。そうすると、もしも後者なら被害者を魔法障壁で覆ってしまえば影響から隔離できるわけだが……」
『根本的な解決にはなりませんね』
「そうなんだよな。……その『支配の輪』を手に入れて解析したいものだな」
『同感です。では、まず『支配の輪』の入手。同時に、捕虜になっている人たちの安全確保を目指しましょう』
「そうだな」
『支配の輪』の対策が急がれる以上、入手が最も優先されるミッションとなった。
『では、遊撃の『第5列』を送り込んで、誰でもいいので町の住人を確保し、『支配の輪』を手に入れましょう』
「無茶はするなよ?」
『はい、御主人様。心得ております』
こうして蓬莱島が、その持てる力を発揮する時が来たのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220126 修正
(旧)「支配の輪?」
(新)「支配の輪か……そうだったな」
(旧)「そんなものがあったのか」
(新)「そこまではわかったのか。あとは?」




