84-02 土木研
さて同7日の『アヴァロン』。
室長であるアーノルトが休暇をとって不在な『新技研』に来客があった。
『土木技術研究室』略称『土木研』のメンバーである。
「アーノルトさんは休暇中ですか、ちょっと残念です」
そう言ったのは『土木研』副室長のルザー・ブドー。
ごつい身体に似ず、柔らかい雰囲気の巨漢だ。
「どんなご用事だったのですか?」
グローマ・トレーが尋ねると、ルザーに同行してきたもう1人の『土木研』メンバー、ショルパ・ワーベが答えた。
「土木・建設現場で使う大型ゴーレムについてお話を伺いたかったのです」
ショルパもまた、180センチを超す巨漢ながら、おとなしい性格のようで、一人称は『僕』である。
「え、ええと、先日、調査中の遺跡で5メートル級の大型ゴーレムが発見されたと聞いて、それで……」
「ああ、なるほど」
ショルパは訥々と話し始めた。
「土木や建設作業には、その、専用の重機が必要だという意見もありますが、僕たちは場面によりけりだと、思っているんです」
「場面とは?」
「えっとその、山岳地帯とか、僻地とか、島とか……ですかね」
ここでルザーも補足説明を行う。
「不便な場所で多機能を求められた場合ですね。専用の魔導機よりも応用が利きます」
「それは確かにそうですね」
土木用ゴーレムであれば、専用の魔導機のほとんどの作業を代替可能だ。
ただし、作業効率は専用機の7割から8割にとどまってしまうのは致し方ない(蓬莱島のゴーレム除く)。
「しかし、数種類の専用機が必要な場合でも、ゴーレムなら1体か2体で用が足ります」
「そのとおりですね」
それにはグローマも賛成であった。
「そ、そこで、ですね」
再びショルパが語りだした。
「今の『土木用』ゴーレムを、ですね、も、もっと高性能にしたいの、です」
「ああ、それで元『ゴー研』でもある私どものところにいらしたと」
「そ、そうです」
「高性能と言われるが、『何を』性能アップしたいというような、具体的な項目はあるのですか?」
「も、もちろんです」
「お聞かせください」
「ま、まずは『自律性』です」
「ほう」
グローマをはじめ、話を聞いていた『新技研』のメンバーたちはどうして彼らがここに来たのか、改めて察した。
「確かに、自律性が高いゴーレムなら、工事の効率が上がりますね」
「そうでしょう!」
特定の作業専用の魔導機ではそうはいかない。人間が操作する必要があるからだ(蓬莱島仕様除く)。
そして、そういう自律性の高いゴーレム……というなら、旧『ゴー研』、現『新技研』、というわけである。
「そ、それから、やはりパワーを上げたい……ですね」
「でしょうね」
土木工事用であるから、力があるに越したことはない。
「そして、ある程度の精密動作、ですね」
例えばレンガ積みや構造材の組み立てなどでミリ単位くらいまでの精密動作ができると、後の仕上げが楽になる。
「パワーと精密動作を両立させたいというわけですね」
「そ、そうです」
これもまた、旧『ゴー研』時代に追い求めていた項目である。
「……と、とりあえずこの3つでしょうか」
「自律性、パワー、精密動作ですね」
これらは、ゴーレムや自動人形に求められる基本的な項目ともいえる。
が、それだけに研究しつくされており、既存の手段ではもう、今現在以上の性能は得られないのだ。
つまり、既存の手段以上が求められているのである。
「今確実に言えるのは、向上させられるのは『自律性』だ、ということくらいですね」
パワーと精密動作については『土木研』のゴーレムを見てみないとなんともいえない、とグローマは言った。
「いえ、それで十分です。次は正式な依頼書とうちのゴーレムを連れて伺います」
「わかりました」
ということで『土木研』の2人は帰っていった。
その後、エイラを相手に、グローマはパワーと精密動作の両立について話し合い始めた。
「まずは骨格だろうね」
「同感だ。パワーを受け止められるだけの強度はもちろん、歪まない強度があれば精密動作性も期待できるからな」
「うん。それには関節の遊びも極力減らす必要があるかな」
「それはそのとおりだ」
「パワーに関しては、『魔素変換器』や『魔力炉』の出力が重要になる」
「それが難しいんだよな……ジンはうまくやっているようだけどさ」
「我々は我々で努力しないとな」
「それはそうだ。……で、1つアイデアがあるんだよ」
「エイラのアイデアはいつも有用だからな。聞かせてもらおうじゃないか」
「もちろんさ。ええとな……」
従来の『魔力炉』は、『魔素変換器』からの魔力素を十全に利用できていない、とエイラは言った。
それで、まずは魔力炉に焦点を合わせて改良するべきだ、とも言う。
「それは同感だ。具体的には?
「使う魔結晶の純度はできるだけ高いものを使いたいんだが、それはコスト的に難しい」
「ああ、そうだな」
不純物は魔力に対し抵抗となり、効率を落とす原因となっているのだ。
「そこで、だ。……魔結晶の純度を高めてやればいいんだよ!」
「どうやって?」
「『純化』さ」
『純化』は工学魔法であると同時に、土属性魔法の上級の上でもある。
つまり、誰でも使えるような魔法ではないのだ。
まして、安定した魔結晶の不純物を取り除くためにはどれだけの魔力を必要とすることか。
「ふふふ、それができるんだな」
「どうやるんだ?」
「専用の魔法陣を開発したのさ」
「凄いじゃないか!」
「この魔法陣の欠点は、効果が出るのに時間が掛かることだけれど、魔結晶数個を処理するだけだし、1回処理してしまえばそれですむからな」
つまり、時間がある時に魔結晶をあらかじめ処理しておけば、製作工程に影響はない、というわけである。
「確かにそうだ。さすがだな、エイラ」
グローマは手放しでエイラを称賛したのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20211218 修正
(誤)専用の魔導機よりも応用が効きます」
(正)専用の魔導機よりも応用が利きます」
(誤)作業効率は専用機の7割から8割に留まってしまうのは致し方ない
(正)作業効率は専用機の7割から8割にとどまってしまうのは致し方ない




