84-01 仁ファミリーの日常
4月7日の蓬莱島は賑やかであった。
「デルフィナさん、これからよろしくね!」
「は、はい」
「ロロナさん、今後もどうかよろしく」
「こちらこそ」
デルフィナとロロナの『仁ファミリー』入りの歓迎会が開かれていたのだ。
「これで母様とも遠慮なく話ができるわね」
「ええ、そうね」
シオンの母ロロナは今更感があるものの、正式なファミリーメンバーになったことでシオンもほっとしている。
また、
「マリッカ様、私なんかがメンバーになって大丈夫なんでしょうか?」
デルフィナはデルフィナで相当面食らっているようだ。
そんなデルフィナに仁は『長老』を紹介する。
「デルフィナ、紹介するよ。こちらは『長老』ターレスさん」
「あ、デルフィナです。よろしくお願いします」
「ターレスだ、マリッカ様の従者でもある。よろしく頼む」
挨拶が済むと、仁は『長老』について説明を行う。
「ターレスさんは、フィリシャス殿が『北の賢人』もしくは『北の地の賢人』と呼んだ、その人なんだよ」
「え……!」
「いや、賢人とか言われると面映いのだが」
「あ……あなた……ターレスさんは、ゴンドア大陸の北にお住まいなのですか?」
「そうだ。まあ今はヘールにいることのほうが多いが」
その辺の事情はおいおい説明していくことになろう。
『知識転写』で一気に、というのではいかにも味気ない。
* * *
「エルザ、忙しい中来てくれてありがとう」
「うん。……ジン兄も忙しそうで大変だろうけど、頑張って」
「ありがとう」
「それから、あと半月で、春の園遊会、だから」
「わかってるよ……」
最悪、『知識転写』でマナーや作法を復習しないとな、と思った仁であった。
* * *
蓬莱島にも夜が訪れた。
デルフィナは一旦マリッカのところへ帰ることになった。
ロロナとシオンも『森羅』の氏族領へ帰る。
その前に仁は、ロロナとデルフィナに『仲間の腕輪』を渡し、機能を説明した。
「まあまあ、そんな機能が。ありがとうございます」
「ジン様が作るものって……すごいですね」
ちなみにロロナのものはベージュに金色のライン、デルフィナのものはシルバーグレイに金色のラインだ。
「多分近いうちに……というか明日あたり、ガスマダ島へ行く話が出ると思う」
と伝えておく仁であった。
* * *
あまり留守にできない面々が帰ったあと、仁は残ったメンバーと話し合っていた。
「……ということなんだが、何か意見はあるかい?」
真っ先に口を開いたのはグース。
「仁、もしもその施設へ行くなら連れて行ってほしいなあ」
「それは可能だとは思う」
「そうか! 楽しみだな」
「で、何か気が付いたことは?」
「ああ、それそれ。……もしかすると、そのガスマダ島の施設って、思った以上に重要な秘密が隠されているかもしれないぞ」
「なるほど、つまり?」
「できれば仁の仲間だけで行ったほうがいいな」
そうすれば誰憚ることなく調査ができるから、とグースは言った。
「わかった。……シオンにはそういう方向で許可をもらえるだろう。『アヴァロン』には……マキナから言ってもらうか」
「それがいいな」
「よし。……あと、何か気が付いたこととかはないか?」
「じゃあ、私から」
こんどはステアリーナが意見を口にする。
「『移動基地』の方の『変形動力』だけれど、見てみたいわね。どう応用して、巨大な脚を動かすのかしら」
旧技術とはいえ、今後に生かせるかもしれない、とステアリーナは言った。
「そうだな。とりあえずあとで記録を見てくれ。それに『移動基地』の方なら、老君の『覗き見望遠鏡』で調べられるぞ」
「ああ、そうね。そうさせていただくわ」
「ジン、『移動基地』以外に、鉄鋼の使用先があるかもしれないということだったが」
「ラインハルト、何か意見が?」
「ああ。当時は戦時中だったわけだから、即戦力になるものも作っていたんじゃないかと思ってね」
「それは理屈だな……」
「ルイスも同意見だぞ」
「うん。ラインハルトとちょっと話していたんだが、もちろん戦場から離れた安全な場所で作るという選択肢もあるにはある。でも切羽詰まっていたらそんなことするかどうか……」
「なるほどな」
サキもまた、意見を述べた。
「その『金属原子の隙間を魔力素で埋め尽くしてから『不活性化』で処理』ってやり方だけど、魔法耐性も上がるよね? シールド系の素材に応用できそうだよ」
「え? ……つまり、マギ系合金に同じ処理をするってことか?」
「そうさ。マギ系合金は自由魔力素で強化しているけど、それと同時並行で強化しようというわけだね」
「でも、『魔法無効器』だけには弱いぞ。簡単に無効化されるだろうな」
「そうなんだよね。それが最大の欠点だと思うよ。でもね……」
ここでサキはオリジナルのアイデアを披露する。
「魔力素を充填したあと、『不活性化』を掛ける前にちょっとだけ塑性加工するのさ」
「え? ……ああ、金属原子間で圧縮するのか」
「くふ、正確にはただの圧縮じゃないけどね」
ボールをギチギチに詰めた箱を歪ませるようなイメージである。
箱内部の容積が減ればその分ボールは圧縮されることになり、従って箱の内圧は高まる。
つまり、変形に対する抵抗力が増すわけだ。
こうなった状態で箱の蓋を開け、ボールを取り出そうとしてもなかなか取り出せないことが想像できるだろう。
箱が原子間の隙間、ボールが魔力素とすれば、こうしてわずかながらも圧縮された魔力素は、『魔法無効器』に対する耐性を持つことになるわけだ。
「といっても、まだ理論止まりだけどね」
「いや、やって見る価値のありそうな理論だよ。さすがサキ」
「くふ、照れくさいね。……ありがとう」
等々、いろいろ有益な意見が多数出たのであった。
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