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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
81 新技術開発篇
3084/4345

81-25 新型マギロケットエンジン

「よぉーっし!」


 気合の入ったルビーナの声が工房に響いた。

 仁がいつのまにかいにしえの技術を再現した『マギロケットエンジン』を一人で開発していたので、ほんのちょっぴりねていたのだ。

 本人は、もう大人なんだからそんなことで怒ったりしない、と口では言っていたようだが……。

 なお、祖母であるアマンダに言わせれば、『まだまだ子供』である。


 それはさておき、ルビーナとゴウは協力して試作エンジンを作り上げた。

 それは直径5センチ、長さ10センチほどの筒で、一端が半球状に塞がっている、『鉛筆キャップ』のような形をしている。

 ロケットエンジンとしての基本形のようなものだ。


「ここに『風の一撃(ウインドブロウ)』の魔導式(マギフォーミュラ)を刻むわけだけど、どこがいいかしら?」

「難しいね……ここは、実験をして最適な位置を決めるのがいいんじゃないかな?」


 刻む場所の候補は2箇所。

 1つは半球状になった先端部。

 もう1つは円筒の内周だ。その内周のどの辺がいいか、ということも実験で決めていくことになる。


 結果から言うと、どれも今一つであった。


「うーん、もうちょっとパワーが出ると思ったんだけどな」

「そうだね。……やっぱり、エンジンの燃焼室……じゃないな……『膨張室』かな……そこの中心に書き込みたいよ」

「ゴウの言うとおりね。その辺が一番効率がよさそうだわ」

「……球形の『発生基』に描き込んで、3本か4本の支持架で支えるしかないかな」

「そうねえ……やってみましょう」


 最初の実験が思ったほどの結果が出なかったので、少しテンションが下がった2人は、それでもてきぱきと作業を進めていった。


 そんな2人を見守るエルザとしては、気分の浮き沈みが激しいあたり、やっぱりまだまだお子様だな、と微笑ましく思っていたりする。


 エルザの見守る中、2人は第2の試作エンジンを作り上げた。

 そして実験。


「……やったわ!」

「前回よりもパワーが出ているね」

「調整をしていけばまだまだ上がると思うわ」

「うん」


 そこでエルザも少しだけ助言を行うことにする。


「中の『発生基』? だけど、球形じゃなく、噴射口側は円錐にしたほうが、空気の流れがスムーズになると、思う」

「あ、そっか! エルザ様、ありがとう!」

「さっそくやってみます」

「ん、頑張って」


 こうしたエルザの助言もあって、2人はその日の昼食までに、なんとか『新型マギロケットエンジン』を形にしたのである。


*   *   *


 昼食後、レポートの草案を書き終わった仁は、2人に進捗状況を確認した。

 ルビーナが堂々と報告を行う。


「ふうん、なかなかうまくやっているな」

「午後は詳細な出力テストをするのよ!」

「よし、それには俺も立ち会おう」

「うん、見ていて、ジン様!」


 風洞室に移動した仁たちは、さっそく実験を開始。


「おっ、いい感じじゃないか」

「でしょ?」

「お褒めに預かり、光栄です!」


 仁の目から見ても、ゴウとルビーナが作った試作エンジンはいい出来であった。


「採点するなら95点だな」

「すごい高得点の気がするけど、マイナスはどこ?」

「中の……『発生基』って名付けたのか? そこを支える支持架の断面形状が丸いからさ」

「あ……! そこも断面を流線型にすればよかった!」

「そういうこと。もう1つはエンジン内部の表面粗さだな。試作だからって、少し粗いかな?」

「ああ、そっか。空気の流れをできる限り阻害しない方がいいものね」

「それがわかればいい。全体を見たら文句なしの合格だよ」

「やった!」


 躍り上がって喜ぶルビーナと、嬉しそうなゴウ。


「あとは、これを積んだ模型を飛ばしてみようか?」

「やるやる! 『ナイルⅦ』を作るわ!!」


 仁に褒められたので、大乗り気のルビーナであった。

 ルビーナとゴウは連れ立って工房へ。さっそく機体を作るようだ。


「あ、待って!」


 メルツェもついて行った。

 工学魔法は使えずとも、見ているだけで結構楽しいらしい。


 ルビーナたちが作るのは『ナイル』シリーズなのでおそらくデルタ翼。今度もかなりの出来が期待できるだろう。

 仁も楽しみである。


「エルザ、お疲れ様」

「ん」


 そして仁は、2人を監督してくれていたエルザをねぎらった。


「一休みしたら、俺も『新型マギロケットエンジン』を作ってみるかな」

「ジン兄らしい」


 2人は屋敷に戻り、少し早いティータイムにした。

 ダイキ、ココナ、アマンダも一緒である。


 お茶は煎茶、お茶請けは芋ようかん。


「ジン様、あの子は大丈夫でしょうか」


 少し心配そうなアマンダだが、仁は笑って答える。


「ルビーナは心配ないよ。いい技術者に育っている。そしてここにいる間に、いい令嬢にもなってほしいな」

「それが一番心配なんですよ……あの子はちょっとがさつですから」

「だから、ここにいて、いろいろな人と触れ合っていけばいいさ」

「ここにいていいのですか……?」

「いいとも。なあ、ダイキ、ココナ」

「もちろんです。毎日がにぎやかになって、とても楽しいですわ、ね、あなた」

「そうですとも。ルビーナさんもメルツェさんも、ゴウのいい友達になってくれましたから」


 ダイキとココナも、本心から言っているということがわかる、柔らかな笑みを浮かべながらの言葉であった。


「ありがとうございます……」


 そう言ってアマンダは会釈を行ったのである。


*   *   *


「さて、それじゃあ俺の方も」


 ロイザート地下の工房で、とも思ったが、そちらでは手狭なので、仁は一旦蓬莱島へ転移した。

 ロイザートが夜になるまでには戻るつもりでいるし、そういう連絡をくれるよう老君にも頼んである。


「お父さま、何から始めますか?」

「そうだな、まずは俺なりの試作を作ろう」


 ある程度の理論はゴウとルビーナがまとめておいてくれたので問題はない。

 直径5センチ、長さ10センチ、一端が半球状の円筒を作る。ここまではゴウたちと同じだ。


「ゴウたちは『発生基』を作ったが、俺は作らないでいこう」


 そもそも、『風の一撃(ウインドブロウ)』を放つ時は、手のひらから放つわけではない。

 だいたいにおいて、手のひら……魔力素(マナ)の供給源……から5センチほど離れた場所から現象としての『風の一撃(ウインドブロウ)』は発生しているのだ。

 つまり、発生場所と発生方向を決めるパラメータがある、ということになる。

 そこまでのことを『魔法工学師マギクラフト・マイスター』ではない2人に要求するのは酷である。

 ゆえに先程は、その点については言及しなかった仁であった。


「さて、どのくらいの推進力が得られるかな」


 5分で試作を作り上げた仁は、テストベンチにセットし、推進力の測定を開始する。


「よし、『起動(スタート)』」


 試作エンジンが風を吐き出した。


「よし。やっぱり爆発じゃないから、力の発生は緩やかだな」


 そのまま、少しずつ出力を上げていく仁。

 いよいよ実力テストである……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210922 修正

(誤)昼食後、レポートの草案を書き終わった仁は、2人に慎重状況を確認した。

(正)昼食後、レポートの草案を書き終わった仁は、2人に進捗状況を確認した。


(旧)5分で試作を完成させた仁は、テストベンチにセットし、推進力の測定を開始する。

(新)5分で試作を作り上げた仁は、テストベンチにセットし、推進力の測定を開始する。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! >「一休みしたら、俺は『新型マギ波動エンジン』を作ってみるかな」 「ん?」 仁『マギ波動エンジンって何やねんw』 礼子『波動エンジンが魔法の力で強化されたモノか…
[気になる点] >「そういうこと。もう1つはエンジン内部の表面粗さだな。 内部の表面粗さ → 内部表面の粗さ [一言] >「ああ、そっか。空気の流れをできる限り阻害しない方がいいものね」 銃のライ…
[一言] >5分で試作を完成させた仁は、テストベンチにセットし、推進力の測定を開始する。 試作ってテストしないと完成しないものでは?試作を組み上げたぐらいじゃないのかな。まあ、言葉の綾ですけど。 …
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