81-11 ロイザートでの説明
仁は最終的に『スワロー』(無印)を一般向け機種として完成させた。
一番苦労したのは、最大加速値を4Gに抑えたところだ。
これはハードではなくソフト……制御用の制御核でリミッターを掛けている。
「さて、これでロイザートへ行けるな」
とはいえ、『スワロー』は滑走路が必要なので、『ハリケーン』のように屋敷の屋上に着陸することはできない。
「かといって『タウベ』の代わりに搭載機にするわけにもいかないしな……」
『タウベ』は風力式浮揚機なので、垂直離着陸ができる。スワローで置き換えるというわけにはいかないのだ。
「ここは、『ハリケーン』は『ハリケーン』で、『スワロー』は『スワロー』で、別々にロイザートへ行くしかないか」
その場合、操縦士をどうするかという問題が出てくる。
「お父さま、『ハリケーン』はわたくしが操縦いたします」
「それがいいか……」
基本的に、礼子は蓬莱島が所有する全ての乗り物を操縦できるのだ。
『スワロー』を任せてもいいが、その場合仁と離れなければならないので『ハリケーン』の操縦を希望したというわけである。
つまり、『スワロー』はホープが。『ハリケーン』は礼子が操縦する、ということになった。
「よし、それじゃあ俺は『ハリケーン』で先行し、ロイザート郊外の飛行場で『スワロー』を出迎えよう」
「わかりました」
その際にはゴウやルビーナもつれていくつもりの仁であった。
* * *
現地時間で3月5日午前8時、仁の乗る『ハリケーン』はロイザートの屋敷の屋上に着陸した。
「ジン様、ようこそ」
「ようこそいらっしゃいました、ジン様」
「ジン兄、お疲れ様」
「ジン様! ご無沙汰してます!」
「ジン様、ご無沙汰しております」
「ジン様、お元気そうで何よりです」
「ジン様、ようこそおいでくださいました」
ニドー家全員……つまりダイキ・ココナ夫妻、エルザ、ゴウ、ルビーナ、メルツェ、アマンダ、バトラーD、五色ゴーレムメイド、メルツェ専属自動人形のララ、そしてヨヒア子爵家から移籍した侍女イェニーが出迎えてくれた。
「ジン様! なんでこんなになるまで放っておいたのよ!」
その際、ルビーナからかなり長い愚痴と文句を聞かされたが、放っておいたのは事実なので、全部受け止めた仁である。
そしてルビーナの祖母アマンダは、ダイキ・ココナ夫妻と意気投合し、ルビーナがいる間はここロイザートに留まることにしたということであった。
* * *
「……で、な、セルロア王国へ行って……」
屋敷の居間に全員が集まり、仁の話を聞いている。
仁は2月からの話を掻い摘んで説明した。
「……捜理協会の聖女という人たちはみんな……」
話が捜理協会のこととなると、ルビーナやメルツェは一層真剣に聞き耳を立てた。
「でも、クゥプとルトグラ砦の問題は解決したんですね」
「ああ、そうだ」
エルザも事情は知っているが、仁が自分で説明できるよう、何も語らなかったようだ。
「で、その地下基地で『チェル』って自動人形を見つけ……」
「……700年も前の自動人形なんて凄いですね」
「それを作った人物の記憶を持った魔導頭脳があったんで、俺が作った自動人形にその記憶を移し替えたんだ」
「ええっ!?」
「そんなことができるんですか?」
「まあ、もしかすると適合しない人もいるかも知れないが、魔導頭脳からだったからか、今回は問題なくできたよ」
誰も彼も自動人形に……などということはしたくない仁なので、念の為釘を差しておくのだった。
「……で、セルロア王国の国王陛下から依頼を受けて別の施設を調査することになって……」
「そんなことやってたんですね」
「で、そこで見つけた技術が面白くてな」
「え? なになに? 教えて、ジン様!」
技術、と聞いて、それまで黙っていたルビーナが食いついてきた。
やっぱりルビーナだな、と苦笑しながら仁は説明する。
「……最終兵器……? 魔導ロケットエンジン……?」
「まあ最終兵器はよくわかっていないんだが、魔導ロケットエンジンは凄いぞ」
仁が水を向けると、ゴウも食いついてきた。
「え、ええと、ロケットエンジン、ということは、一方だけが開放され、あとは閉じられた容器から何かを噴射して……となるわけでしょうか?」
「お、そうそう」
「ジン様、もったいぶらないで教えてよ!」
「わかったわかった」
ルビーナに急かされて、仁は『マギロケットエンジン』について説明をした。
「つまり、中で『爆発』系の魔法を励起するんだ」
「ああ、それなら燃料も酸素もいらないわけね」
「でもジン様、それだと動作が脈動的になってしまいませんか?」
ゴウもまた、自分なりの疑問を仁にぶつけてきた。
「うん、いい質問だ。だが、爆発の間隔が0.1秒刻みだったら?」
「……あまり脈動を感じられないでしょうか?」
「そういうことさ。爆発の周期をうんと短く制御するんだ。そして、爆発が終わる前に次の爆発を重ねることで、推力を重ね合わせることもできる」
「あ、つまり脈動をできるだけフラットにするわけですね」
「そういうことだな」
「でも、そうしたら……燃焼室? がかなり高温になるわよね?」
「うん、ルビーナも正解。よく気が付いたな」
「えへへ」
「他に何か、想像できることはないか?」
この際なので、ゴウとルビーナの勉強の場にもしてしまう仁。
幸いにして、魔法技術者ではないダイキとココナ、メルツェもまた、この話に興味を持っているようだった。
「ええと、高出力はともかく、低出力って苦手じゃないですか?」
「お、それもいいぞ。他には?」
「当然、燃焼室の強度も問題になるわよね」
「そのとおりだ。それから?」
「うーん……」
「ちょっと思いつかないです」
これ以上は他の面々にも悪いだろうと、仁は開発時の問題点を教えることにした。
「噴射口から火を噴くことだな。可燃物に引火する恐れがある」
「あ、そうか」
「まあそのくらいだな。かなり優秀な推進機なんだ」
そして仁は、ここで発表を行う。
「実は、その『マギロケットエンジン』はもう実用化していて、今日の午後、ロイザート郊外に飛んでくる手筈になっているんだ」
「え!?」
この発言には、皆が驚いた。
そして、
「見たい! ジン様、見に行きたいです!」
「僕も!」
「……私も見たいです」
ルビーナ、ゴウ、メルツェである。
「いいとも。よかったらみんな一緒に『ハリケーン』で飛行場へ行こう」
「ジン様、よろしいのですか?」
「もちろん」
「ジン兄、時間は?」
「午後1時だから、あと3時間くらいだな」
「ん、なら余裕がある」
そういうわけで、昼食後、ララとイェニー、バトラーD、五色ゴーレムメイドらに留守を頼み、残る全員で飛行場へ行くことにしたのであった。
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