81-12 思わぬ欠陥?
午後1時少し前、仁たちを乗せた『ハリケーン』はロイザートの飛行場、その上空にいた。
空から見た方が『スワロー』をよく見ることができるだろうという配慮だ。
場合によっては並走……いや並飛行してもいい。
「お父さま、見えました」
「おっ」
東の空にぽつんと点のようなものが見えたかと思うと、それはぐんぐん大きくなってくる。
今は『ハリケーン』がそちらへ向けて飛行しているので、相対速度は2倍、ものすごい速さで近付いてくるように見える。
実際には『スワロー』は時速400キロ、『ハリケーン』は時速200キロなので相対速度は時速600キロということになる。
それだけの速度で飛べる航空機は蓬莱島勢以外にはまずいないだろう。
すれ違う前に『ハリケーン』は方向転換し、『スワロー』と同方向に飛行開始。
その数秒後、『スワロー』は『ハリケーン』と並んだ。速度は時速200キロに落としており、ほぼ同速度で並飛行。
「わあ、あれがジン様の作った『スワロー』ね! ロケット機だから空気取り入れ口がないのよね」
「主翼が小さいですね。高速用、ということでしょうか」
「……金属製のモノが空を飛ぶなんて、なんだかすごい、です」
ルビーナとゴウは技術者らしい感想を述べ、メルツェは素直な感想を口にした。
ダイキとココナは無言で見つめている。
そしてエルザは、
「ジン兄、あれで加減しているの?」
と、確認するのだった。
「え? ジン様、あれってデチューンしてあるの?」
「そうだよ。デチューン、というか、普及型の機体なんだ」
ルビーナの問に仁は答えた。
『仁ファミリー』ではないが、ルビーナやゴウ、ダイキとココナには真の『スワロー』について話しても問題はない。
また、メルツェも同様。仁の規格外さを既に知っているからだ。
「真のフル装備した機体なら余裕で音速を超える。おそらく現時点では『翼のある飛行機』では最速じゃないかと思う」
「凄い!」
「だけどそっちには大きな問題が1つあってな」
「それは何?」
「……人間には乗りこなせないんだ」
「駄目じゃない!」
「そうなんだよ。ゴーレムや自動人形でないと、飛行時のGに耐えられないんだ」
全力発進したら5G以上。超音速での宙返りでもしようものなら20Gを超える加速度が掛かる可能性がある。
耐Gスーツを着ていても、人間には耐えきれないだろうと思われた。
実は、これは『魔法型噴流推進機関』でも同じようなことがいえる。
ただ、風属性魔法利用の『魔法型噴流推進機関』は爆発系魔法を利用した『マギロケットエンジン』ほどの瞬発力がないので扱いやすく、最大加速度も10Gくらいである。
「思わぬところに欠陥があるのね」
「そうなんだよ」
人間が乗りこなせないのが最大の欠陥である。
もちろん、『力場発生器』や『重力魔法』などで身体に掛かるGを軽減すれば別だが、それでは一般向けではなくなってしまう。
「だからこっちのデチューンした方を一般公開するんだ」
「なるほどね」
「納得しました」
「でもそのうち、もっと扱いやすくしてみせるさ」
そんな話をしているうちにも、ロイザートが近付いてくる。
「よし、着陸だ。上空から見ていよう」
「はい」
ベテランパイロットであるホープは、滑走路へと『スワロー』を近付けていく。
そして可能な限り速度を落とし、見事な着陸を見せた。
「あの速度だと、停止まで時間が掛かるんじゃ?」
「そうだ。だからブレーキがある」
「えっ?」
「まあ、見ていてごらん」
ゴウやルビーナは、仁に言われたとおりに眼下の滑走路を見つめた。
「あ!」
『スワロー』の機首に穴が開き、そこから逆噴射がなされたのである。
そのおかげでみるみる速度は落ち、400メートルほどの滑走後、『スワロー』は静止したのであった。
最終的に仁が取り付けた『逆噴射ブレーキ』である。
現代地球の飛行機に比べ、内部構造が単純な『スワロー』だからこそ可能なギミックである。
「だいたい1.5Gくらいのブレーキを掛けられる」
1.5G……約15メートル毎秒毎秒の加速度であれば、時速200キロを3.7秒で停止させることができる。
その場合の移動距離は103メートル弱となるので、狭い滑走路でも十分に着陸できるのだ。
「機体が軽い、というのもあるけどな」
「なるほど、勉強になります」
「ためになったわ!」
当然ながら、この『実演』を一番喜んだのはゴウとルビーナである。
* * *
その後、『ハリケーン』も着陸。
ゴウとルビーナは『スワロー』へと駆け寄った。その背中に仁は、
「噴射口付近は熱いから気をつけろよ!」
と声を掛けた。
そして仁は、ダイキと一緒に管制棟へ向かう。『スワロー』を登録しに行く。
現在のショウロ皇国首都ロイザートの空港では、外見と家紋などを登録しておくと、来訪時の所属確認や目的確認などが簡略化されて便利なのである。
『魔法工学師』仁の場合は『自由訪問権』とでも言うべき優遇をされているが、やはり登録はしておくことにしたのである。
「はい、ジン・ニドー様所有、ニドー家所属『スワロー』ですね、承りました」
管制棟の職員は、ちょくちょく訪問しているので仁とも顔なじみになっており、スムーズに登録は終了したのであった。
仁がそんな手続きをしている間、ゴウとルビーナは操縦士であるホープに質問をぶつけていた。
「最高速度はどのくらい?」
「上昇限度は?」
「操縦の癖みたいなものはない?」
「どのくらい機敏な機動ができるの?」
等々。
ホープも、答えられる内容には丁寧に答えていたが、手続きを終えて仁が戻ってくると、
「ご主人さまにお聞きになるのが一番よろしいかと」
と言ってバトンタッチ。
「ジン様ー」
「ジン様〜」
「よしよし、わかったから」
苦笑しつつも、熱心な2人にいろいろと解説をしてやるのであった。
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本日9月9日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210909 修正
(誤)『仁ファミリー』ではないが、ルビーなやゴウ、ダイキとココナには
(正)『仁ファミリー』ではないが、ルビーナやゴウ、ダイキとココナには
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