81-10 スワロー完成
試作機改はスカイ1の操縦で運動性能のテストに取り掛かった。
海上で、十分に高度を取ってから開始である。
『ご主人さま、準備完了です』
「よし、まずは宙返りからだ」
『了解』
仁はコントロールタワーに備え付けられたモニターでその様子を観察している。
老君が『覗き見望遠鏡』を使って撮影してくれた映像だ。
「おっ」
仁は画面を食い入るように見つめた。
試作機改はまず大きな宙返りを行う。
まったく問題ない。
そのまま連続宙返り。
次第に半径を小さくしていく。
「うん、いい感じだな」
試作機改の推力重量比は優に1を超えている。
つまり、翼による揚力がなくとも、垂直上昇を楽々行えるだけの推力を有しているわけだ。
失速して墜落、という心配がないということでもある。
「よし、今度は水平に旋回だ」
『了解』
縦方向の宙返りの次は水平方向の旋回力テストである。
これも試作機改は安定した機動を見せた。
その他にもインメルマンターンやスプリットS、水平ロール・垂直ロールなどの機動を行ったが、機体に異常は発生しなかった。
「よし、十分だ。戻ってこい」
『了解』
試作機改は仁の思ったとおりの性能を発揮してくれたのだった。
* * *
戻ってきたスカイ1に直接話を聞き、最終的な改造・調整を行おうと仁は考えた。
「で、どうだ? 何か気が付いたことはあるか?」
「はい、ご主人様。我々が使うのでしたら、操縦桿が少し軽いですね」
「なるほど」
ゴーレムであるスカイ隊は人間の十数倍の力がある。
それならもう少し重くしたほうが扱いやすくなるのであろう。
「あとは?」
「超高空で翼端から雲を引きました」
「そうか。乱流が発生しているんだな。この場合は残すべきか……いや、なくす方向で行こう」
乱流は悪いことばかりではなく、層流に比べて剥離を起こしにくいため、主翼の後端でわざと乱流を起こす方法もあるくらいだ。
だが仁はなくす方向で改良することにした。
理由は、この機体がジェット機ではなくロケット機であるという点だ。
空を飛ぶために主翼はなくてもいいのである。
が、大気中においては翼は有効なので、必要最小限付けてある、というわけだ。
「もうないか?」
「そうですね、とくにございません」
「わかった」
スカイ1から出された改善点を1つ1つ潰していく仁。
翼端の乱流発生は風洞で実験をして修正していく。
「翼端の形状を変えてみるか」
それでもあまり効果がなかったので、翼端板を付けてみると、なかなか効果があった。
「よし、これでいこう」
こうして最終的な改造・調整が終了。
いよいよ量産試作である。
仁の場合、試作機改をそのまま改造して量産試作にできる。
「お父さま、名前は付けないんですか?」
「え? うーん、そうだな……」
礼子に言われ、名前を考え始める仁。
量産決定なので、『試作機改2』ではなく、名称を決めようというわけだ。
「それじゃあ新型ロケット機は『スワロー』にしよう」
燕。通常エンジンでの大気中飛行では蓬莱島機中最高速が出そうな機体だからである(力場発生器を使えば、おそらく宇宙船がトップ)。
「わかりました」
そして『スワロー』の量産試作機もスカイ1がテストを行い、問題は全て解決したことを保証した。
「よし、これをスカイ隊のために100機用意しよう」
宇宙船ではないが、通常エンジンのまま宇宙空間まで進出できる機体だ。
全長15メートル、全幅9メートル、全高5メートル。定員は操縦士を含め4名まで。
レーザー砲、魔力砲、麻痺銃、魔力爆弾、電磁誘導放射器などを使える。
力場発生器搭載。
また、非常用脱出用の転移門も搭載している。
「これで『スワロー』はよし。あとは普及用エンジンだな」
この『スワロー』に普及用エンジンを付けたらどうなるか。
それが最後のテストである。
* * *
結果だけを書くと、成功した。
それはそうだろう、単にロケットエンジンの出力を絞っただけのことなのだから。
「一般公開用はこっちだな」
脱出用の転移門はなし。その代わり、乗員が脱出用の『転送装置』(個人用の転移の魔導具)を携帯することになる(蓬莱島関係者のみ、これについては一般公開はしない)。
「武装はどうするかな……換装できるようにしようか」
武装は換装式とすることにした。
こちらは戦闘機というよりもマルチロール機。
蓬莱島の戦力を公の場で見せる場合に使う機体として設定する。
仁がここまで人目を気にするのは、いずれ『アヴァロン』でお披露目するつもりだからであった。
「『航空研』がどんな機体を作るかも楽しみだしな。あ、それから『オノゴロ島』にも紹介しないとな。……あ……」
というところで、ロイザートにエルザをはじめゴウやルビーナ、それにメルツェらを放置したままであることに気が付いた。
「……いくらなんでも一旦顔を出さないと無責任だよな……」
それなりに理由があり、1つ片付けると次の事件が仁を呼び……ということになったので、決して無責任に放置したわけではないつもりだが、彼らにしてみれば理由はあまり関係なく、放って置かれたと思っているだろうなと仁は反省した。
それで、現地時間で明日の朝一番にロイザートへ行こう、と決めた仁である。
「……一応『スワロー』を見せてやるか」
そういうわけで、量産試作はそのまま『無印』として仁が使うことにした。
その場合、操縦士は礼子もしくはホープになる。
その2人にも、とりあえず1度は操縦しておいてもらおうと思い、まずは礼子に乗ってもらう。
当然のように、礼子は『スワロー』を自由自在に操ってみせた。
次はホープ。
ホープもまた、仁が製作した逸品である。
期待どおり、『スワロー』を自在に乗りこなしてくれたので仁も大満足したのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210907 修正
(旧)その代わり、乗員が脱出用の『転送装置』(個人用の転移の魔導具)を携帯することになる。
(新)その代わり、乗員が脱出用の『転送装置』(個人用の転移の魔導具)を携帯することになる(蓬莱島関係者のみ、これについては一般公開はしない)。




