81-09 試作機
『マギロケットエンジン』を完成させた仁は、これを航空機に搭載してみたいと思うようになった。
とはいえ、もう夕方。
「お父さま、それは明日になさってください」
と礼子に言われ、温泉に浸かって英気を養うことにした。
* * *
「ああ、いい湯だ」
浴槽の中でのびのびと手足を伸ばすと、疲れがお湯に溶けていくようだった。
こうしてみるとやはり疲れていたんだなあと仁は反省する。
「今夜はもうこのままのんびりするか」
そして仁は夕食後も『マギロケットエンジン』について考えず、素直に床に就いたのである。
連日あちこち飛び回っていた疲れがあったようで、ぐっすりと眠った仁であった。
* * *
十二分に休んだ仁は、翌日朝から全開モード。
朝食もそこそこに、礼子に加えて『職人』1から3までの3体も助手にして、新型航空機の製作をしていた。
「エンジンは専用にするかな」
サイズをアップすることにした仁。
「今回作るのは空中・水中・宇宙航行可能な飛行機だ」
運用するのは空軍、スカイ隊。
軽銀やマギ・ジュラルミンをふんだんに使い、軽量かつ頑丈な機体にする。
全長は15メートル、全幅9メートル。小さめのテーパー翼を持ち、『マギロケットエンジン』2基搭載。
イメージ的には『Fー5E』に近い。
エンジンの推力は1基あたりおよそ500トン(約4900kN)。
現代地球のジェット戦闘機のエンジンは1基あたり100kN前後の推力のモノが多いことを考えると驚異的なパワーである。
まず試作的な1号機が完成したのは午前10時前。名称は未定。
さっそく『スカイ1』がテスト飛行を行う。
研究所裏の飛行場で準備が進められた。
専用の回線を使った『魔素通信機』でのやり取りが行われる。
『ご主人さま、こちらスカイ1。発進準備完了しました』
『よし。10秒後にスタートだ』
『了解』
『無理はするなよ? まずはエンジン性能の確認からだ』
『了解』
そして試作機はエンジンスタート。
滑走を開始した。
「お、いい感じだな」
滑走路脇のコントロールタワーで仁は様子を見ている。
試作機はそのパワーと、軽量であることも手伝って、わずか40メートルほどの滑走で離陸した。
これは操縦士がスカイ1というゴーレムであることも大きい。
彼らは数十Gという加速度も苦にならないからだ。
空母のカタパルトが3.99Gというデータもあり、5Gだと一般人が気絶、鍛えても人間には12Gくらいが限界だという。
墜落時の加速度が100Gというデータがあるが、試作機の最大加速度は30Gを超え、50Gにもなるという目算を仁は出していた。
離陸時の速度は時速300キロくらいであったので、発進時の加速度は20Gを超えていたことがわかる。
離陸した試作機はすぐに視界から消えた。
その後は老君が『覗き見望遠鏡』で追ってくれているので、コントロールタワーのモニターで確認しつつ魔素通信機でやりとりをする。
『こちらスカイ1。機体の調子は上々。音速を突破しました』
「よし。まず第1段階は成功だな。『風除けの結界』を張ってマッハ3まで出してみてくれ」
『了解』
『風除けの結界』は『空気分子をどかす』結界である。これを張っていれば『衝撃波』は生じない。
が、その機能上、マッハ3以上の速度で『空気分子をどかす』ことはできない。
『こちらスカイ1。マッハ3到達。機体に異常はありません』
「エンジンの温度はどうだ?」
『現在摂氏320度。問題ありません』
「機体の振動は?」
『エンジンによるものが若干。空力的なものは皆無』
「よし」
『風除けの結界』を使わない飛行中は空気を取り入れて冷却、つまり空冷式にしてあるので、過熱の心配は低い。
『風除けの結界』を使った時は空気を取り入れられないので魔法による強制冷却『魔冷』に切り替える。
仮に過冷却になっても魔法による爆発なのでエンジンが停止する心配もない。
『まもなく高度1万メートル』
「よし、1万を超えたら一度戻ってこい」
『了解』
試作機の帰還も問題なく、実験は大成功であった。
スカイ1は試作機を無事蓬莱島に帰還させた。
着陸した試作機に駆け寄った仁はスカイ1を労う。
「よくやってくれたな。ご苦労だった」
「はい、ご主人さま。ありがとうございます」
そして試作機を工房に運んだ仁はチェックを行った。
「フラッターとか変な振動もなかったんだな?」
「はい、ご主人様」
スカイ1に確認しながら仁は確認を進める。
「うん、エンジンにはまったく問題はないな。機体の強度も十分だ」
「お父さま、そうしますと手を加える所は?」
スカイ1からの報告で、操縦性にまったく問題はないということなので、まず仁が行うことは1つ。
「軽量化かな」
試作機ということで、十分すぎる強度を取っている箇所があるので、その見直しである。
具体的には主脚、主翼、尾翼だ。
今回は魔法による強化を一切せず、デフォルトの強度だけで試験を行ったので、軽量化の余地はまだまだ残っている。
「ここの桁材も軽量化できるな」
「お父さま、外板の厚みも0.5ミリ減らせますね」
「ご主人さま、ここの部材は中空にして軽量化しましょう」
仁、礼子、『職人』らで作業を進めていく。
1時間で改造は終了した。
似たような形状の『Fー5E』が4.4トンくらいあるが、この試作機は3トンを切る。
が、ここでちょうどお昼になったので、昼食後に再度試験飛行だ。
早く飛ばしてみたい仁は大急ぎで昼食をかきこんだのであった。
* * *
「さあ、試作機改のテストだ」
テストパイロットは今回もスカイ1。
『ご主人さま、準備完了しました』
「よし。10秒後にスタートだ」
『了解』
「今回は運動性能も確認するから、動力性能の確認は程々にな」
『了解』
「運動性能は東の海上で行うから、そのつもりでいてくれ」
『了解』
そして試作機改は発進した。
「お、いいな」
機体が軽くなった分、滑走距離も短くなり、30メートルほどで離陸。
そのまま斜め45度で上昇していく。
仁はコントロールセンターのモニターでその様子を確認。
「うん、軽量化の悪影響はなさそうだな」
『はい、ご主人様。操縦桿がかなり軽くなりました。10パーセントほどです』
「そうか。あとは?」
『はい。加速が11パーセント向上しています』
「よし、軽量化の効果は出ているな」
いよいよ運動性能のチェックである……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210906 修正
(旧)小さめの後退翼を持ち
(新)小さめのテーパー翼を持ち
(旧)
飛行中は空気を取り入れて冷却、つまり空冷式にしてあるので、過熱の心配は低い。
仮に過冷却になっても魔法による爆発なのでエンジンが停止する心配もない。
(新)
『風除けの結界』を使わない飛行中は空気を取り入れて冷却、つまり空冷式にしてあるので、過熱の心配は低い。
『風除けの結界』を使った時は空気を取り入れられないので魔法による強制冷却『魔冷』に切り替える。
仮に過冷却になっても魔法による爆発なのでエンジンが停止する心配もない。
(誤)速く飛ばしてみたい仁は大急ぎで昼食をかきこんだのであった。
(正)早く飛ばしてみたい仁は大急ぎで昼食をかきこんだのであった。
(誤)これを張っていれば『衝撃波』は生じない。
(正)これを張っていれば『衝撃波』は生じない。
20210907 修正
(誤)試作機はそのパワーと、軽量であることも手伝って、わずか200メートルほどの滑走で離陸した。
(正)試作機はそのパワーと、軽量であることも手伝って、わずか40メートルほどの滑走で離陸した。
(誤)離陸時の速度は時速300キロくらいであったので、発進時の加速度は20Gを超えていたことがわかる。
(正)離陸時の速度は時速300キロくらいであったので、発進時の加速度は10Gくらいであることがわかる。
(誤)機体が軽くなった分、滑走距離も短くなり、150メートルほどで離陸。
(正)機体が軽くなった分、滑走距離も短くなり、30メートルほどで離陸。




