81-01 歓迎パーティ
蓬莱島では、アーノルトとチェルが『仁ファミリー』に入った、ということで賑やかであった。
蓬莱島時間で午後7時、『ファミリー』全員が集まり、パーティーを開いたのだ。
これで第2期仁ファミリーは……。
仁、礼子、エルザ、サキ、ラインハルト、ベルチェ、ミーネ、ステアリーナ、トア、マルシア、ロドリゴ、ヴィヴィアン、ハンナ、リシア、ルイス、ビーナ、ミロウィーナ、グース、マーサ、シオン、マリッカ、ロードトス、リュドミラ、『長老』ターレス。
それにアーノルトとチェルが加わった、ということになる。
その他にゲストとして、『森羅』のシオンの母ロロナと、『長老』の養女ネージュとルージュが参加していた。
もちろんエレナ、アン、ロル、レファも同席している。
さらに『デウス・エクス・マキナ』も同席し、その存在意義をアーノルトに説明した仁である。
「なるほどなあ、力を隠すのもいろいろと面倒なんだな」
「そういうことさ。アーノルトにはもう隠す必要がないんで助かるよ」
ちなみに、仁の身体のことや、メンバーの大半が『人造人間』であることなども説明してある。
アーノルトも、普通の人間ではなさそうだと薄々感づいていたようで、それほど驚くことはなかった。
* * *
そしてパーティが始められた。
「アーノルト、ようこそ!」
「『仁ファミリー』のこれからに乾杯!」
「いやあ、メンバーが増えるというのは嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます」
アーノルトのボディは味覚を備えているので、料理の味もワインのよし悪しもわかる。
「このワインは美味しいですね」
「そうだろう。僕も気に入っているんだ」
「ライ兄はワインにはかなりうるさい、から」
実のところエルザは、ロイザートにゴウやルビーナ、それにメルツェを残して参加している。
ゆえに、あまり長居はできない。
「エルザ、向こうはどんな様子だ?」
気になった仁がエルザに尋ねると、
「ん、ジン兄、大丈夫。ゴウもルビーナもメルツェも仲よくやってる」
「そっか。……悪いけど、もう少し頼む」
「ん、任せて」
メルツェ誘拐から、はや3週間余り。
随分といろいろな騒動があったなあ、と仁はしみじみ思うのだった。
「これから仁たちはどうするんだい?」
ラインハルトが聞いてきた。
「うん、『魔導大戦』についてのまとめが終わったから、文章に起こして『アヴァロン』でのテキストを用意するよ」
「ああ、そう言ってたものな」
「まあ、『デキソコナイ』とか『始祖』関連はまだ詳細は公開できないけどな」
これに関しては、世界への影響が大きいだろうから、ゆっくりと浸透させていくことになるだろうというのが全員の見解である。
「それよりも気になっているのが『最終兵器』だよね」
サキがやって来て、話に乗っかった。
「あれだけの鋼材を始めとする資材がどこに消えたのか……だな」
「量的にいって、『アヴァロン』クラスの何かを作ろうとしたのかな?」
「『アヴァロン』はメガフロートだから大きさの割に軽いけどな」
およそ160万トン、というのが『アヴァロン』の排水量である。
陸上にそんなものがあったら目立つのではないかと思われるが、これまでそうした建造物は見つかっていないのである。
「本格的に探すか……?」
老君に『覗き見望遠鏡』を使って探してもらうか、あるいは『金属探知機』のようなものを作って探すか。
仁はちょっと考え込んだ。
「ジン、まあそれは一旦置いておいてくれないか」
「ああ、グース」
「昼間の『まとめ』だけどね、2つほど足りないものがあるんだ」
「なんだい?」
「1つはフソーやミツホでどうだったか。……こっちは僕も少しは伝え聞いているが、肝心なもう1つは『最前線』だよ」
「え?」
「……実際に戦っていた人たちの物語さ」
「ああ、そうか……」
戦場で、どんな戦いが行われていたのか。それをグースは知りたかったのだと言った。
そしてヴィヴィアンも、
「そうなのよね。『語り部』として、それを知ることができないのが残念だわ」
とはいえ、最前線で戦っていた人々の記憶は虚空に散って久しい。
今となっては再現すらできないのである。
「……うーん、当時の戦闘用ゴーレムが残っていればなあ……」
大破してスクラップに回されたものだとしても、なにがしかの戦闘データが制御核に残っていれば……と思わなくもない仁である。
だが、そうしたものはこれまで調査した遺跡には何一つ残っていなかったのである。
「遺跡の魔導頭脳でさえ最前線で何が行われていたか、知らないんだものなあ」
「残念だな」
「残念ね」
仁、グース、ヴィヴィアンらはほっと小さく溜息を漏らしたのであった。
「最前線の更に前衛は、おそらくゴーレムが担っていたと思うんだ」
そこにやって来たのはルイス。
指揮官的な思考で当時を空想する。
「『北方民族』相手なら、『盾役』をゴーレムに任せ、後方から魔法もしくは魔導具による飽和攻撃。それが基本戦術だったんじゃないだろうか」
「なるほど、さすがルイス」
「だけど、『北方民族』だってゴーレムを持っていただろうし、長距離攻撃だってしてきたと思うんだが?」
「ああ、グースの言うことはおそらく正しい。その場合、やはりゴーレムにより敵陣の撹乱を行った可能性がある」
「ラインハルト、君もそう思うかい?」
「うん。……当時の指揮官がどんな戦術理論を学んでいたか、知りようもないんだけどね」
同じ人間が考えることであるから、少しは共通することを考えていたろう、とラインハルトは言った。
「速度型のゴーレムで敵陣を撹乱し、長距離攻撃を叩き込む、か」
感心したようにグースが呟いた。ラインハルトは更に続ける。
「そう。その他に考えられる戦術は、魔法型ゴーレムによる敵魔導士のジャミングだ」
「ジャミング?」
「うん。『魔法障壁』や『エーテルジャマー』ほどの効果は望めないだろうが、敵魔導士の集中を乱し、魔法の発動を遅らせたり威力を低減させたりくらいはできたんじゃないかな?」
「具体的にはどうやって?」
「わからないよ。……でも、強力な魔法を使おうとしては止め、止めては使おうとする……なんてどうだ?」
「なるほど。周囲の自由魔力素を撹乱することはできそうだ」
彼ら『仁ファミリー』にとっては、こんな雑談もまた楽しいひとときなのだなあ、と、眺めていたアーノルトは思う。
そして自分もまたその一員なのだと思うと、嬉しさがこみ上げてくるのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日8月29日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210829 修正
(誤)ゆえに、あまり長いはできない。
(正)ゆえに、あまり長居はできない。
(誤)敵魔導士の集中を見出し、魔法の発動を遅らせたり威力を低減させたりくらいはできたんじゃないかな?」
(正)敵魔導士の集中を乱し、魔法の発動を遅らせたり威力を低減させたりくらいはできたんじゃないかな?」
20220330 修正
(旧)「まあ、『デキソコナイ』とか『始祖』関連はまだ公開できないけどな」
(新)「まあ、『デキソコナイ』とか『始祖』関連はまだ詳細は公開できないけどな」




