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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
80 新たな仲間篇
3059/4347

80-45 閑話133 その語られなかった闇

「うむ……これを、こうして……これで、よし」


 北の地、そのさらに北の、地の底。

 1体の『人造人間(ホムンクルス)』が何やら怪しげな研究をしていた。


「これなら……起動すれば、周囲の自由魔力素(エーテル)を全て光に変えて消費してしまうはずだ」


 そうなれば、自由魔力素(エーテル)に依存して生きている生物にとって致命的なはずであった。


「自分たちの都合で私たちを作り……出来が悪いというだけで廃棄した『奴ら』……その子孫にこれで復讐できるというものだ」


*   *   *


 その『人造人間(ホムンクルス)』を作り出した存在……『始祖(オリジン)』は、この惑星上で生き延び、繁栄することを目的とし、その手助けをさせるため彼ら『人造人間(ホムンクルス)』を作った。

 しかし、予想よりも低い能力に、『デキソコナイ』と呼び、13体全てを廃棄したのである。

 13体はすべて『原形質』に戻されたはずであった。


 だが、『始祖(オリジン)』が天寿を全うした、そのさらに後。

 『原形質』の中から2体が復活したのである。恨みをかてに……。


 生き延びた2体は自らを『負の人形(ネガドール)』と名乗り、自分たちを塵芥のように扱った『始祖(オリジン)』に復讐をすべく、行動を開始した。


 しかし、当の『始祖(オリジン)』はもういない。いるのはその子孫と思われる者たちだけ。

 それでもよかった。

 子孫を残し、再びの繁栄を目指してこの惑星『アルス』に移住してきた『始祖(オリジン)』。

 その目的を達成させないため、子孫を根絶やしにする……。それが復讐になると考えたのであった。


 そのためには、2体はまだまだ力不足であった。

 皮肉なことに、13体分の原形質から再構成された2体は、作られた当初よりも遥かに能力が高まっていたのだ。


 その高まった能力により、2体は長期計画を立てた。


 まずは自分たちの基盤を確立すること。

 次に外界の情報を集めること。

 そして復讐するための『力』を手に入れること。


 生物学的な寿命のない人造人間(ホムンクルス)なので、時間はたっぷりあった。

 『始祖(オリジン)』が遺した施設も利用し、情報を集め、力を蓄えていく。


*   *   *


 あっという間に1000年、2000年が経った。

 その間に、『始祖(オリジン)』の子孫は2つの大陸に広がっていた。

 北の大陸は『ゴンドア大陸』。

 ここには『始祖(オリジン)』の血を色濃く引く者たちが集まり、氏族ごとにまとまって社会を形成していた。

 南にある大陸は『ローレン大陸』。

 こちらは気候が穏やかなためか、爆発的に人口を増やしていた。

 しかしその反面、寿命が短くなっていたが。


「こんなに増えたとはな……」


 己の知識と力を蓄えることに専念していた『デキソコナイ』は、少々驚愕した……が、それもわずかのこと。

 復讐対象が多いということに、かえってくらい喜びを感じたほどだ。


 そこで、ローレン大陸にも工作を仕掛けるための準備を始める。

 具体的な方法としては、工作員を潜入させることだ。


 自分たちを操るために作られた『操縦針(アグッハ)』。

 その構造を理解し、量産……とまではいかずとも、いくらか作り出すことにも成功。

 ゴーレムを使って捕らえた『魔族』にそれを打ち込み、下僕しもべとした。


「ふ、ふふふふふ……我々を操るための『操縦針(アグッハ)』が、まさか子孫を操る道具になっているとは思うまい」


 こんなことにさえ喜びを得られる『デキソコナイ』は、やはり正気ではないのだった。


*   *   *


 『魔族』の工作員は期待に応え、ローレン大陸の情報を集めると同時に、小さな破壊工作も行っていった。


 それは本当にごくごく小さなものだったが、『人類』の発展をわずかながらも鈍らせるようなものばかり。


 平民への教育は害悪だ、と支配階級に吹き込んでみたり。

 『医療』に携わる人を、迷信を用いて排除したり。

 必要以上の乱獲を奨励してみたり。

 

 それらは小さなとげとなって人間社会に埋もれ、ふとした時に思わぬ足かせとなり発展を妨げることになった。


 そして、大陸暦3151年。

 待ちに待った、その時は来た。

 『操縦針(アグッハ)』によって操られる『下僕しもべ』の扇動により、『魔族』に南の地を力ずくで奪い取るよう働きかけさせ、それは成功する。

 後に『魔導大戦』と呼ばれる戦争の始まりである。


 『人間』が勝とうが『魔族』が勝とうが、『デキソコナイ』にはどうでもよかった。

 『始祖(オリジン)』の子孫が殺し合い、その数を減らすのを見ることが目的だったからだ。


 そして膠着状態になりかかった時に、大きなテコ入れを行う。


 『魔素暴走エーテル・スタンピード』である。

 『操縦針(アグッハ)』を埋め込んだ『下僕しもべ』を使い、『人間』側に『最終兵器』として与えたのだ。

 その魔導具自体は『古代遺物(アーティファクト)』という扱いにした。


 使えばよし。使わずともよし。

 『魔素暴走エーテル・スタンピード』の魔導具は遠隔操作によりいつでも『デキソコナイ』が起動させることができるのだから。


 だが、3155年9月29日。

 『最終兵器』を所持していた基地に『魔族』が攻め込んだ。

 基地の司令はもうこれまでと、魔導具を起動したのだ。


 これにより、『人間』は6割、『魔族』は実に8割もの人口激減が起こったのである。


「ふふふ、愉快だ。生き残った連中は、せいぜいいたぶってやろうではないか」


 くら愉悦ゆえつに打ち震える『デキソコナイ』であった……。


 それからも小さな嫌がらせは続けられ、激減した『人類』と『魔族』は知らないうちに『デキソコナイ』の悪意にさらされ続けていた。


 それは、大陸暦3456年まで続く……。


*   *   *


 大陸暦3456年。

 『デキソコナイ』は気づかなかったが、その『とげ』が抜かれ始める。

 それとなく衰退へと誘導していた『人類』側が変わり始めたのだ。


 初めは小さな改革だった。

 魔導具でさえない、単なる道具。

 だがそれは、人々の生活を変えるだけの力があった。

 その道具の名はポンプという。


 それからも小さな改革は続いた。

 コンロ。リヤカー。浮き輪。ライター。ポップコーン。湯沸かし器。冷蔵庫。掃除機、顕微鏡……。

 ほんの少し、生活を豊かにするもの。だが積み重なれば、生み出される『ゆとり』は大きくなっていく。


 『魔導大戦』の残滓であった『ギガース』を単独で倒すモノがいた。

 意識誘導をした『魔族』に仕掛けさせた『疫病』も解決された。

 そして決定的だったのは『魔族』を排斥せずに受け入れた『人間』がいたことだ。

 その『人間』が、あまつさえ『魔族』を救おうと手を差し伸べるなど、『デキソコナイ』の理解の外だった。


 『操縦針(アグッハ)』を用いて『魔族』を扇動し、その『人間』を排除しようとしたが、逆に『操縦針(アグッハ)』の存在を突き止められ、無力化されてしまった。

 半ば強引に起こした局所的な『魔素暴走エーテル・スタンピード』は『魔族』の数を減らしたが、その代償は大きかった。

 『魔素暴走エーテル・スタンピード』への対策まで行われてしまったのだ。


 繰り出した最強のはずのゴーレムも倒されてしまった。


「いったい、奴は何者なのだ!!」


 魂……というものが『デキソコナイ』にもあるのなら、それは魂の奥からの叫びだったろう。


 『デキソコナイ』の悪意に立ちはだかった者。

 それは『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だったのだ。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20210828 修正

(旧)ライター。ポップコーン。湯沸かし器。冷蔵庫。

(新)コンロ。リヤカー。浮き輪。ライター。ポップコーン。湯沸かし器。冷蔵庫。掃除機、顕微鏡……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 80-45 閑話133 その語られなかった闇 更新ありがとうございます。 [気になる点] こちらの世界の、怨念霊の仕業そのものですね。 [一言] 必ず最後に愛は勝つ。 次回の更新も、楽…
[良い点] デキソコナイの野望をほぼ成り行きで打ち砕いたマギクラさんw [一言] デキソコナイも今はいないけど出来ることなら、呼び出してNDK(ねぇどんな気持ち?)したくなりますねw ハ「デキソコナイ…
[一言] げ、原形質から復活するとは、フリッツにも負けない不死身っぷり いやワンチャン、鍛えればフリッツもいけるか? エ(じぃぃぃぃっ) フ(どたどたどたつるっべたーん!) 礼「どうしたんですかフリ…
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