80-24 地下施設探索
29日の朝、王城で食事を摂ったあと、午前8時半に仁、礼子、アーノルト、チェルたち4人……2人と2体は小会議室に呼び出された。
「ご足労かたじけない」
そこには宰相ダインがいて、仁たちに挨拶をした。
「まずは、昨日約束した『名誉国民』の身分証をお渡しする」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
これでアーノルトとチェルは、セルロア王国国民として扱われることになったわけだ。
「次は、ジン殿、アーノルト殿、チェル殿に依頼した、古の基地調査依頼の謝礼についてですが」
宰相が提示したのは、仁にはミスリル銀2キロ(時価900万円相当)とアダマンタイト1キロ(時価800万円相当)。
アーノルトとチェルには、2人で現金200万トール(約2000万円)という提示があった。
仁としては異存はない。
そしてそれはアーノルトも同じであった。
ただし、
「発見したものの所有権はどうなりますか」
と確認するアーノルトであった。
「そうですな、何が発見されるか……されそうか、わかっているのですかな?」
逆に宰相に質問を返された。
「基地にあったものなら想像がつきます。今もあるかは保証できません」
「まあそうでしょうな。で、何がありそうですかな?」
「…………戦闘用ゴーレム、汎用ゴーレム、魔導頭脳、資材少々、魔導具類、それに……何か乗り物、といったところでしょうかね」
「なるほど。ちなみに、もし見つけた場合にアーノルト殿が欲しいのは何ですかな?」
「魔導具と乗り物です。とはいえ、どんなものが残っているか不明なので、見つけてからの話ですが」
「そうですか……当時の乗り物とはどんなものがあったのです?」
この質問に、アーノルトは少し考えながら説明を始めた。
「ゴーレムが牽引する車、熱飛球もしくは熱気球と呼ばれるもの、それにゴーレム動力の船などですね」
「ほうほう、なるほど」
仁としてはゴーレムが牽引する車にちょっと興味があった。
人力車なのか、それとも馬車をゴーレムが牽くのか、後で聞いてみようと思ったのである。
* * *
この日国王ボザールは隣国フランツ王国からの使節団と会うことになっているというので忙しく、仁たちも公務の邪魔をしては悪いと判断し、王城を辞した。
「さてアーノルト、依頼された基地の調査、でいいのか?」
「うん、もちろんさ」
「よし」
そこで仁は、『オノユニ山』の真西を目指すようホープに指示を出した。
そこまでは30分ちょっと掛かるだろうから、仁は先程思った疑問をアーノルトに尋ねた。
「なあ、さっき言っていた、『ゴーレムが牽引する車』てどんなものなんだ?」
「うん、それかい? 基本は馬車の馬代わりをゴーレムにさせるというところから始まったんだけどね」
「それはわかるな」
「『魔導大戦』が長引いて、戦場での糧秣も馬鹿にならなくてね。結局、馬の代わりにゴーレムが牽く車が開発されたのさ」
「車を引くゴーレムは、何か特色はあったのか?」
「まず足裏にスパイクが付いていたな」
「なるほど、滑りにくいようにか」
「そうそう。それから、多少重く作られていたな」
軽量化は考慮されていなかった、とアーノルトは言った。
「荷車の懸架装置は?」
「うん、一応付いていたな。荷物を最低限守るために」
「そうか。どんな構造だった?」
「大した構造じゃないぞ。ただ支軸のねじれを利用していただけだ」
「『トーションバー』かな?」
『トーションバー』とはねじりばねのことで、現実の自動車にも応用されている。
おそらく、コの字型の支軸の両端に車軸受けがあり、コの字の縦棒をフレームに固定しているのではと仁は想像した。
ダンパーはないが、荷物の保護だけならそれで十分だろうからだ。
「まあ、もっと開発の時間が欲しかったと思うよ」
「そうだろうなあ……」
アーノルトのぼやき。その真意を察する仁であった。
「もう1つ聞いていいか?」
「うん?」
「さっき、基地にありそうなものを聞かれた時に、ほんのちょっとだけ躊躇ったよな? その理由は?」
「はは、ジンは誤魔化せないな。……もしかしたら、と思ったからな」
「……何か、危険なものが?」
「うん。『最終兵器』がな」
なんとも物騒な単語が出てきた。
「『最終兵器』だって?」
「うん。……まあ、戦時中の『大言壮語』の類なんだろうけどね。開発コードが『最終兵器』だったんだよ」
「そういうことか……」
仁としても、多少は理解できる。
不利な戦況を覆すため、景気のいい話題が欲しいわけだ。
そこでそれらしい名前を付けて開発したのだろう……と想像したわけである。
「『ギガース』は決戦兵器……しかも不完全で欠陥品だったわけだが、それ以上のものなのかな?」
「僕にもわからないよ。ただ、当時の上司たちがそんな話をしていたというだけでね」
「まさか、『魔素暴走』を起こすようなものじゃないだろうな?」
「それはない。なぜなら、敵だけを滅ぼせる、というようなことを言っていたからだ」
「つまり『北方民族』だけを選択的に攻撃するような兵器か……」
「ああ。そんなものを残しておくわけにもいかないだろう?」
「そうだな……」
知らなければ放置せざるを得なかったが、知ってしまった今、気になって仕方がない、というのが現実である。
「どんなものか、という情報はないんだな?」
「ないんだよな……秘密の開発がなされていたらしいし」
「まあ、そうだよな」
戦況をひっくり返すような兵器なら、敵には絶対秘密、味方にも情報規制必須、であろうからだ。
「これから行く基地になくても、どこか他の基地や施設にあるかもしれないということか」
「うん、そうなるね」
「……嬉しくない情報だなあ」
溜息をつく仁であった。
* * *
『ハリケーン』は『オノユニ山』の西上空に到着。
「さて、どうやって探すかな」
「ジン、どんな探知手段を持っているんだい?」
「自由魔力素反応を探すことならできるが」
「お、それは凄い、それを使ってみてくれ」
「感度を上げるにはエリアを狭くする必要があるが?」
「うん。目安は『オノユニ山』の真西、距離は山頂から20キロから50キロくらい」
「わかった」
仁はホープに指示を出し、『魔力素探査機』を起動した。
飛行はホープ、『魔力素探査機』は礼子に任せる。
そして飛ぶこと30分。
「お父さま、地下に反応があります」
礼子が、何かを見つけた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20210807 修正
(誤)「これから行く基地になくても、どこは他の基地や施設にあるかもしれないということか」
(正)「これから行く基地になくても、どこか他の基地や施設にあるかもしれないということか」




