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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
3012/4342

79-39 末路

 使い捨てられた『元聖女』と『聖女』の人質問題は解決した。

 残るは『導師』である。


「さっき見かけた奴はどうなった?」


 マキナ3世は『世界警備隊』陸戦隊隊長のレヴェラルド・ダーテスに質問した。


「はい。あいつは捕らえましたが、下っ端のようです。尋問に少しだけ答えましたが、まだあと2名、『導師』がいるようです」

「そうだろうな」


 事前情報と一致する、とマキナ3世は思っている。

 が。


「『導師』の1人は『大聖堂』の一番上に隠れているようです。そしてもう1人は、ここにはいないということでした」

「いない?」

「はい。通常は別の場所に居を構えているようです。そいつが親玉らしいですね。『大導師』と自称しているらしいです」

「大導師、か……」


 どこにもそうした権力欲の強い者はいるのだなとマキナ3世は思ったのである。


*   *   *


 同じ頃、仁Dの『ハリケーン』がクゥプ郊外に着陸していた。

 その隣にはマキナ3世の『アリストテレス』も着陸している。

 いよいよ作戦も大詰めである。


 その『アリストテレス』の船室キャビンに仁Dと礼子、そしてフランシス・ヴァロア・ド・セルロアがいた。

 マキナ3世側は医療研副室長のメイ・シャイ・ジョーイとその護衛の『スペース10』がいて、互いに中間報告を行っているのである。


 ここまでで……。

*『聖女』3名の麻薬依存症解除、保護済み。

*『元聖女』3名、救出完了。未治療。今はベッドに休ませている。

*『聖女』アリアンヌの両親を地下室から救出、保護。

*『聖女』アウラリアの両親をオースにて保護。

*『導師』1名逮捕。

*『ファナ農場』制圧完了。

*『ファナ農場』担当の農夫1名逮捕。

*『ファナ農場』警備ゴーレム全数無力化、サンプル2体確保。

*『ファナ』サンプル入手。


 という成果が上がっている。

 未治療勢はこれから治療を開始。


 そして、『大聖堂』では残り2名の『導師』のうち1名の逮捕が行われようとしていた。


*   *   *


「……雑魚ばかりですね」


 『大聖堂』の最上階とは、建物後部にある尖塔のてっぺんである。

 そこを目指すのはマキナ3世、従騎士レイ、陸戦隊隊長レヴェラルド・ダーテス、そしてチェル。


 そんな彼らを追い落とそうと襲ってきた戦闘用ゴーレムをレイが打ち倒したところである。


 この尖塔の階段は、塔の内側に螺旋状に付いている。

 つまり中空の塔の外壁に螺旋状に階段が形成されていて、中心部は空洞なのだ。

 手すりもなく、階段の幅は1メートルくらい、尖塔の高さは20メートルくらい。

 落ちれば1階まで真っ逆さまである。


「あと少しだ……」

「邪魔ですね」


 塔の最上階まであと20段くらいの所までやって来たマキナ3世たち。

 今また、ゴーレムを一体、レイが処理したところである。


「もう打ち止めのようだな」


 これまでのゴーレムは螺旋階段の途中に立っていたものが動き出して襲ってきた。

 最早見える範囲にそんなゴーレムはいない。


「あのドアの向こうに1体、隠れています」

「そうか」

「無力化します」

「やれ」


 レイは剣を扉越しに突き入れた。


「手応えがありました」


 そして扉の向こうで重いものが倒れた音が聞こえ、ほぼ同時に男の悲鳴らしきものも響いたのである。


「やりました」


 レイが扉を開けると、ゴーレムが倒れており、その下敷きになって中年の男が倒れていた。


「手間が省けたな」


 あっけない幕切れに、全員の肩の力が抜けた。


 2人目の『導師』もまた、逮捕することができ、残るはあと1人。

 が、その者はここにはいない。


 そこで、『大聖堂』での作戦の終わりに、内部の徹底調査を行うことになった。

 『スペース11』から『スペース20』までの10体に加え、仁Dが連れてきた『ランド隊』20体も加わって調査が行われた。


*   *   *


「もう危険はなさそうです」


 ということで、セルロア王国国王の叔父、フランシス・ヴァロア・ド・セルロア立ち会いのもとで調査が行われていく。

 もちろん、事前に老君が『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で確認している。


 一部の信者や上級職員がわずかながら抵抗したが、『麻薬の所持および使用』『暗示の魔導具の所持及び使用』『民間人の拉致及び監禁』という罪状は明白、『捜理協会(そうりきょうかい)』は最早宗教団体ではなく犯罪者組織と見なされていると告げれば、皆投降するのであった。


 『大聖堂』内の調査はどんどん進んでいく。


「溜め込んだ寄付金らしき隠し財産が2千7百万トールありました」

「宝石類が衣装箱3つ分」

魔結晶(マギクリスタル)が衣装箱2つ分も」


 次々にあらわになる隠し財産。

 ほぼ全てが信者からの寄付によるものだ。


 それをほぼ全て、私腹を肥やすために使っていたとしたら、完全に詐欺罪である。

 さらに、


「剣や槍が大量に見つかりました」

「鎧や盾もたくさん」

「弓矢が数人分」


 と、宗教団体には不似合いな武器・防具までが発見され、セルロア王国の法と国際法に照らし合わせ、『捜理協会(そうりきょうかい)』は完全に犯罪組織の烙印が押された。



*   *   *


「『アヴァロン』はこれ以上の内政干渉をしないことにします。以降は、住民の救済に尽力します」


 1日の終り、クゥプ郊外に着陸した『アリストテレス』内でデウス・エクス・マキナ3世が宣言した。


「あいわかった。以降はセルロア王国の司法組織に任せてもらおう。その上で、礼を申し上げる。この度は『捜理協会(そうりきょうかい)』の闇を暴いていただき、感謝する」


 王の叔父、フランシス・ヴァロア・ド・セルロアがマキナ3世や仁D、イルミナ・ラトキン、レヴェラルド・ダーテス、メイ・シャイ・ジョーイ、礼子、レイ、ハーン、チェルらに礼を述べ、この作戦は終了したのである。


 残るは自称『大導師』の逮捕であるが、これのみ、『アヴァロン』が引き続き担当する。

 というのも、隣国へ逃げた可能性もあるため、国際組織である『アヴァロン』が手掛けたほうがよいだろうという判断からだ。


 そして残務として、『捜理協会(そうりきょうかい)』の信者たちの麻薬依存症解除があるが、これは翌日、チェルの力を借りて行うことになる。

 また、『大聖堂』を住民救済の場に改装する。これも『アヴァロン』が主導で行う。費用や物資はセルロア王国が負担する。

 こういうことになった。


*   *   *


「ようやく落ち着いたな」


 今は仁本人が操縦している仁Dは、着陸した『ハリケーン』に乗り込んだ。

 まだ離陸はしない。

 翌日の麻薬依存症解除の手伝いをするつもりなのである。


 フランシス・ヴァロア・ド・セルロアは『タウベ改2』で王都へ送っていったのでこの場にはいない。


「ジン様、お疲れさまでした」


 そこへチェルがやって来た。


「ああ、チェルもお疲れさん」

「いえ、わたくしは自動人形(オートマタ)ですので疲れません」

「それはわかっているけど、まあ常套句みたいなものだから」

「理解しました」


 クゥプの夜空は晴れ渡り、満天の星が瞬いていた。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210712 修正

(旧)使い捨てられた『元聖女』と元『聖女』の人質問題は解決した。

(新)使い捨てられた『元聖女』と『聖女』の人質問題は解決した。


(誤)・・・礼子、レイ、ハーン、チェルらに例を述べ、この作戦は終了したのである。

(正)・・・礼子、レイ、ハーン、チェルらに礼を述べ、この作戦は終了したのである。

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[気になる点] 次話が投稿されてるのに前の話への感想で申し訳ありません。 2021年 07月12日 14時20分 に投稿されている 「チハヤ」さんの書かれた感想の >聖女が被害者サイドみたくなって…
[一言] >「『導師』の1人は『大聖堂』の一番上に隠れているようです。 一番逃げ場が無さそうな場所ですが、 後の展開を見るに、どうやら護衛のゴーレムを戦わせている隙に脱出する算段でもあった物 ……と思…
[一言] まだ残党がいるか…… 剣や槍もとなると、冗談抜きで麻薬漬けにした狂信者を使っての反乱考えてた可能性もありますね 鐘楼の階段に関しては、あんな階段だと当人も上り下り怖かったでしょうに…… と…
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