79-39 末路
使い捨てられた『元聖女』と『聖女』の人質問題は解決した。
残るは『導師』である。
「さっき見かけた奴はどうなった?」
マキナ3世は『世界警備隊』陸戦隊隊長のレヴェラルド・ダーテスに質問した。
「はい。あいつは捕らえましたが、下っ端のようです。尋問に少しだけ答えましたが、まだあと2名、『導師』がいるようです」
「そうだろうな」
事前情報と一致する、とマキナ3世は思っている。
が。
「『導師』の1人は『大聖堂』の一番上に隠れているようです。そしてもう1人は、ここにはいないということでした」
「いない?」
「はい。通常は別の場所に居を構えているようです。そいつが親玉らしいですね。『大導師』と自称しているらしいです」
「大導師、か……」
どこにもそうした権力欲の強い者はいるのだなとマキナ3世は思ったのである。
* * *
同じ頃、仁Dの『ハリケーン』がクゥプ郊外に着陸していた。
その隣にはマキナ3世の『アリストテレス』も着陸している。
いよいよ作戦も大詰めである。
その『アリストテレス』の船室に仁Dと礼子、そしてフランシス・ヴァロア・ド・セルロアがいた。
マキナ3世側は医療研副室長のメイ・シャイ・ジョーイとその護衛の『スペース10』がいて、互いに中間報告を行っているのである。
ここまでで……。
*『聖女』3名の麻薬依存症解除、保護済み。
*『元聖女』3名、救出完了。未治療。今はベッドに休ませている。
*『聖女』アリアンヌの両親を地下室から救出、保護。
*『聖女』アウラリアの両親をオースにて保護。
*『導師』1名逮捕。
*『ファナ農場』制圧完了。
*『ファナ農場』担当の農夫1名逮捕。
*『ファナ農場』警備ゴーレム全数無力化、サンプル2体確保。
*『ファナ』サンプル入手。
という成果が上がっている。
未治療勢はこれから治療を開始。
そして、『大聖堂』では残り2名の『導師』のうち1名の逮捕が行われようとしていた。
* * *
「……雑魚ばかりですね」
『大聖堂』の最上階とは、建物後部にある尖塔のてっぺんである。
そこを目指すのはマキナ3世、従騎士レイ、陸戦隊隊長レヴェラルド・ダーテス、そしてチェル。
そんな彼らを追い落とそうと襲ってきた戦闘用ゴーレムをレイが打ち倒したところである。
この尖塔の階段は、塔の内側に螺旋状に付いている。
つまり中空の塔の外壁に螺旋状に階段が形成されていて、中心部は空洞なのだ。
手すりもなく、階段の幅は1メートルくらい、尖塔の高さは20メートルくらい。
落ちれば1階まで真っ逆さまである。
「あと少しだ……」
「邪魔ですね」
塔の最上階まであと20段くらいの所までやって来たマキナ3世たち。
今また、ゴーレムを一体、レイが処理したところである。
「もう打ち止めのようだな」
これまでのゴーレムは螺旋階段の途中に立っていたものが動き出して襲ってきた。
最早見える範囲にそんなゴーレムはいない。
「あのドアの向こうに1体、隠れています」
「そうか」
「無力化します」
「やれ」
レイは剣を扉越しに突き入れた。
「手応えがありました」
そして扉の向こうで重いものが倒れた音が聞こえ、ほぼ同時に男の悲鳴らしきものも響いたのである。
「やりました」
レイが扉を開けると、ゴーレムが倒れており、その下敷きになって中年の男が倒れていた。
「手間が省けたな」
あっけない幕切れに、全員の肩の力が抜けた。
2人目の『導師』もまた、逮捕することができ、残るはあと1人。
が、その者はここにはいない。
そこで、『大聖堂』での作戦の終わりに、内部の徹底調査を行うことになった。
『スペース11』から『スペース20』までの10体に加え、仁Dが連れてきた『ランド隊』20体も加わって調査が行われた。
* * *
「もう危険はなさそうです」
ということで、セルロア王国国王の叔父、フランシス・ヴァロア・ド・セルロア立ち会いのもとで調査が行われていく。
もちろん、事前に老君が『覗き見望遠鏡』で確認している。
一部の信者や上級職員がわずかながら抵抗したが、『麻薬の所持および使用』『暗示の魔導具の所持及び使用』『民間人の拉致及び監禁』という罪状は明白、『捜理協会』は最早宗教団体ではなく犯罪者組織と見なされていると告げれば、皆投降するのであった。
『大聖堂』内の調査はどんどん進んでいく。
「溜め込んだ寄付金らしき隠し財産が2千7百万トールありました」
「宝石類が衣装箱3つ分」
「魔結晶が衣装箱2つ分も」
次々にあらわになる隠し財産。
ほぼ全てが信者からの寄付によるものだ。
それをほぼ全て、私腹を肥やすために使っていたとしたら、完全に詐欺罪である。
さらに、
「剣や槍が大量に見つかりました」
「鎧や盾もたくさん」
「弓矢が数人分」
と、宗教団体には不似合いな武器・防具までが発見され、セルロア王国の法と国際法に照らし合わせ、『捜理協会』は完全に犯罪組織の烙印が押された。
* * *
「『アヴァロン』はこれ以上の内政干渉をしないことにします。以降は、住民の救済に尽力します」
1日の終り、クゥプ郊外に着陸した『アリストテレス』内でデウス・エクス・マキナ3世が宣言した。
「あいわかった。以降はセルロア王国の司法組織に任せてもらおう。その上で、礼を申し上げる。この度は『捜理協会』の闇を暴いていただき、感謝する」
王の叔父、フランシス・ヴァロア・ド・セルロアがマキナ3世や仁D、イルミナ・ラトキン、レヴェラルド・ダーテス、メイ・シャイ・ジョーイ、礼子、レイ、ハーン、チェルらに礼を述べ、この作戦は終了したのである。
残るは自称『大導師』の逮捕であるが、これのみ、『アヴァロン』が引き続き担当する。
というのも、隣国へ逃げた可能性もあるため、国際組織である『アヴァロン』が手掛けたほうがよいだろうという判断からだ。
そして残務として、『捜理協会』の信者たちの麻薬依存症解除があるが、これは翌日、チェルの力を借りて行うことになる。
また、『大聖堂』を住民救済の場に改装する。これも『アヴァロン』が主導で行う。費用や物資はセルロア王国が負担する。
こういうことになった。
* * *
「ようやく落ち着いたな」
今は仁本人が操縦している仁Dは、着陸した『ハリケーン』に乗り込んだ。
まだ離陸はしない。
翌日の麻薬依存症解除の手伝いをするつもりなのである。
フランシス・ヴァロア・ド・セルロアは『タウベ改2』で王都へ送っていったのでこの場にはいない。
「ジン様、お疲れさまでした」
そこへチェルがやって来た。
「ああ、チェルもお疲れさん」
「いえ、わたくしは自動人形ですので疲れません」
「それはわかっているけど、まあ常套句みたいなものだから」
「理解しました」
クゥプの夜空は晴れ渡り、満天の星が瞬いていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210712 修正
(旧)使い捨てられた『元聖女』と元『聖女』の人質問題は解決した。
(新)使い捨てられた『元聖女』と『聖女』の人質問題は解決した。
(誤)・・・礼子、レイ、ハーン、チェルらに例を述べ、この作戦は終了したのである。
(正)・・・礼子、レイ、ハーン、チェルらに礼を述べ、この作戦は終了したのである。




