79-35 作戦実行
『大聖堂』の中には、『朝の礼拝』にやって来た信者たちが十数名いた。
「きゃああ!」
「う、うわっ!?」
「なんだ? 何ごとだ?」
一般人なので、こうした軍事行動は見慣れておらず、パニックになる者がほとんど。
そうした者たちには、
「『世界警備隊』だ。一般人は壁際へ退避し、じっとしていろ!」
と告げることで、幾分か落ち着かせることができていた。
マキナ3世たちは、そのまま奥へと突入。
行き先は、礼拝が行われる大ホールだ。『礼拝堂』と呼ばれている。
「おやおや、いったい何の騒ぎですかな?」
マキナ3世一行の前に、1人の中年の男が立ちはだかった。
白いローブのような服を身にまとい、白い僧帽を被っている。
おそらくこれが『導師』であろう、とマキナ3世は見当をつけ、厳しい声で告げる。
「『世界警備隊』だ。ここにある『麻薬ファナ』と『暗示の魔導具』を回収に来た」
だが、『導師』と思われる男は動じない。
「ほう? 証拠はございますかな?」
自信満々に告げる『導師』だが、
「あるぞ」
と言ったマキナ3世の言葉に、虚をつかれる。
「は?」
「先日、ここで出されたお茶に『ファナ』の成分が入っていた」
「なっ!? そ、そんな出鱈目を言っても無駄です……!」
「出鱈目ではありません。……先日、『聖女』アリアンヌに従者ともどもお茶を御馳走になりました。その時のお茶を分析したらファナの成分が含まれていましたよ」
「馬鹿な! 暗示により、そのようなことを覚えているはずはないのに」
「レイは自動人形ですのでね」
「……は?」
「自動人形ですので暗示にはかかりません。飲んだお茶も体内に保存しています」
「くっ……」
そこへさらなる追撃が。
「疚しいことがないなら、そこをどいてください。私は『アヴァロン』医療研副室長のメイ・シャイ・ジョーイです。この先に、麻薬依存症患者の反応があります」
「なっ……!」
ここで、メイ・シャイ・ジョーイは『スペース10』に持ってもらっていた、検知距離10メートルの『脳波検査機』を確認。
個人を特定するには10メートル以内に近づく必要があるが、依存症患者の有無だけならその3倍の距離でもなんとなくわかるのだ。
「奥に、3人の依存症患者がいます!」
「どけ」
マキナ3世は、言葉をなくした『導師』を押しのけ、『礼拝堂』へと足を踏み入れる。
残る5人も後に続いた。
「きゃ」
礼拝堂にいたのは3人の女性。皆、同じデザインの、神官のような白い服を身にまとっている。
1人はアリアンヌだ。おそらく他の2人も『聖女』だろう、とマキナ3世は見当をつけた。
「麻薬依存症患者はこの3人です」
メイ・シャイ・ジョーイが告げる。
「なっ……私、たちは……」
「その、違っ……」
「あの、まっ……」
チェルが進み出て、『聖女』の1人に手をかざした。一番若年に見える『聖女』である。
そして『脱依存』を行使した。
「きゃあ……………………あれ?」
「もう大丈夫です。麻薬依存症の症状は治りました」
「え? あ、あれ?」
「次はあなたです」
「え、あ………………?」
その隣りにいた『聖女』に『脱依存』を掛けるチェル。
そして最後はアリアンヌに。
「あ…………」
かざしていた手を放したチェルは、マキナ3世に報告。
「3人の麻薬依存症は治療しました」
「うん、ご苦労。……メイ、3人の身体的なダメージはどうだろう?」
「はい、お待ち下さい。……『診察』『診察』『診察』……大丈夫です。まだそれほど健康に影響はありません」
「そうか、よかった」
そしてマキナ3世は、3人の『聖女』に向き直った。
「君たちの『麻薬依存症』は治療した。……首に掛かっている『暗示の魔導具』を引き渡してくれるか?」
「あ、は、はい!」
「はい!」
3人の『聖女』……いや『元聖女』は、首からネックレスを外し、マキナ3世に手渡したのである。
「ありがとう。君たちの安全は『世界警備隊』が保証する。しばらく一緒に行動してくれ」
「わかりました」
「わかりました」
『元聖女』の2名は素直に頷いたが、残る1人……アリアンヌだけは、何やら考え込んでいる。
そして、
「あ、あのっ!」
と、マキナ3世に何やら訴えかけようとしたのである。
* * *
一方、『ファナ農場』。
仁Dとフランシス・ヴァロア・ド・セルロアは『ハリケーン』のモニタでことの成り行きを見ていた。
ランド91は、イルミナ・ラトキンを襲おうとしたゴーレムを簡単に無力化した。
が、問題はハーン対戦闘用ゴーレムである。ハーンは力負けしていた。
ここに配備された戦闘用ゴーレムのパワーはおよそ人間の10倍。汎用ゴーレムであるハーンは5倍。
歴然とした力の差があった。
「ハーンは汎用ゴーレムだと言うが……やはり戦闘用ゴーレムには敵わないか……」
「ジン殿、どうするのだ? 農夫に逃げられてしまうぞ?」
フランシスはやや焦り気味に、仁Dに尋ねた。
「逃しはしません。……ですが、ハーンのサポートが必要ですね。……礼子、頼めるか?」
「……わかりました」
礼子は1つ頷くと、『ハリケーン』の非常扉を開け、飛び降りたのである。
「ジ、ジン殿!」
それを見て焦るフランシス。
だが仁Dはそれを抑え、
「大丈夫です。ご覧ください」
「……む?」
礼子は着地の直前に『力場発生器』で減速していた。
そのため、ほとんど衝撃を感じずに着地できたのだが、その様子はモニタには映っていなかったため、フランシスには礼子が100メートルの高度からダイビングし、無傷で着地したように見えている。実際礼子なら可能であるが、その場合着地した場所が無事ではすまないだろう。
着地した礼子は、20パーセントの出力を発揮し、逃げ出した農夫の眼前に現れた。
「な、なんだ!?」
「逃げても無駄です」
「邪魔するな!」
「おとなしく捕まりなさい」
手にした農作業用の鍬を振り回して威嚇する農夫だったが、礼子はあっという間にそれを奪い取ってしまう。
「……は?」
手にしていた鍬が消えてしまったため、呆気にとられる農夫。その腕を捻り上げる礼子。
そこへイルミナ・ラトキンが追いついてきた。ランド91とハーンも一緒である。
「これはレーコ卿、取り押さえありがとうございます」
「容疑者を引き渡します」
農夫は手錠を掛けられた。
その時礼子が一言。
「……気を付けてください。おそらくこの者を奪い返しに、ゴーレムが集まってきています」
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日7月8日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210708 修正
(誤)マキナ
(正)マキナ3世
地の文で4箇所修正。
(誤)そのため、ほとんど衝撃を感じすに着陸できたのだが
(正)そのため、ほとんど衝撃を感じずに着地できたのだが
(誤)無傷で着陸したように見えている
(正)無傷で着地したように見えている




