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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
3005/4342

79-32 脳波検査機

 作戦決行まではまだ時間があるので、皆それぞれの準備を進めることになった。


 仁Dは宣言したとおりに脳波の測定機を作ることにした。

 『アヴァロン』の工房ではなく、自分の乗機『ハリケーン』内で。

 こちらにも、いろいろな資材、素材を積み込んであるため、小さいものであれば作ることができる、と言って。


 実際には蓬莱島にいる仁が作り、転移門(ワープゲート)で『ハリケーン』へ送り届けるのだが。


*   *   *


「うーん……脳の走査と脳波測定か……」

「ジン兄、手伝う?」

「お、エルザ。いいところに」

「ん、老君が教えてくれた」

「そうか。老君、助かるよ」

『いいえ、御主人様(マイロード)のお役に立てれば、それで』


 エルザは世界最高峰の治癒師(ドクトル)である。

 脳の反応を測定する魔導具を作るなら、彼女以上の助手はいないであろう。


「ええとな、1つは『前頭葉』の活動状況を測定するもの。もう1つは脳波のスペクトルを測定するもの、だ」

「ん……わかった。『前頭葉』の活動状況も、脳波のレベルで分かるから、どちらも基本は、脳波検査機」

「そうだろうな。……その辺までは想像できたんだ」

「非接触で、どこまで精度を上げられるか?」

「そうだな。それが難しそうだ」


 エルザと打ち合わせていると、次々に構想が出来上がっていく仁であった。


「基本構成はチェルから聞いた。それを元にしたい」

「ん、なるほど……」


 エルザは首を傾げ、少し考えこむ。仁もまた、自分なりに考えてみる。

 そして1分ほど後、エルザが口を開いた。


「非接触、技術的には可能。けど、小型化が難しい」

「……そうだな」


 任意の場所に魔法陣を構築し、魔法を発現させる技術は、一応の完成を見ている。

 だが、複雑な走査と座標固定の必要があるため、小型化が難しいのだ。


「それは、有効距離を10メートルに限定すれば、かなりマシになるはずだ」

「あ、確かに」


 これが有効距離100メートルになると、机の大きさでも不十分であろうが、10メートルならカバンくらいの大きさで済むだろうと仁は見積もった。


「あるいは5メートルならもっと小さくなるな」


 おそらく距離の2乗か3乗に反比例して小さくできるだろうと考えられた。


「実用的な距離でいうと……5メートルで十分かも」


 むしろ小型化のメリットのほうが大きい、とエルザは言った。


「よし。それじゃあまず有効距離10メートルクラスのものを作って、それから5メートルクラスのものも作ってみよう」

「そういうやり方はいい、かも」


 もっとも、これは仁の製作速度がないと使えない方法ではあるのだが。


*   *   *


「よし、できた」


 およそ30分で有効距離10メートル用の物を作り上げた仁。

 やはり大きく、その昔にあった『ラップトップパソコン』くらいの大きさになってしまった。

 モニター部分に対象者の脳波が表示される仕様だ。


「さすが、ジン兄」

「これでもできるだけ小さくしたんだ」

「ん、携帯性はあるから、実用レベル」

「これをベースに改良し、より小型化したとしても……10メートル用は半分にはならないかもなあ」


 ラップトップパソコンがノートパソコンになるくらいだろう、と仁は言った。


「それでも、すごい」

「まあ先に有効距離5メートルのものを作ってみるよ」


 そういうわけで、次に仁が作ったのはやや大きめのタブレットほどの魔導具だった。


「これが5メートルクラスだ」

「ん、十分実用的」


 ここで老君が意見を述べてきた。


御主人様(マイロード)、10メートルクラスの物もあった方がよろしいかと。そしてそれは同行するゴーレムに持たせ、メインは5メートルクラスを使う、としたらよろしいでしょう』

「なるほどな」


 有効距離5メートルの範囲外にいる者も測定できるのは大きい。


「よし、有効距離5メートルのものを人数分プラスアルファで作ろう」


 一度作ってしまえば、手順はマニュアル化されるため、製作時間はより短くて済む。

 さらに『職人(スミス)』たちにも手伝ってもらい、12台の『有効距離5メートルクラス』の『脳波検査機(ブレインディテクター)』が完成したのであった。


「1台は蓬莱島に。1台は予備として『ハリケーン』に。で、10台を『アヴァロン』に納品しよう」


*   *   *


 そして『ハリケーン』から出てきた仁Dは、中で作ってきました、という顔で5メートルクラス10台と10メートルクラス1台の『脳波検査機(ブレインディテクター)』を納品した。


「お、おおお! さすがジン殿ですな」


 まだ1時間半くらいしか経っていないのに、これだけのものを作り上げてしまう実力に、あらためてトマックス・バートマンは驚愕していた。


「チェルさんは?」

「ハーン殿と共に、『アヴァロン』の中を見学してもらっています」


 マキナ3世やレイも同行しているということで、仁はそれならと安心した。


「では、使い方ですが……」


 とりあえずトマックス・バートマンに使用法を説明する。

 使い方は簡単だ。

 起動し、画面にOKの表示が出たら、センサ部分を対象者に向けて『スタート』のスイッチを押す。

 すると画面に対象者の頭部が映し出され、測定が始まる。

 およそ5秒で検査は終了だ。この短時間で終わらせる、というのも仁が工夫した点である。


「人体に害はないのですよね?」

「もちろんです」

「では、ちょっと試してみたいですな。……フィアス君、いいかね?」


 トマックス・バートマンは最高管理官秘書のフィオネ・フィアスを呼んだ。


「はい、閣下」

「話は聞いていたな? 君の脳波を測定させてもらえんかな?」

「危険は全くありません。単なる測定機ですから」


 非接触で脳波を測定するだけです、こちらからは何も働きかけていません、と仁Dが補足説明を行った。


「はい、そういうことでしたらいいですよ」


 本人の許可ももらえたので、トマックス・バートマンはフィオネ・フィアスに向けて『脳波検査機(ブレインディテクター)』を作動させた。


「どうかね?」

「何も感じません」


 そして5秒後、モニタ画面に脳波画像が映し出された。


「これは、医学で使う脳波画像とはちょっと違います」


 仁は画像の見方を説明していく。


「横軸は時間ではなく周波数です」

「おお、なるほど」

「縦軸はレベル……強さと思ってください」

「うむ」

「5秒ごとに更新します」

「なるほど」

「こうしてみますと、フィフィさんの脳波は平均的ですね」

「あの、フィフィさんはやめてください……」


 そんなやり取りのあと、事務職の人たちにも協力してもらい、この『脳波検査機(ブレインディテクター)』の使い方を指導した仁Dであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210705 修正

(誤)「いいえ、御主人様(マイロード)のお役に立てれば、それで」

(正)『いいえ、御主人様(マイロード)のお役に立てれば、それで』

(誤) 一度作ってしまえば、手順はマニュアル化されているため、製作時間はより短くて済む。

(正) 一度作ってしまえば、手順はマニュアル化されるため、製作時間はより短くて済む。

(誤)『御主人様(マイロード)、10メートルクラスの物もあった方がよろしいかと、ですからそれは同行するゴーレ

(正)『御主人様(マイロード)、10メートルクラスの物もあった方がよろしいかと。そしてそれは同行するゴーレ


(旧)

「危険は全くありません。単なる測定機ですから」

「はい、いいですよ」

(新)

「危険は全くありません。単なる測定機ですから」


 非接触で脳波を測定するだけです、こちらからは何も働きかけていません、と仁Dが補足説明を行った。


「はい、そういうことでしたらいいですよ」


(旧)およそ10秒で検査は終了だ。

(新)およそ5秒で検査は終了だ。

(旧)そして10秒後、モニタ画面に脳波画像が映し出された。

(新)そして5秒後、モニタ画面に脳波画像が映し出された。

(旧)「10秒ごとに更新します」

(新)「5秒ごとに更新します」


 20220329 修正

(旧)「縦軸はレベル……電圧と思ってください」

(新)「縦軸はレベル……強さと思ってください」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「縦軸はレベル……電圧と思ってください」 間違いというレベルではありませんが、電気のない世界で「電圧」って通じるのでしょうか? 確かに「科学」は伝えており、その一部である「電圧」を…
[一言] 一昔前に「脳内ホニャララ」的なアプリと言うか?有りましたね? あれ思い出しました(笑)
[一言] 5秒で検査が済む、それも特に副作用や後遺症もなしに行えるのは現場の人からしたら助かるでしょうねえ 場所も取りませんし色んな所に配備したいですねー
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