79-31 作戦決定
『捜理協会』糾弾のための打ち合わせはいよいよ終盤であった。
「では、『ファナ』だが、これは畑を見つければほぼ解決するな」
『アヴァロン』から植物学者を連れて行き、麻薬の原料になると証言させれば、畑を差し押さえることができる。
また、これを栽培している土地は他にはない(はず)だから、どこから種を調達したのかと問い詰めれば、『島基地』から盗んだものとわかるであろう。
「あ、畑でしたら見つけてありますよ」
「え?」
「は?」
軽い口調で仁Dが言った。
発見したのは老君。『ウォッチャー』と『覗き見望遠鏡』の合わせ技である。
セルロア王国南部の地図を用意してもらい、指で指し示した。
「場所はクゥプの北西ですね。そちらにある町、ドススルとクゥプを結んだ線上3分の1くらいのところです。距離にして15キロくらいでしょうか」
「……なるほど、過疎地帯だな」
マキナ3世が地図を見ながら呟いた。
「そう。このあたりは海からの風が強くて畑に適さないため放置された荒れ地が多く、従って人目にも付きにくい」
「なるほど、ジン殿の言うとおりかもしれませんな」
トマックス・バートマンが感心したように頷いた。
さらに仁Dは情報を伝える。
「そこを風除けの防風林で囲み、その内側で育てているようです」
「それなら、周りから見てもわからないか……」
「そういうことだ、マキナ」
この情報を聞いたトマックス・バートマンは、1つの結論を出した。
「……うーむ……まずは『ファナ』の畑を差し押さえましょう」
「最高管理官、セルロア王国にも話は通しておいたほうがいいですよね?」
「もちろんだ。ラトキン、連絡を頼む」
「わかりました」
これで、まず1つ目の作戦が決まったことになる。
* * *
もう1つ、外せないもの。
『暗示の魔導具』である。
「では、『暗示の魔導具』につきましてはどういたしましょうか」
「いきなり踏み込むことは難しいのですか?」
トマックス・バートマンにチェルが尋ねた。
「そうなのですよ。『捜査令状』というものが必要になります」
「それはどうやったら発行されるのですか?」
「セルロア王国の法務相、もしくはここ『アヴァロン』の法務局が発行します。ですが、もう少し物的証拠が必要になるでしょう」
強権発動、では法治国家の基盤が揺らいでしまう、と説明するトマックス・バートマンであった。
「……しかし、悠長なことをやっていたら、『暗示の魔導具』を隠されてしまうでしょう?」
「チェル殿の言うとおりだ。ここは何らかの手を打つべきだ」
マキナ3世も急いだほうがいい、と言った。
「そうすると『別件調査』かな?」
仁Dが言った。
「なるほど、『別件調査』ですか……」
仁は法律については全くの素人なので、テレビドラマで見た刑事モノから得た知識レベルしかない。
それでも、この場合には、『別の容疑で捜査令状を発行してもらって捜査を行い、その上で目的の証拠を確保する』という意味で理解してもらえた。
「では、その『別件』とは?」
「それなんですよね。いくつか案はあるんですが」
「俺とレイが変装して潜入したのでは駄目かな?」
その上で『暗示の魔導具』を使った『聖女』を取り押さえる、というのはどうか、とマキナ3世は言った。
「それも悪くはないですね」
『暗示』に敏感な人間もいるという建前で気が付いた、と理由付けられる、とイルミナ・ラトキンは言った。
「あとは……『犯罪者』もしくは『容疑者』を追って『大聖堂』に突入したら……という手も」
「いやあ、それはどうでしょうか」
後々強引すぎたと評される可能性がある、とトマックス・バートマンは言った。
「取り押さえるのではなく保護する、という名目のほうがいいのでは?」
仁Dからの提案である。
「なるほど……。適当な理由をつけて『聖女』の健康を心配してやり、その過程で『暗示の魔導具』を発見、差し押さえる、と。いいかもしれません」
「問題は、どういう見方をすれば『聖女』が麻薬中毒であることを指摘できるのか、という点でしょうか」
トマックス・バートマンは大要では賛成。だがイルミナ・ラトキンは細部を指摘してきた。
脳波を見れば中毒患者であることがわかる、というが、おとなしく測定させてもらえるかどうか……が問題だというわけだ。
『あなたは麻薬中毒の疑いがありますので検査させてください』と正面切って頼み込んで承認してくれるかどうか……ということである。
そもそも敵陣である『大聖堂』の中で、そんな行動がとれるかどうか、という問題もある。
「問答無用で検査するしかないでしょう」
仁Dが言った。
「10メートル程度の距離があっても測定できればいいんでしょう?」
「それはそのとおりだが……」
「なんとかそういう性能に仕上げてみせますよ」
と、仁Dは意欲を燃やしたのである。
『大聖堂』には一般人と同様に入ることができるだろうから、そうなれば脳波を測定するのは簡単である。
測定して、中毒患者であると認定できれば保護対象になるし、犯人は逮捕対象となる。
捜査令状なしでも、その流れなら問題はないだろうと結論が出た。
よくも悪くも、現代日本よりはそうした縛りは緩いのである。
* * *
さて、方法はだいたい決定したが、作戦全体を決めていく必要がある。
「ここは2面作戦で行くか?」
マキナが提案した。
「そうですな。『ファナ』農場を押さえる班と、『大聖堂』の捜索を行う班に分かれましょう」
トマックス・バートマンも賛成する。
「では、自分は農場に行きましょう」
発見者である、ということで仁Dが立候補する。
「セルロア王国国王にも話をして、誰か一緒に来てもらうことにしてもいいですね」
『ハリケーン』ならクゥプと首都エサイア間の約400キロを2時間で往復できる。
「そうですな、でしたらそちらはジン殿にお願いしましょう」
「了解です」
というわけで、『ファナ』農場担当は仁Dが引き受けることとなった。
同行するのは『アヴァロン』側からはイルミナ・ラトキン。比較的危険度が低いだろうという判断からだ。
そして……。
「ハーンを連れて行っていただけますか?」
『本来の所有者』の関係者がいた方が、より大義名分も立つでしょう、とチェルは言うのだった。
つまり仁D、礼子、イルミナ・ラトキン、ハーンが『ファナ』農場担当。
そして『大聖堂』へ赴くのは。
デウス・エクス・マキナ3世、従騎士レイ。『アヴァロン』からは『世界警備隊』陸戦隊隊長のレヴェラルド・ダーテス、医療研副室長のメイ・シャイ・ジョーイ。
それにもちろんチェル、である。
この日は準備ということで、作戦決行は翌22日、現地時間午前7時と決まったのである。
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本日7月4日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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を更新します。
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20210704 修正
(誤)「問題は、どういう見方をすれば『聖女』が麻薬中毒であることを指摘するのか、という点でしょうか」
(正)「問題は、どういう見方をすれば『聖女』が麻薬中毒であることを指摘できるのか、という点でしょうか」




