表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
2990/4341

79-17 視察?

 ジュースを飲み終わり、空のコップを設置されたゴミ箱に捨てる。


「そういえば、このコップは使い捨てなのですね」

「ええ。植物の繊維を結着剤で固めた『木紙もくし』を使っています。水がしみこまないようロウを含浸させているようですね」

「少し、技術は進んだのでしょうか」

「これは『ミツホ』からもたらされた技術ですよ」

「ミツホ……?」

「ええ。ハリハリ沙漠のさらに西にある国家です。人間の国ですが魔導士がほとんどいません」

「……魔導士がいない? それで国が成り立つのですか? 興味深いですね……」


 こうした事実もまた、チェルの興味を惹いたようである。


 手ぶらになったチェルとアンはゆっくりと歩き出す。


「次はどうしましょうか?」

「そうですね……技術レベルを拝見したいですね」


 チェルの希望を聞いたアンははたと考える。

 この町は辺境なので魔導具工房がないのである。

 比較的近くで、そうした施設があるのは……。


(『クゥプへ行きますか?』)


 内蔵魔素通信機(マナカム)を通じ、老君が提案してきた。


(クゥプ、ですか?)

(『そうです。あそこでしたら、そこの町より大きく、工房もあります』)

(ですが、『捜理協会(そうりきょうかい)』が……)

(『それはそれで、見せてもいいのではないでしょうか』)

(そうなのですか?)

(『思考や信仰の自由は平和な証拠ですからね』)

(わかりました。交通手段はどうします?)

(『町の外に自動車を転送します。乗合自動車として扱ってください』)

(わかりました)


 0.2秒でそんなやり取りを済ませ、アンはチェルに提案を行う。


「乗合自動車を雇って、他の町へ行くのはどうでしょう? そちらには工房がありますが」

「そうなんですね。では、そういたしましょう」


 すぐに了承が返ってきたので、一行はルトグラの町から出て、南東へ続く街道で待っている自動車のところへ向かう。

 実際の乗合自動車は町の外ではなく中で営業しているのだが、そんなことはチェルもハーンも知らない。

 老君が送り出した乗合自動車はすぐに見つかった。


「これが乗合自動車ですか」

「そうです。……クゥプまで行きたいのですが」

「クゥプですか。ちょっと遠いですが、1万トール出してくれれば行きましょう」

「それではお願いします」

「あいよ」


 もちろん双方とも演技である。

 運転手は『第5列(クインタ)』であるレグルス17、通称『ゼノス』。セルロア王国南部担当である。


 一行は『乗合自動車』に乗り込み、クゥプを目指した。


「所要時間はどのくらいですか?」


 チェルの質問に答えたのはゼノス。


「そうですな、およそ200キロとして、4時間くらいですね」

「わかりました」


*   *   *


 そんなやり取りを見ていた仁は、時間が掛かること自体は気にしないのは、やはり人間とは違うんだなと感じていた。


「老君、クゥプで何を見せるつもりだ?」

『はい、御主人様(マイロード)。あそこには小さいながらも工房が2件ありますし、人の流れもルトグラより活気があります』

「それはそうだ」

『そして何より、あの2体に『島基地』を見せたならどうなるか、確認したいのです』

「ああ、そうだったのか」


 『第1地下』の『イザーク』配下のゴーレムと同じような反応をするのかどうか。

 老君は違う反応をすると予想している。


「そうだな、俺もそう思うよ」

『はい、御主人様(マイロード)。どうやら『魔導大戦』末期になりますと、統一された『基礎制御魔導式(コントロールシステム)』もなく、各自勝手な仕様で魔導頭脳を建造していたのではないかと思われます』

「それはありそうだな」


 『イザーク』はひどいものだ、と仁は密かに心中で溜息をついていた。


*   *   *


 クゥプまでの道中も、チェルはアンにいろいろと質問と会話をしていた。


「街道整備はどういう組織が行っているのですか?」


 とか、


「このあたりは戦火に包まれなかったのですか?」


 などの周囲の情報収集や、


「技術者が激減した後、衰退した文明を再び盛り立てているのですね。人間は……強いですね」


 などの会話をしているうちに、乗合自動車はクゥプへと近付いていく。

 そして、


「一番知りたいのは、今の時代、今の世界で最高峰の技術と技術者ですが、どこに行けばいいのでしょう?」


 この質問が最も答えづらい質問だった。


「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』。そのお方が、世界最高峰の魔法技術者ですね」


 と、技術者に関しては答えられるのだが、『どこに』という問いは答えづらいものだからだ。

 そこで半ば真実を織り交ぜた答えをしておくアンである。


「どこに行けば、という問いにはお答えできません。ですが、チェルさんたちがこの世界を認め、平和の維持に協力してくださるのなら、近いうちにお会いできるかと思います」


「…………そうですか」


 何を思ったのか、少しの間の後、チェルは頷いたのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日はそちらで予告しましたように

 異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

 の更新はお休みさせていただきます。


 お知らせ:6月20日(日)は昼過ぎまで不在となります。

 その間レスできませんのでご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 79-17 視察? 更新ありがとうございます。 [気になる点] チェルたちが何をどう判断するのか、興味深いです。 [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
[良い点] チェルとハーンがマギクラファミリーの手のひらの上で転がされてますなぁw さぁ、この調子で砦のラスボスもまとめて黙くらか…すまでもなく、事実を見せて非常識な知識の情報量でオーバーフローさせて…
[一言] まあ、確かに最後の質問は答えづらいな ……もっとも、蓬莱島の全戦力を知ったら、今回の魔導頭脳は即、白旗上げそうだけど……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ