79-09 計画どおり
『敵基地』の魔導頭脳が対人インターフェースを探しているのではないかという老君の推測を元に立てた計画は、こうだ。
まず、仁サイドの自動人形を『島基地』に配備する。
一時的に転移魔法陣の機能を回復させ、『敵基地』のゴーレムを『島基地』に誘い込む。
仁サイドの自動人形を『敵基地』のゴーレムに持ち帰らせる。
仁サイドは労せずして『敵基地』に工作員を送り込めるわけだ。
これにより、当初の計画は白紙に戻すことにした。
こういう時、『せっかく計画したのだから』などと拘るとロクなことにならないのは経験則で知っている仁たちであった。
* * *
『それでは御主人様、送り込む自動人形はいかが致しましょう』
「それはやはりユミィかヴェラだろうな」
『2人とも、でもいいと思いますよ』
「だが、2人は敵ゴーレムに壊されていたんだろう? どうやって直ったことにするんだ?」
『曖昧なままにしておき、『敵基地』のゴーレムがどう反応するか見てみるのがよろしいかと』
おそらく『敵基地』のゴーレムは、一度破壊されたはずのユミィとヴェラが直っていることを気にもとめないだろう、と老君は言った。
『あの戦闘用ゴーレムに、そんな高度な自律性は搭載されておりません』
「なるほどな。それなら、もう少しだけ2人を強化して送り出そう」
『それがよろしいかと』
* * *
仁は『知識転写』で状況をユミィとヴェラに伝えた。
「わかりました。私達にお任せください」
「強化といいますと、何か機能を追加してくださるのですか?」
「ああ、そうだ。『力場発生器』利用の飛翔装置と、緊急用の転送装置。それに護身用の武器も渡そう。それに、内蔵魔素通信機も」
そう告げた仁は、2体を一時停止させ、宣言したとおりの改造を行っていく。
助手は礼子と『職人』3体だ。
まだ多少の時間的な余裕があるので、普通の速度で作業を行っていく。なので改造が終わったのは20分後であった。
「これでよし。……『起動せよ』」
「はい、ご主人様」
「はい、ご主人様」
ユミィとヴェラの2体は起き上がり、セルフチェックのあと異常なし、と報告する。
新しく追加された機能についても理解していると言った。
「よし。……あんな戦闘用ゴーレムなんか問題にならない性能になっているはずだが、ギリギリまで実力は隠しておいてくれよ」
「はい、ご主人様」
「わかっております」
「それじゃあ、転移門で『島基地』へ行ってくれ。頼むぞ」
「はい、お任せください」
「お役に立ってみせます」
そして2体は転移門を使い『島基地』へと移動した。
* * *
その『島基地』には、今現在『ランド隊』10体と『職人』10体がおり、調査を行っていた。
彼らはその調査を一時中断し、蓬莱島に帰還する。
その後、設置してあった簡易転移門は、ユミィとヴェラにより解体される。
これで万が一にも蓬莱島へ侵攻される危険はなくなった。
次いで機能停止させた転移魔法陣を修復する。
こういうことになる可能性を考慮していたので、一部分を消去するにとどめていたため、修復は簡単であった。
ここまでは計画どおり。
後は『敵基地』の魔導頭脳が派遣した戦闘用ゴーレムがやってくるのを待つだけである。
* * *
その時は意外に早くやって来た。
準備が整った17日の翌日、つまり18日の未明には、『敵基地』の戦闘用ゴーレム2体は、転移魔法陣を使って『島基地』に侵入してきたのである。
「来たようですね、ユミィ」
「そうです、ヴェラ」
2体は手ぐすね引いて待ち受ける。場所は『大金庫』の前だ。
すぐに戦闘用ゴーレム2体が現れた。
戦闘用ゴーレムは、ユミィとヴェラを見つけると、問答無用で捕らえに来た。
それに逆らうことはせず、おとなしく捕まる2体。
老君が予想したように、2体のゴーレムは何の疑問も持たずユミィとヴェラを捕らえ、それで命令を果たしと判断し、復命するべく戻っていったのである。
* * *
「老君が言ったとおりだったな。さすがだ」
『おそれいります、御主人様』
仁は『覗き見望遠鏡』を使い、『島基地』でユミィとヴェラが捕まるのを見ていた。
その戦闘用ゴーレムの動きを見ていれば、蓬莱島のゴーレムたちのような高度な制御核を持っていないことは一目瞭然だった。
『これで、労せずして2体を『敵基地』に送り込めましたね』
「そうだな。あとはあの『ギガース改』をどうするかだ」
『もはやセルロア王国や『アヴァロン』の知るところとなりました。機会を見て、『タイタン』で破壊するしかないでしょう』
「そうだな……いくら『改』とはいっても『ギガース』だからな」
『はい、御主人様。……それに、時間も経ちましたので、転送機で『コンドル』ごと『タイタン』を送り込めます』
「そうだな」
『ギガース改』を見たので『タイタン』を投入した、と堂々と説明できるわけだ。
仁—マキナ陣営が『巨大ゴーレム』を持っていることは知られても構わない。というか過去に知られている。
『いつでも送り込めるよう、準備を進めておきます』
「頼む」
そして仁たちは、ユミィとヴェラがどう扱われるか、待つことにしたのである。
* * *
ユミィとヴェラをそれぞれ肩に担いだ2体の戦闘用ゴーレムは、一路『ルトグラ砦』を目指していた。
正確にはその地下の『施設』を、だ。
担がれているユミィとヴェラは、内蔵魔素通信機で互いに、また老君と通信を行い、情報交換を欠かさない。
〈ユミィ、こちらのゴーレムはいくら話しかけても反応しないわ〉
〈ヴェラ、こちらもそうよ〉
〈……ということは、老君が推測したように、この2体の制御核は大したことないようね〉
〈そうね。でも油断は禁物よ〉
〈わかっているわ〉
〈制御核は大したことがないとはいえ、『消身』は持っているようね〉
〈ええ。いくら夜でも、誰かに見られる可能性はあるものね。『消身』を使っていれば、まだ暗い今、見つかる可能性はかなり低いわね〉
東の空は薄明るくなってきているが、夜明けまではまだもう少し時間がある。
〈『敵基地』に連れ込まれてからが勝負ね、ヴェラ〉
〈それまでは観察と報告に徹しましょう、ユミィ〉
対決までにはまだ、もう少し時間が掛かりそうである……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20210612 修正
(誤)老君が看破したように、2体のゴーレムは何の疑問も持たずユミィとヴェラを捕らえ、
(正)老君が予想したように、2体のゴーレムは何の疑問も持たずユミィとヴェラを捕らえ
(旧)〈でも、『消身』を持っているようね〉
(新)〈制御核は大したことがないとはいえ、『消身』は持っているようね〉




