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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
2979/4345

79-06 報告を通じて

 仁は老君とこれからの行動計画を相談していた。


御主人様(マイロード)、まずは手近なところを解決していき、作戦中に煩わされる心配をなくすことを提案します』

「うん、具体的には?」

『はい。『島基地』の管理です』

「なるほど。内容は?」

『はい。……転移魔法陣の閉鎖ですね』

「ああ、そうか」


 今も発見者あるいはその関係者……『捜理協会(そうりきょうかい)』の関係者と思われる……が訪れている可能性もゼロではないし、今後訪れない保証もない。

 まだ麻薬関連の資材が残っているので、放置はできないというわけだ。

 そこで『島基地』側の転移魔法陣を無効にしてしまえば、もう訪れることはできなくなる、と考えたのである。

 なにしろ、海を渡ってやって来ているわけではなさそうだからだ。


「転移魔法陣が使えなければ、99.99パーセント、『島基地』を訪れることはできなくなるだろうからな」

『そういうことです。こちらは簡易転移門(ワープゲート)を設置しておけばいいわけですし』

「よし、さっそくやってくれ」

『わかりました』


 『島基地』にはランド隊と『職人(スミス)』たちがまだ残っているので、そうした作業もすぐにできる。


御主人様(マイロード)、終わりました』


 老君が報告を行った。

 仁が指示を出して1分後のことである。


*   *   *


「よし、それじゃあ次だ」

『はい、御主人様(マイロード)。『ルトグラ砦』の『敵基地』ですね』

「そうだ。これが当面の主目的だな」

『最終的にはどのような形で収まることをお考えですか?』


 仁が望む決着の形を確認する老君。


「そうだな……。地上部の砦はそのまま残し、地下の魔導頭脳は無力化したいな」

『無力化ですか。……停止させますか? それとも『太白』のように移設しますか?』

「そうか……移設の場合、使い途はあるか?」

『今のところは特に。……そもそも、御主人様(マイロード)がお作りになる魔導頭脳の方が遥かに性能が上ですから』

「ありがとう。……そうか……そうすると完全に停止させる方向かな」

『破壊はなさらないんですね?』

「うん。俺の一存で、過去の遺産を破壊する、というのは抵抗があるからな」

『わかりました』


 老君は、仁の要望を入れつつ、効果的な制圧手順をシミュレートしていく。


『もう1つ、破壊できない理由として、施設はセルロア王国に帰属しますからね』

「そうなんだよな」


 無力化まではいい。

 その後、セルロア王国に引き渡すことになるわけだが、その際のリスクが大きいと思っているわけだ。


「政治的な判断を含めるって難しくて面倒くさいよなあ」

『そうですね、御主人様(マイロード)


 老君としても、仁の立場もわかるだけに、判断に迷ってしまう。

 いっそのこと『ルトグラ砦』地下の『敵基地』が暴走してくれれば、公然と破壊できるのだが、と思わずにはいられない。


『そうしますと……『魔導頭脳』は無力化する。戦闘用ゴーレムなどは全て停止させる。資料などが残っていたなら、全て確保する。その後、セルロア王国へ引き渡す。……こうした流れになりますが』

「そうなるだろうな。……ああ、『ギガース改』はなんとしても無力化しないとまずいだろうな」

『はい、御主人様(マイロード)。起動される前には確保できればいいのですが』

「その線で計画を詰めていこう」

『わかりました。……その前に、『島基地』に関して報告いたします。今度の参考になることがあるかもしれません』

「うん、そうだな。聞かせてくれ」


*   *   *


『『島基地』は、間違いなく未完成の施設です。『旧ディナール王国』の基地の特徴として、『魔導頭脳』と『自動人形(オートマタ)』の組み合わせが見られるのですが、その魔導頭脳がありませんから』


 対人用のインターフェースとして『自動人形(オートマタ)』が置かれていた施設としてはフランツ王国にあった『魔導砦(マギフォートレス)』が代表例である。


『そういう意味で、自動人形(オートマタ)だけが配備されていた『島基地』は未完成と言えます』

「うん」

『魔導頭脳を設置する予定であろう空き室も見つけましたので、この推論は間違ってはいないと判断いたします』

「それでいいと思う」

『薬草関連の種ですが、麻薬になる『ファナ』の他にも、『ジギタリス』の種がありました』


 『ジギタリス』は和名を『キツネノテブクロ』(狐の手袋)という。

 英名のFoxgloveの直訳であり、花が深い袋状なのでそのような名前になったと思われる。

 ただし、無計画に摂取すると危険だ。誤食すると、胃腸障害、おう吐、下痢、不整脈、頭痛、めまい、重症になると心臓機能が停止して死亡することがあるという。

 強心剤としての薬効があると言われているが、近年は使われていないようだ。


『それからトリカブトの種もありました』

「毒草ばっかりだな」


 トリカブトは有名な毒草で、別名を『附子ぶし』(あるいはぶす)という。

 アコニチンというアルカロイドを全草に含んでおり、危険な毒草である。

 ただし、適量を用いるなら水分の代謝を盛んにし、水分の偏在を除く、と言われている。


「他には?」

『はい。『アサガオ』の種がありました』

「お、それもいいな。蓬莱島で栽培してみよう」

『はい、御主人様(マイロード)。ですが、アサガオもまた有毒植物です』

「え、そうなのか?」

『はい。『賢者(マグス)』の残した書物にあったそうです』

「うーん……毒草ばかり集めたのかな?」

『敵に飲ませたり、水に投げ入れたり……あるいは自決用としても栽培していたのではないでしょうか』

「ああ、そうかもな」


『食料にできる作物の種もあったようですが、全て持ち出されていました。『島基地』にあったリストと照らし合わせますと、『小麦』『大麦』『蕎麦』『豆類』が持ち出されたようです』

「『捜理協会(そうりきょうかい)』の奴らかな?」

『その可能性は大です。……『捜理協会(そうりきょうかい)』が信者に配り、栽培させているようですので』

「油断できないな」


『それからコーヒー豆が』

「お、それはいいな。品種が違うかもしれない。栽培方法はわかるのか?」

『はい。資料も一緒に保管されていましたし、栽培している地方もありますし』

「それもそうか。それじゃあ資料をコピーし、コーヒー豆も少しもらって蓬莱島で栽培してみよう。うまくいったら各国で本格的に作ってもらいたいな」

『わかりました』


 これまでコーヒーはラシール大陸で見つかったものが流通していたが、薬用としてではあるが旧ディナール王国では少量栽培されていたようである。

 品種が違えば味も違ってくるので、ちょっとだけ楽しみな仁であった。

 ちなみに仁はブラックコーヒーは苦手で、やや甘いほうが好みである。


 老君からの報告はもう少し続く……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210609 修正

(誤)『島基地』にあったリストと照らし合わますと、『小麦』『大麦』『蕎麦』『豆類』が持ち出されたようです』

(正)『島基地』にあったリストと照らし合わせますと、『小麦』『大麦』『蕎麦』『豆類』が持ち出されたようです』

(誤)『そうしますと……『魔導頭脳』は壊す。戦闘用ゴーレムなどは全て停止させる。

(正)『そうしますと……『魔導頭脳』は無力化する。戦闘用ゴーレムなどは全て停止させる。


(旧)

『ですが、施設はセルロア王国に帰属します。破壊はまずいのではないでしょうか』

「そうなんだよなあ。それがあるから迷っているんだ」

(新)

『もう1つ、破壊できない理由として、施設はセルロア王国に帰属しますからね』

「そうなんだよな」

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― 新着の感想 ―
[一言] > 仁が指示を出して1分後のことである。 とある大商会でそれをやるには、係長にレビューしてもらってから、課長と部長と本部長のハンコを貰った上で、役員会でプレゼンしてGoサインを貰い、それか…
[一言] >『『島基地』は、間違いなく未完成の施設です。『旧ディナール王国』の基地の特徴として、『魔導頭脳』と『自動人形』の組み合わせが見られるのですが、その魔導頭脳がありませんから』 恐らくは、最後…
[良い点] 過去の遺産を無碍に破壊しないのは、マギクラさんの美徳ですねぇ。 振「過去から学ぶことによって未来に繋がっていくってことだよな。」 礼「お父さまが言うべきセリフを取らないでください#」 礼子…
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