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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
2978/4346

79-05 分析結果

 午後4時。

 仁Dは、約束どおりに国王の執務室を訪れた。


「おおジン殿、もう少しだけ待ってくれ」


 セルロア国王は書類に目を落としたまま言った。

 その前には処理済みの書類がうず高く積み重ねられていた。


 そして3分後、最後の書類に目を通し終わり、認可のサインをした国王は仁に向き直った。


「待たせたな、ジン殿。では、隣の部屋へ行こう」


 隣室は小会議室である。

 そこには3名の王族らしき人たちが待っていた。

 1人は年配の男性、1人は若い男性、もう1人は少女である。

 いずれも薄茶色の髪をしており、血縁関係をうかがわせる。


「ジン殿は初めてであろう。順に自己紹介せよ」


 その言葉に応じ、年配の男性王族が口を開いた。


「俺はフランシス・ヴァロア・ド・セルロア。先代の王の弟だ」

「叔父上は、元近衛騎士団総帥を務めておられた」


 国王ボザールが補足してくれた。

 確かに武人の雰囲気があるな、と仁Dを通して仁は感じていた。


 次に自己紹介してくれたのは若い男性王族。


「私は陛下の弟でマルセル・ヴァロア・ド・セルロアです。高名な『魔法工学師マギクラフト・マイスター』ジン殿にお会いできて光栄です」


 少し線の細い、おとなしそうな印象を受ける王弟であった。

 そして最後は……。


「……ジャンヌ・ヴァロア・ド・セルロアです……。陛下の妹、です。お目にかかれて光栄、です」


 王妹もまた、儚げでおとなしい少女であった。


「あとは姉が一人いて、公爵家に嫁いでいる。ゆえに今身近にいる王族はここにいる4名ということになるかな? ……ああ、叔父上のところに3人の従兄弟がいるが、王都にはおらんのだ」


 最後に国王ボザールの説明が入った。


「そういうわけで、さっそく測定を頼む」

「わかりました」


 礼子がテーブル上に『魔力波形分析機マギスペクトラムアナライザー』を置く。

 そして年齢順に測定を行っていった。


 1人だけ、まるで違う波形が出て、王家の血を疑われる……などという展開もなく、全員の波形の測定はスムーズに行われた。

 王家の波形をこんなに気安く測定させていいんだろうか……とも思う仁であったが、今現在、『王家につながる者』を波形で判別するということはなされていないため、問題視されなかったのだろう。

 また、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』がそれだけ信用されている証、ということも言える。


 それはさておき、結果的に、国王も含めた4人の魔力パターンは、似ているところもあり似ていないところもあった。


「ほう、先程ジン殿が言っていた、特徴のあるピークは全員が持っているな」


 国王が感心したように言う。


「ええ。多分これが特徴なんでしょうね」

「ジン様、この絵の意味って何ですか?」


 ジャンヌ王女も興味深く質問してきた。


「ええと、この横方向は、大まかに言って魔法の属性を表します」

「あ、どんな魔法が得意か、わかるのですね?」

「そうです。……殿下の場合、このあたりの波形が高めですから、水属性がお得意なのではないですか?」

「あ、はい、そうです。……わあ、わかってしまうものなのですね。……叔父上はこのあたりですが、ここは?」

「火属性ですね」

「あ、当たってます!」


「ふむ、ジン殿、本当にこれを見れば、その者の適性がわかるのだな」


 多少半信半疑だったのか、王弟フランシス・ヴァロア・ド・セルロアも興味を惹かれたようだ。


「つまり、この波形? を知ることができれば、適性のない属性にこだわらなくてもよくなるということか」

「そうとも言えますし、そうでないとも言えますね」

「それは?」

「この魔力パターンは不変ではないということです。もちろん、1が100にはなりませんが、1を2にすることはできます」

「なるほど」

「ですので、波形を見て諦めるのではなく、訓練の効果を見る、という使い方をしたほうが前向きですね」

「貴殿の言うとおりだな」


「……で、ジン殿、この魔導具は量産できるのか?」


 興味深そうに国王ボザールが尋ねてくるが、仁は首を横に振った。


「いえ、難しいですね。基本的にこれ1台しかないと思ってください」

「そうか、それは残念だ」


 実際には簡単に量産できるが、この『魔力波形分析機マギスペクトラムアナライザー』を一般に普及させた場合、どんな混乱が起きるか見当がつかない。

 魔力パターンが似ていないというだけで勘当されたり、浮気を疑ったり……などということも考えられるのだ。

 そういう意味で、安易な普及はさせたくない仁たちなのであった。

 ゆえに今回、セルロア王家の魔力パターンを計測してしまったのは少々軽率だったかもしれない……と反省した仁なのであった。


 しかし、済んでしまったことは仕方がない。


「必要なときは声を掛けてください」


 と言い、午後5時、仁Dは一旦小会議室を後にした。


 その日は王城に泊まることになるので、担当の侍女が客室へと案内していった。


「ここまでで結構です」


 客室の前で礼子がぴしゃりと言う。

 侍女も、仁と礼子のことは知っているので、素直にその言葉に従ったのである。


*   *   *


「さて老君、どんな塩梅あんばいだ?」


 仁Dが個室に入り、礼子が見張りをしてくれているので、仁は操縦席を離れ、老君との相談を開始した。


『はい、御主人様(マイロード)。シオンさんは快く測定に同意してくださいました。そこでサキさんに頼んで、測定してきてもらいました』


 サキもまた、仁ほどではないが『ノルド連邦』で顔が利く。


「そうか。……で?」

『はい。測定結果はここに』


 森羅しんらのシオン、傀儡くぐつのロードトス、傀儡くぐつのリュドミラ、森羅しんらのヴィータ、森羅しんらのロロナらの魔力パターンがあった。


「おお……やっぱりな」


 『北方民族』の特徴として、帯域が広いことがある。平均的な人類よりも2割ほど高周波帯域に広いのだ。

 高い部分のは光属性と闇属性の一部をつかさどり、重力魔法や転移魔法を可能にしている。

 そして全体的にレベルが高めなことで、洗脳系魔法が使えるわけだ……と仁はパターンを分析していた。


「エイラの魔力パターンも近いものな。レベルはシオンやロードトスたちより低いが、帯域は同じように広い。まず間違いなく、この帯域で『ルトグラ砦』の魔導頭脳は判別しているんだろう」

『はい、御主人様(マイロード)。そう断言できると思います』


 老君も仁の分析を肯定した。


「そうすると、次は攻略法だが……」


 いよいよ作戦立案である。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210608 修正

(誤)侍女も、仁と礼子のことは知っているので、素直にその言葉に従ったにである。

(正)侍女も、仁と礼子のことは知っているので、素直にその言葉に従ったのである。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ひょっとして、 エイラも(グローマも?)頑張れば、洗脳隷属魔法や重力魔法を使えたりして。 [一言] >『北方民族』の特徴として、帯域が広いことがある。平均的な人類よりも2割ほど高周波帯…
[良い点] セルロア国王、かなり気さくやねw 陰でコソコソやってるダメ貴族より、よっぽどマギクラさんとお話ししている方が楽しいかw [一言] 老「捜理教会の本部に潜入させたフリッツ殿ですが、経過報告に…
[一言] >『魔力波形分析機』を一般に普及させた場合、どんな混乱が起きるか見当がつかない。 でもまぁ、王様が似たようなのを開発させようとはするかもね。 >この帯域で『ルトグラ砦』の魔導頭脳は判別し…
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