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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
78 過去からの縁篇
2964/4342

78-31 その頃

 ギガース。

 それは、周囲の自由魔力素(エーテル)かてに、岩や石などを取り込み、人型を成す『人工魔物』である。

 周囲の自由魔力素(エーテル)魔力素(マナ)を取り込んで動作する。

 失敗作のため、一度動き出すと制御不能で、周囲に対し無差別の攻撃を仕掛ける。

 そしてなぜか高い所を目指す習性がある。


 ……ということを仁は思い出していた。


「『ギガース改』は幾分か改善されています。具体的には『高い所を目指す習性』がなくなりました」

「……あまり意味がないな」

「そうでもありません。平野での戦闘における敵部隊の撹乱に使いやすくなりました」

「……まあそうか」


 しかし、今問題となるのはそこではない。


「一体何者が『ギガース』……いや『ギガース改』の魔力核コアを盗み出したのだろう」

「わかりません」

「申し訳ございません」

「いや、それは仕方ない。2人のせいじゃないよ」


 仁はしょげかえるヴェラとユミィを慰めた。

 そして話題を変えることにする。

 盗まれた『ギガース改』の魔力核コアとその犯人ゴーレムも気になるが、今は手近な問題から解決していかなくてはならない。


「施設を管理統括する魔導頭脳なんてものはあったのか?」

「いえ、ありません。設置しようという計画はありましたが、設置前に『魔素暴走エーテル・スタンピード』が起きましたので」

「そういうことか……」


 未完成の施設なので致し方ない、と仁は考えた。

 ここで老君が仁にアドバイスを行う。


御主人様(マイロード)、質問の仕方を変えたほうがよいと思います。……ユミィとヴェラに、『捜理協会(そうりきょうかい)』や『公平党(エキーター)』のことを伝えたほうがいいと思います』

「なるほどな、わかった」


 老君のアドバイスに従って、仁は2体のいた施設を調査している理由を説明した。


「そういう事情がおありなのですね」

「私たちに何ができるでしょうか?」


「まず、そいつらが施設で何を得たのかを知りたいかな」

「わかりました。調べてみましょう」

「あ、ここは施設ではありませんね?」


「ああ、俺の拠点だ。それじゃあ、施設へ戻ろう」

「お願いいたします」

「よろしくお願いします」


 そこで仁は、ユミィとヴェラ、そしてランド隊10体を引き連れ、施設へと戻った。


*   *   *


「ご主人様は転移も使いこなしていらっしゃるのですね」

「さすがです」

「うん、それじゃあ、施設内の調査をしてくれ」

「わかりました」

「3時間ほど掛かるかと思いますが」

「それなら、このランド201に伝えてくれ」

「はい、ご主人様」


 というように、『施設』の調査はユミィとヴェラに頼むことになり、『しのび部隊』とランド隊はそのまま待機していてもらうこととなったのである。


*   *   *


 さて、同じ頃、ロイザートの屋敷では。


「……だから、このxには3を代入して……」

「……あ、そういうやり方が……」


 メルツェの勉強が行われていた。教師役はゴウである。

 初めはルビーナが立候補していたのだが……。

「ええとね、ここの角度とここの角度が同じみたいに見えるから、こうやって比較して解を出してみて、とりあえず計算してみるのよね。で……ほら、合ってた」

「……そんなことできないよ……」


 感覚派の彼女では、メルツェがわかるように説明ができなかったのである。


「こういうところはゴウのほうがうまいな」

「うー……どうせあたしは説明下手ですよ!」


 ふくれっ面をするルビーナを、エルザが慰める。


「そうやって、いつまでも苦手意識を持っていちゃ、駄目。考えて、克服しなきゃ」

「エルザ様……」

「……まず、あなたは治癒魔法を覚えてみるべき」

「え?」

「モノづくりで怪我をした時、応急処置ができるといいから」

「それはそうですけど……あたし、『治癒魔法』の適性はないって言われてて……」


 だがエルザは首を横に振った。


「大丈夫」


 治癒魔法は魔力特性がフラットな方が適性が高いというだけで、ピーキーな人には使えないというわけではないから、と説明した。


「一定のレベルよりも高ければ、使うことは、できる」

「そうなんですか……」

「……これは最近の研究でわかったことも含んでいるから、『オノゴロ島』の人は、まだ知らないかも」

「あ、そうなんですね」


 エルザの説明で納得したルビーナは、空き部屋に移動し、2人で特訓を開始した。


「まず、自分の魔力を『完全に』制御することから」

「は、はい」


 エルザは『魔力過多症』であったため、自分の魔力……『魔力素(マナ)』が暴走しないよう制御するすべけており、こうした指導は手慣れている。

 それで、感覚派なルビーナにもわかりやすい指導ができるのだ。


(エルザ様って……大人だなあ……)


 指導を受けているルビーナも、きっちりとわかりやすいエルザの指導に、熱心に耳を傾けている。

 そして1時間後には、初歩の治癒魔法、『癒し(フェルハイレ)』を使えるようになったのであった。


「いい調子。この『癒し(フェルハイレ)』は内科、外科両用で、小さな切り傷、軽い擦り傷、軽い打撲、悪心等を治すことができる。覚えておいて損はないから」

「はい!」


 さらに1時間後には『痛み止め(シュメルツミッテル)』と『治せ(ビハントラン)』まで使えるようになったルビーナである。


「やった、やった! エルザ様、ありがとうございました!!」

「ん、ルビーナちゃんの努力の賜物。それ以上の中級を覚えるなら、まず初級を使いこなしてから、ね」

「はい!」


 治癒魔法を、初級とはいえ使えるようになって大喜びのルビーナであった。


 そしてその一方でメルツェは、


(ゴウさん……教え方はわかりやすくて丁寧だし、1つしか違わないなんて思えないなあ……)


 と、ゴウに対する評価を数段階上げていたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
治癒魔法の特訓はゴウに付き合ってもらいましょう。 痛み止めを使って、殴っては癒やす、殴っては癒やす…おっと、痛み止めを使い忘れてしまいました!…おや?ゴウの様子が…ルビーナの治癒魔法の腕が上がり、ゴウ…
[良い点] >(ゴウさん……教え方はわかりやすくて丁寧だし、1つしか違わないなんて思えないなあ……) わずか数日で、ゴウ様からゴウさん呼びでしかも高評価とは。 [気になる点] 拷「でも、これで数段階評…
[良い点] エルザさん、アヴァロンで講師した事あったけど、今回は家庭教師ですなぁ。世界最高峰の医療魔法使いがマンツーマンで指導って、めっちゃ贅沢なんだぜぇw 仁「テニス初心者に大○なおみが指導するよう…
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