表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
78 過去からの縁篇
2941/4345

78-08 信頼

 仁がアマンダを連れてきたことに一番驚いたのはやはりイェニーである。


「あ、あの、ジン様は、いつアマンダ様を迎えに行かれたのでしょう……?」

「ああ、そのことか」


 質問されたダイキは、一瞬考え、仁の顔をちらっと見た。

 その意味を察した仁は小さく頷いてみせる。

 それを、『ある程度まで話していい』という意味だと受け取ったダイキは、


「ジン様は『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だからな。常人には考えも及ばないような手段を持っているのだよ」


 と説明する。


「え……魔法工学師マギクラフト・マイスター……ああ、やっぱりそうなのですね。あの飛行船を拝見して、普通の方ではないと思っていましたが……」


 薄々そうではないかと思っていた、とイェニー。


「でも、それでしたら納得です。失礼致しました」


 技術的な話をするまでもなく、それで納得してくれたようだ。あまり深く追及してはいけないと察したのかもしれない。


「ジン様、孫の面倒を見ていただいて、ありがとうございます」

「いや、今のうちにいろいろなことを見聞きするのはいいことだからな」

「ルビーナ、ジン様にご面倒をお掛けしていないだろうね?」

「大丈夫。……だと思う……」

「はは、そうだな。アマンダ、ルビーナはいつもどおりだよ」

「いつもどおり……そうですか、いつもどおりお転婆ですか……」

「お祖母ちゃん……!」


 が、アマンダはルビーナににこりと笑いかけた。


「そこがお前のいいところでもあるんだけどね。……ただ、人様に迷惑をかけたりするんじゃないよ」

「はい! ……ねえ、お祖母ちゃんはあたしと一緒の部屋に泊まるんでしょう?」

「そうしましょうね」


 ルビーナの言葉を受け、ココナがそう言った。

 そんな2人を見ていた仁は、なんだかんだ言ってルビーナはアマンダが大好きなのだな、と思うのだった。


*   *   *


 夕食までの間、ルビーナはメルツェと遊ぶようだ。

 そしてアマンダはダイキ、ココナといろいろな話をしている。


 仁はゴウとともに工房だ。

 作りかけの助手ゴーレムを完成させようというわけである。


「さて、それじゃあ『触覚』システムはどうすることにした?」

「はい。外装が金属ですので、『歪み感知型』っていうんでしょうか、センサーを主要部分に取り付け、外被の歪みを検出して加わっている力を算出する方式にしたいと思っています」

「うん、それでいいだろう」


 自動人形(オートマタ)のように軟らかな外被をもっていると、上記のような方式は使えない。

 センサーから数センチ離れただけで、もう歪みは伝わらなくなっているだろうからである。

 その点、金属製の外被は、局所的な歪みを離れた場所で感知することが可能だ。


「手の各指先、掌、足の各指先、足裏は特に大事だと思います」

「うん、それから?」

あごにも付けたほうがいいかと思います」

「そうだな。あとは?」

「肩、腰、腹部、膝、もも脹脛ふくらはぎひたい……くらいでしょうか」


 仁は頷いた。


「うん、いい線だな。あとは肘、手首にも欲しいかな」

「あ、わかりました」


 これで方針は決まった。

 ゴウは軽銀で外装を作っていく。

 その外装の内側に『歪みセンサー』を配置していく。


 モノは蓬莱島で標準化してある『歪みセンサー』を使う。

 歪みと出力の関係がきっちりと管理されているのでばらつきが小さく、使いやすい。


「歪みセンサーの出力から、外装に加わっている圧力を計算する補助処理装置コプロセッサが必要になるぞ」

「はい、構想は考えてきました」

「おお、偉いぞ」


 仁はゴウに作業をやらせてみて、まあまあ適正なレベルであることを確認した。

 ちなみに仁の『まあまあ』は、世間的には『一流』レベルである。


(経験を積めば、もっと伸びそうだな)


 基本的なことはマリッカからみっちりと叩き込まれているので、応用の幅を広げてやるのがいいだろうと仁は感じた。

 それにはいろいろなものを作り、いろいろなものを見て、いろいろな経験を積むことだ。

 ゴウだけに関わるわけにはいかないが、ニドー家の跡取りという立場なので、今後もいろいろな便宜を図ってやるつもりはある。


「ジン様、これでどうでしょうか?」

「いいだろう。あとは制御核(コントロールコア)、それに魔素変換器(エーテルコンバーター)魔力炉(マナドライバー)だな」

「はい!」


 魔力反応炉(マギリアクター)はまだオノゴロ島でも一般的ではないので、この組み合わせが今はベターである。


「『書き込み(ライトイン)』『知識転写(トランスインフォ)』」

「うん」


 作業は安定しており、基礎がしっかりできあがっていることを仁は感じ、マリッカの教育が素晴らしかったことをあらためて認識した。


*   *   *


「ジン兄、ゴウ、そろそろ切り上げてオフロに入ったら?」


 午後5時にならんとする頃、エルザが工房へ様子を見にやって来た。


「あ、エルザ。もうちょっとで完成するから」

「ん、見ていていい?」

「もちろんだ」


 今は外装を取り付けているところ。仁はゴウの作業を見守っている。


「……なんとなく、マリッカさんを見ているような気になる」

「あ、エルザもそう思うか。やっぱりゴウはマリッカの弟子なんだなと見ていて思ったよ」


 そしてゴウはゴーレムを完成させた。


「できました、ジン様。あ、エルザ様、いらっしゃいませ」

「うん。セルフチェックは行ったのか?」

「はい」

「それならよし。……礼子、内部チェックをしてやってくれ。俺は制御核(コントロールコア)のチェックをするから」

「はい、お父さま」


 礼子には『透視装置』や『分析(アナライズ)』を使っての内部チェックを。

 仁は『読み取り(デコンパイル)』を使って制御核(コントロールコア)のチェックを、それぞれ行った。


「お父さま、異常なしです」

「うん、こっちもバグは見つからなかった。……ゴウ、よくやったな」

「ありがとうございます。ジン様のおかげです」


 ゴウは仁にお辞儀をした。


「うん。それじゃあ、起動してみよう」

「はい。……『起動(スタート)』」


 ゴーレムに魔力が流れ、動作を始める。


「はい、ご主人様」


 ゆっくりと起き上がるゴーレム。


「ゴウ、名前は決めてあるのか?」

「はい、『ピスティ』にしようかと。どうでしょう?」

「ゴウのゴーレムだ、俺がどうこう言えないよ。だが、いい名前だと思うぞ」

「はい! …………お前の名前は『ピスティ』だ」


 アルス古語……ヘール語で『信頼』の意味である。


 こうして、ゴウの助手ゴーレムが完成したのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210612 修正

(誤)あまり深く追求してはいけないと察したのかもしれない。

(正)あまり深く追及してはいけないと察したのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  「あまり深く追求してはいけない」とあるのですが、文字としては「追及」ではないかと思います。場面からすると「詮索」が合っているような気もします。
[良い点] 78-08 信頼 更新ありがとうございます。 [一言] やり遂げた話は、ジンときますね…後見が仁だけに?! 次回の更新も、楽しみにしております。
[良い点] >いつもどおりお転婆ですか……」 >「そこがお前のいいところでもあるんだけどね。 基本的に『お転婆』って褒め言葉ではないのですが、 そのお陰で今回、ゴウがノブレス・オブリージュに目覚めたり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ