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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
76 アドリアナ記念館篇(3901年〜3902年)
2867/4345

76-14 締めくくりに

 ティータイムを砕けた質問タイムにした仁。


「それでは」

「はい、どうぞ」


 まず手を挙げたのは『アヴァロン』の最高管理官、トマックス・バートマンだった。


「『初代』アドリアナ殿と『2代目』や『マキナ殿』との間には1000年ほどの年月の隔たりがあると思うのですが、どのようにして学ばれたのですか?」


 この質問に、周囲の招待客たちも頷いている。やはり気になる話題だったらしい。


「それは……この礼子を見ていただいてもわかりますように、『初代』の技術は1000年をモノともしませんでした。つまり、『初代』が遺した教育用の魔導具によって、私……じゃなくて『2代目』は『魔法工学師マギクラフト・マイスター』となり、また『デウス・エクス・マキナ』も同じように学び、独り立ちしたのです」

「ははあ、なるほど」

「同時に、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』になる資格があるかも確認されますから、誰でもなれたわけではありません」

「わかりました」


「次、よろしいでしょうか」

「はい、どうぞ」


 次の質問はエゲレア王国第3王子のアーネスト17世だった。


「その『魔法工学師マギクラフト・マイスター』になるための資格について、差し支えない範囲でお教えいただきたい」

「そうですね……絶対に必要なのが『魔力パターン』ですね」

「魔力パターン……ですか?」

「そうです。同じ魔力パターンは2人といないのですが、それでもなお、ほとんど同じ者がまれに現れるのです。それが『後継者』の資格となります」

「なぜそうまでして……これはお答えいただけますか?」


 仁は頷いた。


「ええ。工学魔法の幾つかを最高レベルまで使うために必要なのです……とお答えしておきます。それ以上は今のところ秘匿させていただきます」

「先程『2代目』の部屋で説明されていた『使えるものだけが弟子になれる、ある工学魔法』ですね?」

「そういうことです」


 本来なら、学問は一子相伝のように秘匿するものではないのだが、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の継承条件については、知られてどうなるものではないが、逆に言えば知ってどうなるものでもなく、どうすることもできない内容なので、師弟のプライバシー的な話ということで秘匿する、と仁は説明したのである。


「わかりました。ありがとう、ジン殿」


 そして、それで皆納得してくれたようである。

 ここで、仁から1つ質問が行われる。


「ムトゥ氏に、ちょっと伺いたいのですが」

「はい、なんでしょうか?」

「ミツホでは、『賢者(マグス)』殿のお姿についてはどのように伝わっているのでしょうか?」


 以前訪れた際、銅像や肖像画のような、姿を伝えるものを見た記憶がなかったゆえの質問である。


「ああ、そういうことですか。……『賢者(マグス)』様は、姿絵を描かせることをなさらなかったようです。なんでも『偶像崇拝』はやめてほしい、と仰ったとか」

「ははあ、なるほど」


 仁もその気持はよくわかった。仁自身、銅像など建てられるのは御免被りたいからだ。

 しかし時既に遅く、『2代目魔法工学師マギクラフト・マイスター』の像はあちこちに建てられているのだが。


「ですが、こちらに伺って、『賢者(マグス)』様、『初代』様のお姿を拝見できて嬉しかったですよ。ありがとうございます」

「いえ」


 そんな会話をしていると飲み物もなくなったのでお開きとする。質問の続きはまた後で、ということになった。

 展示関連のお披露目は終わったので、残るはこの施設について紹介するだけである。


*   *   *


「まずは3階です」


 部屋数は2階と同じ。つまりフロアは9つに区切られている。

 だが、ほとんど使われていない部屋ばかりだった。


「展示物が増えた時のために空けてある予備室ですね。そしてこちらが……」


 南の部屋。北の部屋と共に、現在用途が決まっている部屋である。


「会議室になります」

「おお、明るいですね」

「南向きだからですね」


 そして中央のホールを挟んで北側になる部屋が……。


「多目的室、と呼んでいます。何かイベントがあった際に使えるでしょう」


 例えば初心者を集めての魔法工学教室とか、と仁が言うと、招待客たちは感心したように頷いた。


「なるほどなるほど」

「そういう施設でもあるのですね」


 仁は更に続ける。


「空き部屋は可能性の現れです。今後、どのような使われ方をするかはこの施設を利用される人々次第……とも言えます」

「なるほど、確かに」

「そして、若い人、工学魔法を学ぼうという人たちに、積極的に利用してほしいですね」

「ふむ」

「そういう意味において、『初代』には叶わなかった……『魔法工学の聖地』になってもらえるとありがたいですね」

「ジン殿らしいですなあ」

「でも、『魔法工学の聖地』ですか。それは……いいですね」

「我々も推奨させていただきますよ」

「ありがとうございます」


 招待客からの言葉を嬉しく思う仁であった。


*   *   *


「おお、4階は屋上と……ペントハウスがあるのですな」


 誰かがそう口にし、次いで首を傾げた。

 これはペントハウスなのだろうか? ……と。


「これは望遠鏡ドームですよ」


 仁が説明する。


 天体望遠鏡は、倍率が大きいので僅かな風でぶれてしまうことがある。

 そこで風の影響を受けにくいようにドームで覆うのだ。

 また、周囲の光を遮ることで、少しでも視認性を上げる目的もある。

 そして観測者を寒い風から守る意図もあるのだ(天体観測に最も向く季節は秋から冬なので夜は寒い)。


「星の観察もまた、科学です。科学と魔法の融合を目指すなら、やはり設備が欲しいですよね」

「ふうむ……星の観察ですか」

「そうです。例えば、夜でも星の位置を見ることで方角や時刻がわかりますよ?」

「あ、なるほど……」

「夜間航海のためにも必要な知識ですなあ」

「そういうことですね。あとは純粋に展望台の意味もあります。ここからのトスモ湖の眺めは美しいでしょう?」

「ああ、確かに」

「夕暮れのトスモ湖、雪を頂く北の山々が赤く染まって……」


 展望台として、来客に楽しんでもらうこともできるわけだ、と招待客たちは納得したのだった。


*   *   *


 地下は主に倉庫なので割愛し、仁たちは3階の会議室に来ていた。


「駆け足でしたが『アドリアナ記念館』の紹介をさせていただきました。ご意見がございましたらお教えください」


「1つ、よろしいでしょうか」


 ノルド連邦、『森羅しんら』のベリアルスが挙手をした。


「はい、どうぞ」

「本日、過去の出来事を教えていただいたわけですが、1つ希望ができまして」

「希望、ですか?」

「ええ。『賢者(マグス)』殿とその奥方、アドリアナ・ティエラ殿についてです」

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日2月18日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20210218 修正

(誤)天体望遠鏡は、倍率が大きので僅かな風でぶれてしまうことがある。

(正)天体望遠鏡は、倍率が大きいので僅かな風でぶれてしまうことがある。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「まずは3階です」 >部屋数は2階と同じ。つまりフロアは9つに区切られている。 >だが、ほとんど使われていない部屋ばかりだった。 >「展示物が増えた時のために空けてある予備室ですね」 …
[一言] >>砕けた質問タイムにした 礼「ただし、節度は持ってくださいね」にっこり 皆「」(゜゜;)(。。;)(゜゜;)(。。;)ブンブン >>1000年ほどの年月の隔たりが 仁「いきなりそこか」 …
[一言] まだまだできたてほやほやな施設ですからねー しばらくは展示物を見るだけになるんでしょうが これから先、どう使われていくんでしょうねえ
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