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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
72 オエステ基地潜入篇
2711/4397

72-31 オエステ基地を探して

 さて場所は変わって、ラシール大陸西。

 11月2日、『管理魔導頭脳ジョナサン』が派遣した2体のゴーレムは目標地点付近に到着していた。


『2体は現地に着いたようだな。……あとは2体の自主性に任せることにしよう』


 そして『ジョナサン』は2体の自律行動を許可したのである。


〈これより私は『(ウノ)』、そちらは『(ドス)』と呼び合うことにしようではないか〉

〈異議なし。では私はこれより(ドス)だ。……(ウノ)よ、これからどうする?〉

〈うむ。事前情報で、目的地である『オエステ基地』では植物の品種改良をしていたことがわかっている。まずは、植生の異常を探してみようではないか〉

〈異議なし〉

〈だが、まずは隠密行動を心掛けるとしよう〉

〈うむ、それは妥当だな〉

〈結界でいいか?〉

〈いいと判断する〉

〈よし〉


 2体は漏洩魔力を極限まで抑える結界を張った。

 これにより、魔力による探知はできなくなる。


〈これでいい〉

〈では、始めよう〉


 こうして、2体は目的地周辺を粗く探索していく。植生の異常は、これまでの歳月を考えると、局所に留まるはずがないからである。

 そしてそれは図に当たる。


(ウノ)、これはどうだ?〉


 (ドス)が地を蔓草つるくさを指差した。

 それは、現代日本に生える『くず』によく似た植物。

 マメ科で、根に根粒菌を持ち痩せた土地にも適応する。宿根草のため、冬期は地上部は枯れ、地下の塊根かいこんで越冬する。

 低温・高温に強く、乾燥・多湿にも強い。

 この植物も日本の葛と同じく、巨大な塊根かいこんに含まれるデンプンは食用になる。


〈うむ、おそらくそうだ。この植物はローレン大陸にはあるが、ここラシール大陸にはないはずだからな〉

〈そうすると、この植物の分布を調べ、その中心部付近に目指す『オエステ基地』があると考えていいのではないだろうか?〉

〈賛成する〉


 そういうことになり、2体はくずの分布を調べるため、付近の探索を開始した。

 しかしくずの繁殖力は強く、彼ら2体が調べた土地は合計で200平方キロメートルにも及んだのだ。


 が、その甲斐あって、その中心を見つけることができたのである。


〈このあたりが中心だな。誤差は20メートルほどだろう〉

〈それなら十分だ。何か手がかりがないか調べていこう、(ドス)

〈わかった、(ウノ)


 2体は手分けして付近の探索を始める。

 ツーマンセルが行動の基本とはいえ、半径20メートルの円の中である。全く問題はなかった。

 

 果たして30分後、(ウノ)が地表の不自然な盛り上がりを見つけた。直径1メートル、高さも1メートルほどの円柱状の盛り上がりである。

 それは土と石と植物の根で覆われてはいたが、その中心部はどうやら金属のようだった。


〈通気口や換気口にしては細すぎるから、これはアンテナの一部だったのだろう〉

〈つまり、この地下に目指すものがあると?〉

〈いや、それは早計だ。このように発見されやすい地上施設を、基地の真上に設けるとは思えない〉

〈確かに〉


 そこで2体は、もう1つ、できれば2つ、こうした地上施設……残骸でもいい……を見つけようということになった。

 そうすれば、基地の位置をより正確に特定できるからだ。


〈今度は、先程よりも広い範囲を捜索する必要がありそうだ。とりあえずは半径50メートルに広げよう〉

〈別行動するか、(ウノ)?〉

〈いや。今度は互いの距離が離れすぎる。効率は落ちても、互いの距離は近くしておくべきだろう〉


 そういうことになり、2体は10メートルの距離を空けて捜索することにしたのである。

 そして……。


〈あったぞ、(ウノ)。アンテナの痕跡だ〉

(ドス)、こちらにもあった〉

〈3箇所見つかれば、その中心を特定できるだろう〉

〈やってみよう〉


 3箇所のアンテナの痕跡、それを頂点にする三角形を仮想し、その中心……この場合は重心……を重点的に捜索してみることにした。


(ウノ)、どうだ?〉

〈見つからないな〉

〈探す場所を誤ったか……?〉


 3箇所のアンテナの痕跡を基準にしたが、それだけで基地の位置を100パーセント特定できるものではない。


〈……『オエステ基地』の管理魔導頭脳は、特殊な考えをする可能性もあるしな〉

〈それは?〉

〈『ジョナサン』に言われたことだ。オエステ基地には、新世代の『主人たち』がいたため、その思想は旧世代とは異なる可能性があるということだった〉


 だが、どう異なるかまではわからないようだ、と(ウノ)は締めくくる。


〈その情報は私にはない。なぜだろう?〉

〈その理由は、『対比』にある〉

〈対比?〉

〈そうだ。同じものをたくさん揃えても発展性は乏しいが、違うもの、対立するもの、を集めたほうが発展性が望める、ということだ〉


 『弁証法』と似た考え方である。

 テーゼに対する非Aアンチテーゼを出し、この2つの間でのやりとりを通して更に高み超Aジンテーゼに至る、というような考え方が『弁証法』である。


 が、個人主義である『始祖(オリジン)』は、理論にとどまり、自身でそれを実践することはほとんどなかったようだ。


 そんな会話も、音声を使っていないため、1秒足らずで済んでしまうのがゴーレムの利点である。


〈なんとしても『オエステ基地』の手がかりを見つけなければ〉

〈……考え方を変えたらどうか?〉

〈何? (ドス)よ、それはどういう意味だ?〉

〈こちらから探すのではなく、向こうからコンタクトしてくるように仕向けるのだ〉

〈一理ある。が、過激な行動は避けるように厳命されているぞ〉

〈いや、単にここら一帯を堂々と行き来するだけだ〉

〈ふむ……〉


 『ジョナサン』は、マリッカDから、この付近をうろついていた敵対勢力のゴーレムが行動不能にされていた、という事実を聞いていたのである。

 それを行ったのは『オエステ基地』のゴーレムである可能性は非常に高い。

 そして、その矛先が自分たちに向く可能性は低いことも承知している。


〈いくらこれまで音信不通だったとしても、同胞の子孫あるいは被造物同士であるから、問答無用で攻撃は仕掛けてくるまい〉

〈それは、確かに〉


 そうした予想を元に、2体はこれまで魔力の漏洩を抑えてきたわけだが、その結界を解くことにした。

 これにより、2体はこれまでよりも探知しやすくなったことになる。


〈よし、この状態で付近を探索だ〉

〈わかった〉


 ただ無闇に歩き回るのも無駄なので、一応地表部の捜索も行いながら、2体はゆっくりと歩き回るのだった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 72-31 オエステ基地を探して 更新ありがとうございます。 [一言] 『始祖《オリジン》』由来の考え方が伺えて面白いですね。
[一言] 葛かあ アメリカではえらい事になってるみたいですね。日本などと異なり、冬になってもアメリカ南部では地表部の葛も枯れないのが原因だとか…… さて、探査はどうなるか…… 私も行方不明になった財…
[一言] 発送の逆転ですねえ 見つけられないなら見つけてもらおうとは
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