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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
52 子孫トラブル解決篇
1982/4422

52-54 式典開催

 5月6日の朝になった。格納庫内には異常はもう起きなかったようだ。

 エリアス王国首都ボルジアの空は快晴、雲一つない青空が広がっている。

 ここは首都郊外に広がる練兵場。飛行場はここに隣接している。

 広さは2平方キロメートルほどあり、固められた土の平野が広がっていた。

 ここで、新国王アダルベルト・ニーモ・エリアス1世への、『献上品』のお披露目が行われるのだ。

 新王即位の記念式典は2ヵ月前に済んでいるが、今日は『アヴァロン』と『魔法工学師《マギクラフト・マイスター》』がお祝いの品を献上するというので、主(おも)だった貴族は全員、大手商人もまた全員参加している。

 その他一般席には溢れんばかりの庶民たちが押し合いへし合いしていた。

 皆、口には出さないが『魔法連盟』の圧政にはほとほと閉口しており、それを一掃したという噂の『魔法工学師《マギクラフト・マイスター》』と、協力した『世界警備隊』に興味津々なのである。

 ところで、贈答品と言ったり献上品と言ったりしているが、要は貴族・王族の見栄・体面を慮(おもんぱか)ってその都度言い方を変えているだけである。


 午前9時、雄壮な音楽と共に、絢爛豪華な自動車が2台、騎馬に先導されて王城方面からやって来た。

「お、あれが『魔法工学師《マギクラフト・マイスター》』かな?」

「そうらしいぞ。なんでも、女の子の姿をした従者自動人形(オートマタ)を連れているという話だ」

「ああ、じゃあ後ろの車だな。前の車の緑の髪の方は女の子じゃないものな」

 仁とトマックス・バートマンはそれぞれ別々の自動車に乗っている。お伴は礼子とマノンのみだ。

「だけど、あっちの緑髪のお付きも美人だなあ」

「あれも自動人形(オートマタ)なのかな?」

 そんな喧噪の中を、2台の自動車と先導の騎士はゆるゆると進んでいった。


 警備の騎士とゴーレムに守られ、何ごともなく仁たちを乗せた自動車は練兵場に到着した。

「どうぞ、こちらへ」

 仁とトマックスはそれぞれ若い女官に促され、自動車を降りた。そのまま先導されて練兵場内を歩いて行く。礼子とマノンもそれに続いた。

 1分も歩かないうちに、急ごしらえではあるがしっかりとした造りの来賓席に着く。日差しを遮る屋根付きだ。

 仁とトマックスは席に着き、礼子とマノンはその後ろに立った。


「これをどうぞ」

 仁たちの手元に式次第が書かれたパンフレットが渡された。

 それによれば、


1.開会の辞      宰相 ヴァスコ・ド・ジーノ

2.来賓祝辞      アヴァロン最高管理官 トマックス・バートマン

3.新王のお言葉    エリアス1世陛下

4.献上品目録の開示  魔法技術省次官 シトラネラ・ド・ザウス・フィレンツィアーノ

5.献上品お披露目   魔法工学師《マギクラフト・マイスター》 ジン・ニドー

6.総評        魔法技術相 フィオリーナ・ド・ドランテ

7.閉会の辞      宰相 ヴァスコ・ド・ジーノ


 と書かれていた。

(お披露目って……説明か解説かな?)

 聞いていない、と仁は少し顔を顰(しか)めた。

 その時、仁の前に秘書風の格好をした女性が立ち、頭を下げた。

「申し訳ございません、ジン様。式次第が決まりましたのは今朝でして」

 なら、自動車で移動する前に教えて欲しかった……と、心の中で溜め息をついた仁であった。

(『分身人形(ドッペル)』に任せればよかった……)

 と思ったがもう後の祭り。

(まあ、なるようになるさ)

 現代日本にいた時は、上司の無茶振りは日常茶飯事だった。得意先での説明という名の言い訳を一手に引き受けていた仁である。

(……久しぶりにあの頃のことを思い出したな……)

 だが、当時のことを思えば今は極楽である。

(専門のことを話すんだから気が楽だよ)


*   *   *


 そして、列席者の到着が続き、最後が新国王エリアス1世と王妃。

 仁とトマックスの右手が新王エリアス1世と王妃の席、その向こう側が閣僚の席のようであった。

 これで全員が揃ったわけだ。

《それでは、エリアス王国新国王陛下ご即位記念式典を始めたいと思います》

 少ししわがれた声が練兵場に響き渡った。

 見れば、司会進行役も宰相が務めるようだ。

 そのまま演壇上に上がることなく開会の辞が述べられる。

《本日は晴天に恵まれ、天も我が国のこれからを祝福してくれているかのようです。この佳き日に、『アヴァロン』から、また『魔法工学師《マギクラフト・マイスター》』から、お祝いの品が献上されました》

 練兵場に拍手が響き渡る。一息置いて宰相は先を続けた。

 そして数分で開会の辞は終了。

《続きまして、来賓からの祝辞をいただきます。アヴァロン最高管理官、トマックス・バートマン殿》

 仁の隣に座っていたトマックス・バートマンは立ち上がり、演壇上へと歩いて行く。

 その姿は『魔導投影窓(マジックスクリーン)』に大写しになっていた。

《ただいまご紹介にあずかりましたトマックス・バートマンです。『アヴァロン』で最高管理官の職に就いております。まずはエリアス王国新国王陛下ご即位、お祝い申し上げます……》

 トマックス・バートマンは、こういう席は初めてではないようでなかなか堂に入ったものであった。


 続いては新王エリアス1世の言葉である。

 エリアス1世は演壇には上がらず、自席で話し始めた。

《本日は、吾(われ)のために集まってもらえたことを感謝する。我がエリアス王国は……》

 仁は、この時初めて新王の様子をはっきりと目にした。

 新王は背はやや高いものの横幅もそれなりにあり、小太りといった印象であった。

(筋肉質じゃあないよなあ……)

 顔を見ればだいたいのことはわかる。30歳というその顔は、やや頬が弛み気味だったから。

《……吾(われ)は、これからのこの国を、より一層の高みへと導くことを目標とする。以上だ》

 閣僚たちは立ち上がって拍手を行ったので、仁とトマックスも同じように立ち上がって拍手をした。


 いよいよ献上品目録の開示である。

 読み上げるのは魔法技術省次官、シトラネラ・ド・ザウス・フィレンツィアーノ。

(フィレンツィアーノ侯爵の子孫か……)

 アップにまとめた暗めの金髪、僅かに吊り上がった青い目は先祖のドミニク・ド・ザウス・フィレンツィアーノ侯爵そっくりである。

(30歳前後かな? 当時の侯爵よりは若いか)

 その魔法技術省次官、シトラネラ・ド・ザウス・フィレンツィアーノは、よく通る声で目録を読み上げていく。

《『戦士ゴーレム』。ジン様とお弟子様製作。『侍女ゴーレム』ジン様とアヴァロンのご友人製作。『水陸両用車』ジン様とアヴァロンのご友人製作……》

 まずは仁からの贈答品が読み上げられた。

《アヴァロンからは汎用ゴーレム2体、ショートソード10振り、ロングソード10振り、ゴーレム馬3体、魔導コンロ3台、冷蔵庫を3台……以上が献上されました》

 また拍手が湧いた。


 ここで、式次第にはなかったが、新王からの一言が入る。

《素晴らしい贈り物をもらえたこと、喜ばしい限りである》

 仁は、こんな言葉が出てくるとは思っていなかったので、少し嬉しかった。

 いよいよ仁の出番である。

《続きまして、3代目魔法工学師《マギクラフト・マイスター》、ジン・ニドー殿に、献上品のお披露目と解説をお願い致します》

 ゆっくりと立ち上がった仁は、壇上へ向かって歩き出した。礼子はその場に残らず、壇の下までは付いていく。

 壇の手前で、目録のリストが手渡された。このあたりの手際は悪くないが、もう少し早く渡してくれてもいいのにと思ってしまう。

 仁が壇上に上がると拍手が贈られた。

「ご紹介にあずかりましたジン・ニドーです」


 壇上から見ると、贈答品は全て台車のような運搬専用の車に載せられて練兵場に運ばれてきていた。 

(よし、それなら……)

 まずは『アヴァロン』からの贈答品の解説を行うことにする仁であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180822 修正

(誤)《アヴァロンからは汎用ゴーレム2体、ショートソード10振り、ロングソード10振り、ゴーレム馬3体……以上が献上されました》

(正)《アヴァロンからは汎用ゴーレム2体、ショートソード10振り、ロングソード10振り、ゴーレム馬3体、魔導コンロ3台、冷蔵庫を3台……以上が献上されました》


(誤)こまずはエリアス王国新国王陛下ご即位、お祝い申し上げます……》

(正)まずはエリアス王国新国王陛下ご即位、お祝い申し上げます……》

 orz

(旧)その右手には新王エリアス1世が王妃と並び座っている。その向こう側が閣僚の席のようであった。

(新)(削除)


(旧)

 そして、列席者の到着が続き、最後が新国王エリアス1世。これで全員が揃ったわけだ。

(新)

 そして、列席者の到着が続き、最後が新国王エリアス1世と王妃。

 仁とトマックスの右手が新王エリアス1世と王妃の席、その向こう側が閣僚の席のようであった。

 これで全員が揃ったわけだ。


 20180831

(誤)エリアス1世

(正)アダルベルト・ニーモ・エリアス1世

 5箇所修正しました。


 20181227 修正

(誤)魔法技術相次官

(正)魔法技術省次官

 3箇所修正。


 20200624 修正

(誤)礼子はその場に残らず、壇の下までは着いていく。

(正)礼子はその場に残らず、壇の下までは付いていく。


 20210506 修正

(誤)また拍手が沸いた。

(正)また拍手が湧いた。

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― 新着の感想 ―
[一言]  献上品紹介の最後で「また拍手が沸いた。」とあるのは、その直前は拍手は止んでいたはずなので、「湧いた」が相応しいと思います。
[気になる点]  ゆっくりと立ち上がった仁は、壇上へ向かって歩き出した。礼子はその場に残らず、壇の下までは着いていく。 to 付いていく 付いて行く (「付き添う」に相当しますので)
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