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不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む。  作者: 天宮暁


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51 酔うと本性が出るってホントかなぁ

「そうと決まったらどんどん行くよ!」


 ミナトの言葉に、ノームたちが揃ってかけ声を上げた。


 ミナトの提示した作戦は、なんともすさまじいものだった。


(なんという大胆不敵! このような作戦、たとえ思いついてもとうてい実行できぬ!)


 ポポラックは身体の震えを隠せなかった。


「あはははっ! せっかくだから十六層のモンスターも掃除しよう! みんな、トンネル掘ってモンスターを誘いこんでくれるかな⁉︎」


 ミナトは十六層の真ん中に位置どり、ノームを四方に遣わせ、トンネル経由でモンスターを自分のもとに集めようとしている。


「あははっ! ビギナーモードなんかじゃ物足りないね! いきなりハードから行ってみよう! きゃー怖い! でもなんとかなるなる!」


 戦闘を前にしてミナトは興奮しているようだ⋯⋯と、ポポラックは思った。


「第一陣、来ます!」


 若いノームの言葉とともに、トンネルの一つからモンスターが現れた。


「か、カースド・ソード! 厄介なモンスターですぞ!」


 ポポラックが警告する。


 カースド・ソードは、邪悪なる意志を持った生ける魔剣だ。

 エーテルにより空を飛び、まるで何者かが柄を握っているかのように斬りかかる。

 その剣技は、達人のものにも引けを取らない。

 そのくせ、モノが剣だけに、破壊するのも困難だ。


 だが、ミナトに動揺する様子はない。


「あはははっ! 爆っ散っ!」


 一言。

 たった一言で、ミナトはエーテルをまとめ上げ、物理的な破壊力を持つエーテルの砲弾を発射する。


 ――ぎおおおおおっ!


 エーテルショットの直撃を食らったカースド・ソードが、恨みの苦鳴を残して砕け散った。


 あとには、黒い片刃の直剣が残された。


「あははっ! いきなりレアドロっぽいね! すごいぞ、私! 珍しく運が向いてきてる!」


 ミナトはドロップした剣を回収し、右手に握る。


 左手に杖、右手に剣というスタイルだ。


 ミナトは直剣を何度か素振りすると、


「うん、いい感じ! 短剣じゃ物足りなくなってたんだよね。リーチとか重さとか」


「カースド・ソードのレアドロップは黒鋼(くろはがね)の剣でしたかな。特殊な効果はありませんが、人間には打とうとしてもなかなか打てぬバランスの良い剣だということです」


 ポポラックがそう解説する。

 いつのまにか、ミナトへの言葉が敬語になっている。


「次が来ます!」


 べつのノームの声とともに、今度は逆方向のトンネルからモンスターがやってくる。


「あははっ! なにあれ! ムカデかな⁉︎」


「イルグロウン・センチピードですな。硬い甲殻と麻痺毒を持つ強敵ですぞ」


「なに、近づかなければ問題ないっ! 砕け散れ!」


 エーテルショットが飛び、イルグロウン・センチピードが吹っ飛んだ。


「なんと⋯⋯あれの甲殻を一撃とは」


「ドロップは⁉︎ あー、解麻痺薬(かいまひやく)。ノーマルドロップかな。まぁ、あって困るもんじゃないからよし!」


 ポポラックの解説を聞いているのかいないのか、ミナトがドロップを回収する。


 その後も、スケルトンナーガやフェイルド・キマイラなど強敵といわれるモンスターがやってくるが、いずれも一撃で滅殺された。


「あははっ! 物足りないね! おかわり! と言いつつインフェルノに難易度アップだぁ!」


 ポポラックにはなにを言ってるのかわからなかったが、その後もミナトはモンスターを一撃で仕留めていく。


 いや、一匹だけ仕留め損ねたのがいた。

 白い炎で身を包む、空飛ぶ巨大な白ウナギ。

 ポポラックも初めて見るモンスターだった。


「ホワイト・フレイム・フライング・イールだって! 面白ぉぉいっ! よくぞわが一撃を耐えた! でも次で死ね! どーん!」


 どーん!


 名付き(ネームド)モンスターが、二発目のエーテルショットで爆散した。


「ふー、大漁大漁! ドロップもいっぱいだね!」


「こ、こんなにドロップが出るとは⋯⋯ミナト殿は豪運の持ち主なのか?」


「豪運? そんなの絶対ないよ!」


「そ、そうか⋯⋯」


 なぜか激しく否定され、ポポラックは黙りこむ。


「さぁ、みんな! 肩慣らしはもういいよね!?」


「か、肩慣らし⋯⋯だと⋯⋯」


 ポポラックは愕然とした。

 それぞれ、冒険者を苦しめるとされるモンスターを鏖殺(おうさつ)しておきながら、この人間はまだ本気ではなかったというのか。


「ミナト様! き、来ます! やつです!」


 ノームのひとりが叫んだ。


「どっちから!?」


「真下です!」


「よーし、散開っ! みんなは作戦の準備をしつつ隠れてて!」


「わ、わかりました!」


 ポポラック含め、ノーム全員が離れたところにトンネルを掘り、その中へと身を隠す。


 次の瞬間、


 ――ごばあああああっ!


「あはははっ! さすがインフェルノ! 前のときよりずっと速ぁーいっ!」


 地面を呑み込みながら現れたアビスワームの口の縁に、ミナトは片足で立っていた。


「な、なんと!」


「速くて避けきれなかったよぉ。でも、呑み込まれなければ問題なし! 縁っこならギリセーフ!

 よ――し、今度はこっちの番だ! 口の中に――炸裂しろぉっ!」


 ミナトは笑いながら、アビスワームの口内にエーテルショットを撃ち込んだ。


 ぐごおおおああああ!


 アビスワームが、悲鳴をあげてのたうちまわる。


 さすがに立っていられなくなり、ミナトはアビスワームから飛び降りた。



「――いまだよ! みんな!」



「「おおおおっ!」」


 ミナトの合図に、ノームたちが答え――



 一瞬後、アビスワーム周囲の地面が消えていた。

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