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「ライブと貧乳とネコミミと」(2)

「あ、江原君……」


 陽子は呟くように、正通の名を呼んだ。

 

 正通は言葉を失った。

 服の上からでは分からない、美しい肌が目の前にあった。

 腰は細くくびれ、長い脚は腿から足首まで美しい曲線を描く。

 シンプルな白の下着は白磁のような肌と調和し、その美しさを際立たせていた。


 ――胸さえ大きければ……完璧だ。


 正通は目の前の肢体に見とれながら思った。

 二人の間にしばし流れる沈黙――。先に口を開いたのは正通だった。


「神岡さん、リハーサルだって」


 陽子はいつもと変わらない表情をしていた。


「分かった。着替えたら行くから、ちょっと後ろを向いて」

「こうかな?」


 言われた通りに後ろを向くと、次の瞬間、背中に激痛が走った。


「ぐはぁぁぁ……!」


 激痛と共に下半身が麻痺したような感覚が襲う。

 たまらず崩れ落ちる正通に、陽子は顔を真っ赤にして罵声を浴びせた。


「この腐れ変態野郎! 何の為にチャイムがついてると思ってるのよ! しかもじっくり人の身体を眺めたりして! 何、考えてるの!」

「ぼ……暴力、はんたい……」


 苦痛に呻きながら、なんとかそれだけ口にした。


「今のは暴力じゃなくて武力制裁よ! しばらくそうしてなさい。君が動けるようになる頃には着替え終わってるから!」


 吐き捨てるように言い放つと、陽子は部屋の奥へと消えていった。

 数分後、正通がようやく立ち上がれるようになった頃、陽子はステージ衣装に着替えて部屋の奥からやって来た。


「行くよ、変態くん」

「はい、神岡さん」


 本当は反論したかった。「下着姿で玄関の近くにいるのが悪いんじゃないか!」と。

 しかし、できなかった。再び武力制裁を受けるわけにはいかなかった。


 陽子の横を歩きながら、正通は彼女のある部分に注目した。


 ――胸、やっぱり盛ってるんだなぁ……。


 女性下着のことはよく知らないが、先ほど見たブラジャーはおそらくAカップというサイズだろう。いわゆる『胸の谷間』もなかった。

 それが、こうして衣装を身に着けるとBカップ位には見える。


「ん……うひぃっ!」


 気が付けば、陽子が顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけていた。


「……貧乳で悪かったわね!」


 吐き捨てるように言い放つと、正通の視線から逃れるように陽子は歩を速めた。


「ごめん! そんなつもりじゃないんだってば! 待ってぇ! 待ってよぉー!」


 情けない声を上げながら、正通は陽子の後ろ姿を追いかけた。


「じゃあ、どんなつもりだったって言うの」


 陽子は歩みを止めず、背中を向けたままで言葉を発した。


「え……それは、その……」


 正通が口ごもると、突然、陽子が立ち止まって振り返った。


「……ほら、やっぱり! どうせ私は……貧乳ですよ!」


 一瞬、泣きそうな顔を見せた後で、陽子は再び歩を速めた。


「ちょ、待って! 待ってよぉー!」


 正通は再び情けない声を発しながら、必死で陽子を追いかけた。




「ファルシオン・キィィック!」

「キシャアアアッ!」


 スタークシグマが掛け声と共に見事な回し蹴りを繰り出す。

 蹴りを受けた古代怪獣ブゴラーは悲鳴を上げながら、その巨体を変身宇宙人ジュガート星人に衝突させる。


「ぐおおおおっ!」


 ジュガート星人もまた悲鳴を上げ、ブゴラー共々倒れ込む。


「デルタ兄さん! 今だ!」

「よし! 行くぞ、シグマ!」


 スタークシグマは片膝を着いて両腕を水平に広げ、頭の上で腕をクロスさせる。

 スタークデルタは天にかざした両手を合わせ、スタークシグマの両腕に乗せた。


「ダブル・プラズマ・クラッシュ!」


 必殺技の掛け声と共に怪獣達に向かって青いレーザービームが照射され、点滅する青い光がステージ全体を照らし出す。


「キシャアアアア!」

「ぐわああああっ!」


 ブゴラーとジュガート星人の断末魔と共にスモークがたかれ、客席からは一斉に拍手が沸き起こる。


 正通達は舞台袖でショーを観ていた。

 いよいよ、陽子の出番が迫っていた。


「よし! 陽子ちゃん、準備はいいか」

「オッケーでーす」


 ステージ衣装に身を包んだ陽子が親指を立てて答える。

 この日の衣装は、胸に大きなリボンを飾った、白地に赤と黒のチェックで彩られたベストにフリル付きのスカート。

 可愛らしさを前面に出したデザインで、絞ったウェスト周りのラインが彼女のスリムな体型を際立たせていた。


「変態くん……じゃなくて江原くんは見てるだけでいいからね。手伝おうとか余計なこと考えないでね! 分かった?」

「陽子ちゃん。そんな言い方しない!」


 長坂に釘を刺され、陽子は「はーい」と返事をした。

 正通は小さくため息をついた。


「神岡さん、スタンバイお願いします!」

「はい!」

 町内会の運営スタッフに声をかけられ、陽子はステージ横の階段に移動した。


「いよいよですね、長坂さん」

「うん、そうだな」


 スターク兄弟と怪獣達が去ったステージにスポットライトが当たる。


「スターク兄弟ショー、いかがでしたかー? 次は人気急上昇中の実力派アイドル、神岡陽子さんのミニコンサートでーす!」


 司会の女性がアナウンスをすると、客席から上がったのは拍手や歓声ではなく、戸惑いを含んだざわめきだった。「誰?」「知らない」といった声があちこちから聞こえる。


「長坂さん、これ……」

「仕方ないよ。少なくとも知名度が低いのは確かだからな」


 長坂はそう言って大きく頷いた。


「それでは、神岡陽子さん! お願いしまーす!」


 まばらな拍手と共に、陽子がステージへ上る。

 手を振りながら笑顔での登場だったが、その表情はどこか硬い。


「ありゃ、相当に緊張してるな」


 長坂が思わず危惧の声を漏らした。

 一方、客席からは歓声が上がり、拍手の音も大きくなった。「かわいい!」「頑張れ!」といった声援があちこちで上がる。


「でも長坂さん、好感触じゃないですか。きっとうまくいきますよ」

「江原君……見た目がいいだけじゃ人気アイドルにはなれないんだよ」


 長坂の言葉には、業界人ならではの重みが感じられた。


「み……皆さん、こんばんはー。神岡陽子でーす。今日は私のとっておきのステージをお送りしますので、楽しんで、くださいね……!」


 マイクを握った陽子が客席に向かって挨拶をする。口調はたどたどしく、緊張しているのが一目で分かるほどだった。


「……これ以上しゃべらせるのはまずいな……すみません! もう曲の準備をお願いします!」


 長坂の指示で五分間の予定だったトークが切り上げられ、プログラムが一曲目『スウィート・モーニング』へと移行する。


「皆さん! それでは楽しんでいってください! さ、最初の曲です……『スウィート・モーニング』!」


 拍手と共に曲の前奏が始まる。スピーカーから聴こえるのは、どこかで聴いたことがあるような、ないような……というメロディだった。

 客席のざわめきをよそに、陽子は深呼吸をしてから曲に合わせて踊り始めた。

 元々運動神経が優れているだけあり、その動きには切れがある。

 客席からの歓声に気を取り直し、陽子は大きく息を吸ってから唄い始めた。


 おはよう 太陽 Wake Wake up!

 光を浴びて 光合成(Call Go Say)!

 照らして Light Light やさしく Day light

 今日も Sweet Sweet Morning!


「あの、長坂さん……」

「江原君、言いたいことはわかってるよ」


 正通は申し訳なさそうに下を向いた。


「この曲……誰が作ったんですか?」


 どこかで聞いたようなメロディに、いま一つセンスの感じられない歌詞。

 陽子の歌唱も下手ではないがぎこちない。声は澄んでいて美しいが、物足りない。一言で感想を言えば『微妙』だ。


「……『作詞/作曲:城山みゆ』。うちに所属してるシンガーソングライターだよ」


 長坂がボソリと呟く。正通の脳裏に蘇ったのは、眼鏡をかけた美女の能天気な笑顔。

 陽子が言っていた彼女の『他の仕事』とは、楽曲制作のことだったのだ。


「ユミさんが、この曲を……」

「江原君。才能ってのは誰にでも宿るモンじゃないんだよ。それにユミちゃんは他の分野では凄く優秀なんだから」

「つまり、ユミさんに曲作りの才能は……モガッ」


 言い終わる前に長坂の手が正通の口を押さえる。


「江原君、言う必要のないことは言っちゃ駄目なんだよ。よく覚えておくように!」


 正通は口を押さえられたまま、何度も頷いた。


「つ、次の曲は……恋する乙女の純粋な気持ちを唄った、『スクールデスクの伝言板』です!」


 一曲目を唄い終わり、二曲目の前奏が始まる。

 会場からは再び戸惑いを含んだざわめきとまばらな拍手の音が聞こえる。


「陽子ちゃん、力を出し切れてないな。声もあまり出てないし、曲に乗り切れてない」


 陽子は迷いを振り切るようにステップを踏み、二曲目を唄い出した。


 三時間目の移動教室

 私と君の VIP Seats 座るの

 発見! 君からの Amazing Letter

 『お昼休み 屋上で待ってる』

 Lunch Boxにいちごミルクと 甘い思いを 胸に抱いて

 駆け上がる Step! Step! 君に会いたくて Jump!


「……長坂さん……」

「曲の感想は俺じゃなくて直接ユミちゃんに言ってくれ」

 ――これもかよ。

「『恋する乙女』とか、『君に会いたくて』とか……神岡さんのイメージとかけ離れてますね」

「本人が聞いたら傷つくぞ……年頃の女の子なんだからさ」


 正通が感じた違和感を来場客も感じていたのだろう。二曲目も反応が良くない。


「もう三曲目だ。ここまでで十五分……進行は、概ねプログラム通りだが」


 長坂が腕時計で時間を確認しながら言った。


「長坂さん。あれ……」


 会場内では子供が「つまらない」と駄々をこね、席を立つ人の姿が見え始めていた。


「分かってる。次の曲ならウケるかも知れない」


 二曲を唄い終えた陽子は深呼吸をして息を整えると、客席に向かって大きく頭を下げた。


「皆さん! ここまで聴いてくれて、ありがとうございます! 次は私の大好きな曲、『屋根の上で待ってる』です! よ、よろしくお願いします!」


 三曲目の前奏が始まった時には、会場内は目に見えて人が減っていた。


「長坂さん、お客さんが減ってますけど……」

「大丈夫。この曲は結構いい曲なんだ。それに……猫耳だ」


 長坂は拳を握り締めて言った。


「……はい?」


 やがて前奏が終わり、陽子はポケットから猫の耳が付いたカチューシャを取り出し、頭に装着した。そして大きく息を吸ってマイクを構える。


「にゃんっ!」


 左手で可愛く猫パンチ。


「うへぇっ!」


 正通は言い知れぬ寒気を感じた。


 今日も君には会えないの?

 せっかく持ってきたサンマ カラスにあげるつもりじゃなかったのに

 野良猫の僕と お屋敷に住んでる君

 不釣り合いだと タマは言うけど

 それでも 僕は君が好き

 明日も屋根の上で待ってるよ おみやげにアジを持ってくるからね


 三曲目は野良猫の恋を唄った明るい曲だった。

 歌詞もよくメロディに調和し、聴く者を飽きさせない。陽子の澄んだ声と相まって、聴いて楽しい曲に仕上がっていた。

 ようやく緊張が解けてきたのか、歌声からもぎこちなさが無くなり、伸びやかさが感じられるようになってきた。


「あの神岡さんが猫耳つけて唄ってるよ……」


 正通は誰に言うともなく呟いた。


「よし、お客が乗ってきたぞ!」


 客席には人が戻り始め、曲に合わせて手拍子が始まる。

 1コーラスを唄い終わると、客席からは拍手が鳴り響いた。「猫耳かわいい!」といった声援もあちこちで聞かれる。


「みんなー! ありがとーっ!」


 曲が間奏に入り、緊張もほぐれた陽子はこれまで以上に切れの良いステップを踏む。

 客席からはいっそう大きな拍手と歓声が上がった。


 ――よし! 『あれ』をやってみよう!


 俄然、テンションの上がった陽子は左足を軸にして身体を回転させた。

 バレリーナのような華麗な動きに、拍手と歓声はますます大きくなる。


「いい動きしてますね、彼女。アクションもできそうだ」


 舞台袖にいた怪獣役のスーツアクターが、そう言って長坂に笑いかけた。


「ははは、どうも。本人に伝えときます」


 間奏が終わりに近づき、陽子は身体の回転を止めた。

 再びマイクを口の近くまで持っていこうとした時、やけに右手が軽いことに気がついた。


「あれ? マイクが……」


 次の瞬間、舞台袖でライブを見守っていた正通の額に弾丸のような勢いで金属製の何かが命中した。

 同時に、会場内全体に「ごすん」という鈍い音がスピーカーを通して響き渡る。


「ぎゃあああッ! 頭がぁぁぁぁ!」

「おい! 大丈夫か、江原君!」


 正通に声をかけた直後、長坂は足元に転がるマイクに気がついた。


「そうか! あの回転の遠心力でマイクがここまで……流石だな!」

「感心してる場合じゃないでしょうが!」


 正通は苦痛にのたうち回りながら突っ込みを入れた。

 既に曲は2コーラスに入り、客席のあちこちから笑い声が上がり始める。

 マイクのスイッチは入ったままなので、正通と長坂の会話はスピーカーを通して客席に丸聞こえだった。


 ――マイクがなくたって、唄ってみせる!


 陽子は突然の出来事にも怯まず、マイクなしで再び唄い始めた。

 客席の失笑が、陽子への拍手と声援に変わってゆく。


「早く! 早くマイクを渡してください!」


 イベントスタッフの声に気を取り直して、正通が傍らに落ちたマイクを掴む。


「江原君! 早くマイクを!」


 長坂の声に正通は無言で頷くと、サイドスローでマイクをステージに向かって投げた。


「神岡さん! 受け取って!」

「……え?」


 舞台袖から聞こえる正通の声。

 振り向いた陽子の視界に飛び込んできたのは、回転しながら飛来するマイクだった。

 次の瞬間、陽子は暗闇に火花が散るのを見た。

 会場内に再び響き渡る、「ごすん」という鈍い音。猫耳のカチューシャが宙を舞った。


「うあぁぁっ……! 頭がぁぁぁ!」


 陽子が痛みに悶えながら頭を押さえると、客席は爆笑の渦に巻き込まれた。


「あわわ……やっちゃった!」

「バカ! 投げる奴があるか!」


 思わず長坂が声を荒げる。


「だって! 長坂さんが『早く』って言うから!」

「くっ……まあ、仕方ない。ここからどう立て直すかは陽子ちゃん次第だ」


 正通達のやり取りを心配そうに見守っていた商店街のスタッフが遠慮がちに声をかける。


「あの……このまま続けて大丈夫ですか?」

「彼女だったら大丈夫! 根性だけは普通の人間の三倍、いや五倍あります。身体も頑丈ですから、あの程度では怪我しませんよ」


 正通の言葉通り、陽子はすぐにマイクを拾い上げて歌を再開した。

 そんな彼女の姿が客の心を捉えたのか、2コーラスを唄い切った頃には笑い声は止み、曲が終わる頃には客席から盛大な拍手が沸き起こった。


「皆さーん! お騒がせしてごめんなさい。それではいよいよ最後の曲です!」


 陽子はまだ残る頭の痛みに耐えながら、笑顔で挨拶した。


「よし……! なんとか乗り切ったぞ。いよいよ最後の曲だ」

「あのー、ちょっといいですか、長坂さん」


 長坂が振り返ると、組合会長が立っていた。その表情は困惑に満ちている。


「誠に申し訳ないんですが……」


 組合会長の口から聞かれたのは、プログラムの変更だった。

 マイクが客席に飛んで来たら大変だ、という苦情が複数あったという。

 申し訳なさそうに説明する彼に対し、長坂は正通と共に必死で頭を下げた。




「子供達、みんな楽しそうですね」

「ああ、そうだな」


 コンサートを途中で切り上げた代わりに、ステージではスターク兄弟と陽子の握手会が十分前倒しで行われていた。

 スターク兄弟に抱き上げられご満悦の子供と、それをカメラに収める親達。

 子供が嫌いだと言っていた陽子も笑顔で子供達と握手をしていた。


「ねぇねぇ、おねえちゃん。あたまいたいの、だいじょうぶ?」


 五歳くらいの少年が陽子を心配して声をかけた。陽子は優しく微笑んだ。


「心配してくれてありがとう。もう大丈夫だよ」

「そっかぁ。おねえちゃん、つよいんだね」


 陽子は優しく少年の頭を撫でた。


「スターク兄弟にはかなわないけどね。君もスターク兄弟みたいに強くなってね」

「うんっ!」


 正通は陽子と少年との微笑ましいやり取りを笑顔で見守っていた。


「子供が嫌いだなんて、嘘じゃないか」


 正通の言葉を聞いた長坂は、何も言わずに微笑んだ。


「いろいろ失敗もあったけど、今日はいい経験になったな」


 事務所への帰り道、ハンドルを握ったまま、長坂が言った。


「誰かさんがマイクをぶん投げたりしなきゃ、よかったんですけどねー」


 陽子が後部座席の正通を振り返って言った。


「そのセリフ、そっくりそのまま返すよ」


 正通は顔をひきつらせながら答えた。


「言うようになったなー、江原君。そうそう、トドロキのスタッフがまた一緒に仕事したいってさ。陽子ちゃんのこと、ほめてたよ。今度、皆で挨拶に行こう」


「あ、はい……どうも」


 正通は、照れながら肩をすくめる陽子を可愛らしいと思った。陽子が自分の魅力を活かし切れていないことを、勿体ないと思った。


「江原君、お疲れ様。今日はいきなり連れて行かれてびっくりしただろうけど、仕事に早く慣れてもらいたかったからさ」

「いえ、そんな。僕は何もしませんでしたから」


 陽子は振り返り、意地の悪そうな笑顔で正通を見る。


「……何?」

「ふふーん。君もそれ位のことはわかってるんだねぇ」


 正通はむっとしたが、反論は控えた。

 反撃が来るものと思っていた陽子は拍子抜けして、再び前を向いた。


「何か言うかと思ったのに、つまんないの」


 正通は無言で窓の外に目を向けた。

 すうっと息を吸い込んでから、しっかりと拳を握る。

 冷房の効いた車内にいるにも関わらず、その身体はうっすらと汗ばんでいた。

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