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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
プロローグ

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プロローグ

 体のあちこちが異様に熱い。

動かそうにも手足は全く言う事を聞かない。

意識もあまりはっきりしなかった。


「あ、あんたっ! 大丈夫かっ!?」


「きゃあああっ!? 誰かっ!」


 一体どうしてこんなことになっているのだろう。

記憶を探ろうとしたところ、周囲のざわめきが徐々に聞こえてくる。

それらはどうやら私に向けられているようだ。


「……?」


 聞き返そうとするが声は上手く出ない。

掠れて、単に空気が流れるような音となる。

肩をゆすろうと手を伸ばしてきた男性の後ろに、血の付いたトラックが見えた。


 そして思い出す。


(あぁ……。私、トラックに轢かれたんだ……)


「き、救急車! 早くっ!」


 自分の状況を理解すると、走馬灯が頭の中を駆け巡っていく。

ほんとにこういうとき流れるんだこれ、とどこか他人事のように思う。


 私、大野詩織は、いわゆる社畜OLというやつだ。

日々を生きるため必死に朝早くから起床し、焦りながらなんとか準備を終え、電車に詰め込まれて出勤する。

命からがら帰宅すると適当にご飯を食べ、また明日働くため眠りに就く。

ようやくの土日は疲れているせいかベッドの上から動けず、スマホでも見てだらだら過ごす。


 まるで本当に歯車にでもなってしまったかのような、大変な日々だった。


 しかも、大変なのは仕事だけじゃない。

こうしてどうにか日々をやり過ごしていると、ふと頭に浮かんでくるのである。

このまま働いてて、老後は大丈夫なのか。

将来的には転職した方が良いかもしれない。

流石にもうちょっとお金が欲しい。

結婚はどうしよう?親からそれとなく、でも頻繁に聞かれる。

申し訳ないんだけどすごく圧に感じてしまう。

彼氏だって居ないのに!どうやって作ればいいか、全然分かんないのに!


 そんな気持ちを抱えながら、今日までどうにか働いてきたのに。


「お、おい……。これ……」


「っ……」


 視界に入る人たちがこちらを見て、顔を青くしている。

きっと、もう助からないと直感するようなひどい有様なんだろう。


 ぐるりと目を回す。

あれだけ頑張ったのに、こんな風に終わってしまうのか。

なんてあっけない。

せめてちょっとぐらいこの、大人として普通なのかもしれないけどしてきた努力が報われてくれれば良かったんだけど。


 とはいえそんな人生だが、全く癒しが無いわけじゃなかった。

むしろ精一杯頑張る目的があった。

だからここまで、くじけそうになることもあったけど続けてこられた。


 それは、SNSや動画サイトで見る可愛らしい動物たちの姿だ。

特に、エキゾチックアニマルって呼ばれる子たち。

彼らの姿を見るだけで私は、明日も頑張ろうと思えていたのだ。

いつかお迎えできる日が来るって、そう信じていたから。


 でも私の些細な望みはもう、成就することはないみたいだ。

はぁ。頑張ってきたのになぁ。


(あぁ……。最後にせめて……)


 鳥ちゃんたちの羽毛をモフりたかった。

インコちゃんたちとおしゃべりしたかった。

歌とか歌ってもらいたかった。

蛇のしっとりつるつるな体にまた触れたかった。

トカゲちゃんに餌付けしたかった。

爬虫類特有の鋭くて、でも愛くるしい目をたくさん見たかった。

他にも……。

なんて思っていると徐々に意識が遠のいていく。

眠気とは違う、ずっしりと重たい感覚だ。

全然抵抗できない。


 だけど。


(良かった……。無事みたいだ……)


 首の力が抜けると、狭まっていく世界の中にサモエドちゃんが映る。

たぶん、私が助けた子だ。

彼、か彼女かは分からないけど、とにかくあの子を私は事故から救うことができたらしい。

ちなみに、好きなのはもちろんエキゾチックアニマルちゃんたちだけじゃありません。

ワンちゃん猫ちゃんも大好きです。

とはいえまぁ、好き嫌い関係無く人として、あの子が無事でよかったと心から感じる。


 だからまぁ色々後悔はあるけど、……めちゃくちゃやりたかったことばっかりだけど、なんならあの子、自力で逃げられたかもしれないけど、少しくらいは悪くない人生だったんじゃないかと思える。


 ただこんなことしたんだから、流石に来世はたくさんの動物ちゃんたちに囲まれて過ごせたらいいな。

だって今世では、彼らを迎える余裕が金銭的にも時間的にも、あとは人手としても無かったから。

できれば貴族のお嬢様とかでお願いします。

そしたら好きなだけあの可愛い子たちをお世話させてもらえるよね!

あとついでに、お仕事が楽しかったりしてほしい。

働きたくないなんて贅沢はこの際言わないから、とにかく楽しくできたらいいな。


 そんなアホなことを考えているうちに、気づけば「私」の人生は終わったのだった。




「というわけでセレスティーヌ。達者でな。それとよろしく頼む。わが友の息子、ギルバート・フォン・アイゼンハルト殿をな」


「へ?」


「む?……セレスティーヌ?ど、どうした。急に押し黙って」


 そしてたった今、婚約者の元へ送り出される瞬間に思い出した。

私、セレスティーヌ・フォン・ローゼンバーグ侯爵令嬢の前世が大野詩織だったことに。


 同時に気付いた。

私はこれから極悪非道なラスボスとなり、やがて惨めな姿で、3年と7か月後24歳という若さで断罪されることに。


 いや、散々じゃない?私の人生。

前の前の人生でなんか相当ひどい事でもしたのかな。

お読み頂きありがとうございます!


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