出会いの話と、明かされる内緒事
「それで……どこに向かえば良いのかな?」
《始まりの場所》
「え?始まりの場所?何処のことよ?」
《あの森》
《出会った場所》
「えっと……イシュエスと初めて出会ったあの森のこと?」
《そう…合ってる》
昨夜のイシュエスとの会話。
――それを思い出しながら馬車に揺られている。
王都を離れ、私達のホームタウンであるインクスの町へと向かっている。
町への乗り合い馬車は、もう出ていない。
なので、王都軍の馬車を借りた
「エタルナ、上手になったわね。」
「おぅ、この子は…とても良い子だ!」
交代で手綱を持とうと決めたのに、エタルナが離さない。
まぁ、気に入っているようなので良いのだけど。
「ところで、球体ちゃんは何て言っているの?」
「それがね、あの森に行けとしか言わないのよ。」
ユミエルは愛おしそうに杖にはめられた宝石を撫でている。
「あの普通の森に、黒い鎧を止める宝具があるのかしら?」
「分からない…でも、他に手がかりは無いから。」
「もし、あの森に伝説の宝具があったら、まさに灯台もと暗しね。」
「確かに、あんな目と鼻の先にあったら笑っちゃうわ。」
王都を出て、三日後…私達は、インクスの町に着いた。
「ただいまー。」
大きな声で叫ぶも、応える返事は無い。
門番もいなければ、ドワルクも。
賑やかな人々の笑い声を懐かしく思い出す。
みんな、無事に避難先の街に辿り着いていれば、良いのだけど。
プノンニッタは大きな街だから。行けば何とかなるよね。
と、自分の中で言い聞かせた。
「もう遅いし、森の捜索は明日にしようか。」
「そだね、今日はいつもの宿屋に泊まろう。」
いつもの宿屋、当然だけど……主人であるおばさんは居なかった。
地震の影響で、扉は壊れていた。
「すみませーん、お邪魔しまーす。」
小声でそう伝えながら入る。
二階の端にある部屋……いつも、この部屋で三人で寝泊まりしていた。
『本当は二人部屋なんだけどね。』
そう笑いながら、私達三人を向かい入れてくれた。
誰が一つのベットで寝るかはジャンケンで決める。
今日も、そうやって決めた。
「他にも部屋が空いているのだから、今日は二人で一つのベットで寝る必要ないけどね。」
「そうね、でも……思い出すじゃない。」
「あー、ユミエルが泣いてた時の話?」
「ちょっと、何の話よ!変な事を思い出さないでよ!」
ユミエルは顔を赤く染める。
「初めて会った時……ユミエルってば、財布を落としたって泣いていたじゃないの!」
「泣いてなんか無かったわよ…泣きそうになっていただけよ!」
「いや、あれは泣いていたな。」
エタルナも思い出したようで口元が緩んでいる。
「でも……おかげで、三人は出会えたのよね。」
「まぁね……あの時は、ありがとう。」
ユミエルは膝を抱えながら感謝を述べた。
そう、あの日にユミエルと二人で、この一つのベットに寝たのが始まりだった。
「ところで、アンジュちゃんとエタルナちゃんは、何処で知り合ったの?」
「私と、エタルナが初めて出会ったのはギルドだよ。」
「あたしが請け負おうとした依頼書に、アンジュも同時に手を伸ばしたんだ。」
「そうそう、そしてお互いに、これは私の依頼だ!って言い合いになってね。」
「ギルドの受付嬢さんが飛んできて、一緒に受けなさいって、諭してくれたんだ。」
エタルナと二人、顔を見合わせたら何故か恥ずかしくなった。
「そうなのね…あの受付嬢さん、元気にしてるかな?」
ユミエルは、暗くなり始めた空を見つめる。
《仲が良い》
――急に右肩のイシュエスの声が聞こえた。
「何?もしかして……ヤキモチ?」
《―――》
「どうしたの?球体ちゃんが何か言った?」
「私達三人の仲の良さにヤキモチを妬いているみたいなの。」
「へぇ~、感情があるのだな…
一度で良いから、あたしも話をしてみたいものだ。」
「ねぇ、イシュエス、エタルナがそう言っているけど…やっぱり無理なの?」
《無理……不可能》
「じゃぁ、どうして私だけは話せるのかな?」
《シリウスも》
《話せた》
「そっか……そうだったわね。
――イシュエスは、何処から来たの?」
《――異世界》
「え?異世界!?」
思わず、大きな声となる。
「アンジュちゃん、異世界って何?」
「分からない……聞いてみる。」
「イシュエス……異世界の事を教えて。」
《ダンジョンの向こう側》
《ここと同じであり…》
《非なる世界》
「ダンジョンの向こう側からだって!」
覗き込むようにする二人にも伝える。
「えっと……どうやって来たのかな?」
《シリウスと…》
《二人で来た》
「え?どういう事?私のお父さんと二人で異世界から来たって言うの?」
《そう…》
《合っている》
「待って……それだと、私のお父さんも異世界から来た人って事になるじゃないの!?」
《シリウスは…》
《異世界の人》
頭が真っ白になった。
「アンジュちゃん」「アンジュ!しっかり!」
「あ、ごめんなさい…
私も、この世界の人間じゃないのかも…」
「だとしたら!何!?」
「アンジュは、アンジュ!あたしの親友だ!」
「え…でも、あの黒い鎧の仲間なのかも…」
「馬鹿!しっかりして!」
「アンジュが、あんな…人を傷つける事はしない。」
「うん、ウチ達が証明する!」
「そうだ!おい、イシュエスとやら!アンジュは、アンジュだよな!」
エタルナの言葉にイシュエスは反応した。
《アンジュは…》
《シリウスの娘》
《大切な存在》
エタルナには伝わっていない。
「私の事……大切な存在なんだって。」
その言葉を聞いて、頬に涙がこぼれた。
大切な存在……
その言葉は、イシュエスのモノかも知れない。
――だけど、お父さんの言葉のようにも感じた。
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