戦いの末と、右肩の思い
ザンッ!
的確に黒い鎧の継ぎ目を突いて倒す。
ダグラスさんの剣技に思わず見惚れてしまう。
「おかしい!切った感覚が無い!」
「黒い鎧の右肩です!そこに本当の敵が居ます!」
ダグラスさんに向かい叫んだ!
「何?何も見えないぞ!」
「私を信じてください!」
「分かった!」
ザンッ!!
ダグラスさんは再び立ち上がった黒い鎧の右肩に一閃を放った!
「もう少し上です!」
「ここか!?」
ザンッ!
インテンション兵装は真っ二つとなると、
黒い鎧の傍らへと落ちた。
「この黒いのか?」
「そうです!
――その球が黒い鎧の右肩に浮かんでいるんです!」
浮かんでいる時は明るい光を帯びていたインテリジェンス兵装。
壊されると光を失い、ただの黒い塊になるようだ。
「位置は?その兵装とやらの位置は、皆、同じか?」
「はい、だいたい同じです!」
「それなら――任せろ!」
ダグラスさんの動きは、黒い鎧の数倍。
次々と、鎧達を倒していく!
「お前達!何故、そいつらを倒せる!?」
背後から、叫んだのは総司令ナシュール。
「昨日も言ったように、右肩の兵装です!
――黒い鎧の弱点がそこにあります!」
「見えない物を切れと言うのか!?」
「あら、ナシュールは、出来ないの?」
「お、お前は…大魔法師ミランダ!」
「相変わらず頭が固いわね!
――アンジュちゃんのアドバイス、合ってるわよ!」
「昔の事は言うな!よし、右肩だな!」
知り合いだったのね。
ミランダさんに言われた総司令は、黒い鎧の右肩の兵装を破壊した。
黒い鎧がドスンと倒れる。
「よし!やったぞ!倒したぞ!
――アンジュとやら、昨日はすまなかった!」
「仕方ないです!それより、皆さんに伝えてください!」
「分かった!」
そう叫ぶと総司令は、宝具を取り出した。
「よく聞け!
敵の弱点は右肩だ!右肩の少し上を狙え!」
――それは、声を増幅させる宝具。
戦場に弱点が伝わるのは一瞬だった。
「アンジュちゃん、私に出来る事はある?」
「物理攻撃しか効かないです!
石弾か何か、物理攻撃を黒い鎧の右肩に!」
「分かったわ…あなたは少し休みなさい。」
そう伝えると、ミランダさんは真っ直ぐに黒い鎧に向かった。
「アイスランス!!」
空中に小さな氷が何粒も集まり…槍を形成していく。
宙に浮かぶ巨大な氷の槍が…ミランダさんの右手から放たれた!
ドーーーン!!
インテリジェンス兵装を破壊された黒い鎧は、ゆっくりと倒れた。
「あの、ミランダさん…
ちょっと…オーバーキルです。」
総司令の指示を受けた王都軍の皆さんも活躍。
見えない兵装を破壊していく。
エタルナとユミエルのコンビネーションも、いつの間にか精度を増していた。
ダグラスさんとミランダさんに関しては…無双という表現が正しい。
何百体…いや、千体近く居た黒い鎧は、みるみるウチにその数を減らしていった。
二時間程が経過……
王都周辺の草原は、倒れた黒い鎧で埋め尽くされた。
「よし!殲滅だ!皆、よくやった!!」
剣を天に向けて総司令ナシュールが勝ち鬨をあげる。
「おーーーー!!!」
王都軍の歓声が、草原が震えさせた。
「お疲れ様。」
「あー、疲れたな。」
ユミエルとエタルナは、まるで大工仕事を終えたかのように、軽い感じで言う。
「アンジュ…お前の指示のおかげだな。」
「本当、凄いわね…王都を救った英雄さん。」
ダグラスさんと、ミランダさんは…ちょっと褒めすぎね。
照れくさくなり、頭をかいた。
「怪我人を、すぐに運べ!
――治療院は満杯だから、軍、本部だ!」
指示を出し終えた総司令が私達の下へと近づいた。
「剣士ダグラスさんですね、ご助力に感謝します。
――あと、大魔法師ミランダさんも。」
どこか距離感のある言い方にミランダさんは少しムスッとしていた。
が、二人の関係性は分からない。
「俺達の活躍というより、このアンジュのアドバイスのおかげだな。」
「いえいえ…私なんか。」
「私は問いたい……何故、右肩に謎があると知った。」
総司令ナシュールの問いにドキリとする。
何故って……私の右肩にも球体があるから。
そう考えると、急に怖くなった。
「あの……私には見えない物が見えまして……」
「そうか……深くは問わない。
――が、明日、軍法会議を開こうと思う。
そこに参加してくれないか?」
……私が会議に??
少し迷う。
私の右肩にあるイシュエス……この相棒に関しても話さないと駄目?
怖い……何もかも……怖い。
「アンジュちゃん、私も一緒に参加しようか?
――総司令ナシュールさん、良いかしら?」
「あぁ、構わない…」
「ミランダさん、ありがとうございます。」
そう伝えると、ミランダさんはニコリと笑った。
宿屋に帰り、一人、広いテラスで夜空を見つめる。
「ねぇ、イシュエス……
キミもあのインテリジェンス兵装と同じなの?」
《―――》
イシュエスは答えない。
きっと…聞いている筈。
何となく分かるようになった。
「いつか……私を、私の体を勝手に動かすつもり?」
《―――》
「キミは……私の相棒?それとも……兵器?」
《ボクは…失敗作》
《兵装だった》
《でも…》
《シリウスと出会って…》
《心を持ってしまった》
「お父さんと出会った事で心を持ってしまった…
――そう言う事なの?」
《そう…》
《兵器じゃ…なくなった》
「それで…失敗作になったのね。
――じゃぁ、これからも私の相棒ね。」
《うん…》
《いつまでも一緒に…》
《居たい…本当は》
「あら、嬉しい事を言ってくれるじゃないの。」
《でも…》
「でも…なぁに?」
《―――》
イシュエスは、また無言になった。
本当、よく分からない相棒ね。




