和解と、強さの証明
エタルナは怯えている兄から目を離すと、大木へと向かった。
バーサーカー化したままのエタルナはあっという間に大木を登り、男の子を肩へと載せる。
男の子は何の躊躇もせず、その身をエタルナに預けたように見えた。
飛び降りたエタルナは、ほとんど音も無く着地した。
「さて、戻ろうか。」
エタルナが前を歩き、ユミエルと二人、
そして私達の後に、お兄さんが続いた。
「どうしてこんな森に入ったんだ?」
赤い目をしたまま、男の子に聞くエタルナ。
「猫が居てね、こっちの方に走って来たんだ。」
おそらく村の子供なら『この森に近づいてはならない。』と、教えられていた筈。
だけど……この男の子には、そんな知識は無かった。
仕方のない事だけど、一つ間違えていたらと思い、背筋が凍った。
村の入り口。
――エタルナの異様な姿に村人達が騒ぐ。
そんな中……男の子の両親が駆け寄ってきた。
「あ、あの……ありがとうございます!」
「一体、何処に??」
男の子は怒られると思ったのか?
――エタルナの頭にしがみついたまま離れようとしなかった。
「魔の森に居ました。」
そう伝えながらエタルナは、男の子をゆっくりと地面へと降ろした。
男の子と、両親は抱き合った。
村人の対応は……クワを持ってエタルナと対峙している。
以前、この村でエタルナは、バーサーカー化した姿で暴れた事は事実。
――村人達の脳裏には、その光景がまだ残っているのかも知れない。
「俺の妹は……化け物なんかじゃない!!」
突然、叫びながらお兄さんが、村人とエタルナの間に割って入った。
村人達は騒ぎ始める。
「モンスターに毒されたのか?」
「そのモンスターは、本当にお前の妹なのか?」
――モンスター??
なんて酷い事を言うの??
右肩に浮かぶ球体イシュエスも熱を帯びる。
すると……
助けた男の子が、立ち上がって叫んだ!!
「お姉ちゃんは僕を助けてくれたんだ!
とても優しい、そして強いんだ!」
その言葉を聞いて、エタルナはバーサーカー化を解いた。
赤い目が消え去り、どこか悲しそうな目へと変わった。
「この娘は……どう見てもエタルナじゃないか。
どこをどう見たら化け物になるのかね?」
高齢の男性が杖をつきながら前へと歩み出た。
「村長……」
立ち尽くすエタルナ。
村人達も持っていた各々の武器を下げる。
「ありがとうございました!」
男の子両親がふたたびエタルナに向かって叫んだ。
「強くて優しいお嬢さん…孫を助けてくれてありがとう。」
男の子のおじいさんなのだろう……
おじいさんの言葉を聞いた村人達は、持っていた武器を投げ捨てた。
「では……解散じゃ。
皆、ご苦労じゃったな。」
村長さんの言葉を聞いた村人達はザワザワとしながら、それぞれの家へと戻っていった。
私達は少し男の子と両親と話をする。
発見時の状況を伝えると、改めてお礼の言葉を伝えられた。
その後、エタルナの家へと戻る。
「おかえり。」
お母さんはすでに今回の事件の事を知っているようで、静かに迎え入れてくれた。
お父さんは、村長さんの家へと呼ばれたらしく不在にしている。
「ただいま。」
ボソリと呟くように返すエタルナ。
「ねぇ、エタルナ……どうして、村に戻る前にバーサーカー化を解かなかった?」
「もしかして……まだ、コントロールが不完全だとか?」
「わざとだよ……」
私とユミエルの問いかけにエタルナはニコリと笑顔を作った。
その笑顔は、まるで少しイタズラをしてやったかのよう。
「お前……もしかして、根に持っているのか?」
「いーや、全然。」
お兄さんの問いかけにエタルナはそう答えた。
すっと息を吐き出した後、続ける。
「むしろ感謝している……
おかげで、あたしはこの村を出て、自分が生きる道を見つける事が出来た。
かけがえの無い友達にも出会えたしな。」
エタルナの言葉を聞き、思わず顔が赤くなってしまう。
「じゃぁ、何故?あの姿のまま?」
お兄さんは不思議そうに尋ねる。
「それは……過去との決別の為。」
エタルナの顔はどこか晴れやかに見えた。
「そうか……お前、強くなったな。」
お兄さんは、エタルナの目を見て話す。
「うん、でも……まだまだ足りないかな。」
「強くなったのは……腕力という意味じゃない。
お前の心だ。」
「そうか…それなら、嬉しい言葉だ。」
――兄から褒められたエタルナの顔は自信に満ち、その目からは迷いが消えていた。
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