兄の声と、赤い目
「おい、ここに男の子が来ていないか?」
突然、一人の男性が尋ねてきた。
重苦しい雰囲気が、一瞬でそちらへと移った。
「どうかしたのか?」
エタルナのお父さんが問いかけると、
突然の来訪者は伝える。
「タハマのじいさん所に遊びに来ていた孫の男の子が行方不明なんだ……
今、村のみんなで探している。」
「もしかして…青い服を来た男の子ですか?」
「あぁ、そう聞いている。知っているのか?」
「道中、一緒だっただけですが、私達も探します。」
「そうか…顔を知っているなら助かる。」
「俺も行く……」
座り込んでいたエタルナのお兄さんも立ち上がった。
エタルナが先頭を走る。
一直線に走るその姿には迷いを感じられなかった。
この村の地理に詳しくない私とユミエルは誘導されるかのように、その背中に続く。
「おい、エタルナ!どこに行くつもりだ!」
「北の森!あそこは村人じゃ入れない!」
背後から叫んだお兄さんに対し、エタルナが叫び返した。
「あそこはモンスターが出るぞ!」
「だからあたし達が行くの!お兄ちゃんは来ないで!」
村人では捜索出来ない範囲を私達が探す。
――正しい選択ね。
「はぁ、はぁ…」
到着した森は、鬱蒼と茂っていて手入れがされていない事が分かる。
男の子がここに来たとなると……探すのは厄介そうね。
「効率よく、二手に別れたい所だけど…
危険なモンスターが居るって話だから、まとまって動きましょう。」
エタルナの意見に賛同する。
お兄さんも、ついて来るようだ……
エタルナは戻るように伝えていた。
だけど、お兄さんも譲らなかった。
気まずい雰囲気の中、森を捜索する。
すると…遠めから何かが聞こえてきた…
ずどーーん。
ずーん。
「あれは…何の音だ?」
音が聞こえる方向に走り出す。
「――ストレイボア!」
大きな木の下に…三体…いや、四体だ。
鼻息の荒いモンスター…その牙による攻撃は強烈。
高い攻撃力を持つモンスターが四体も…厄介ね。
徐々に後退しながら…撤退が最善かも。
「お姉ちゃん!」
「え?」
この声は……
「木の上だ!」
エタルナが指を差す方向を見ると……あの男の子が木にしがみつく姿があった。
「――助けて!」
泣きながら叫ぶ声が森の中に響く。
「分かった!今、助ける!」
私が言う前にエタルナが叫んだ。
――そして、盾を構える。
「まずは、あたしが行く!」
「何、考えているんだ!無理だろ!応援を呼ぶのが先だ!」
お兄さんが叫ぶ声を無視して、走り出すエタルナ。
モンスター"ストレイボア"が一斉にエタルナへと向き直した。
ユミエルが動く……
「ウォータボール!」
空からの攻撃……ストレイボアの頭上から降り注ぐ。
が……そのスピードによってかわされた。
パワーもあるクセにスピードもある……ほんと厄介。
「イシュエス、力を貸して!」
《分かった…感覚二倍、筋力二倍》
ストレイボアは破壊力とスピードを兼ね備えたモンスター。
一瞬でも気を緩める事は許されない。
その瞬間に……持っていかれる。
ドンッ!!
エタルナの盾と、ストレイボア四体がぶつかり合う。
「エタルナ!無茶するな!」
お兄さんの叫び声も虚しく……エタルナの体は後方へと吹き飛んだ。
――砂煙が舞う。
「アンジュ…行きます!」
ザンッ!ザンッ!
二振り…繰り出すのがやっと…
だけど、エタルナからは引き離す事に成功!
「サンダーボルト!!」
すかさずユミエルが魔法を放つ!
――見事、直撃!!
ダメージを受けたボアに追い込みをかける。
「ザンッザンッ!」
「よし!」
ストレイボアの二体は足元を揺らめかせた。
元気なのは……あと二体。
「え?」
その二体に向けて、エタルナが突進する!
盾も槍も投げ捨てて……飛びかかった!
その姿は――バーサーカー。
長く伸びた髪をなびかせる。
「エタルナ!また……そんな!」
お兄さんが膝を崩しながら頭を抱えた。
「問題……無い……」
チラリと兄を見たエタルナは、確かにそう伝えた。
お兄さんは…驚いた表情を゙見せる。
ドンッ!!
ストレイボア二体とエタルナの体がぶつかり合う。
《――右!》
イシュエスの声に反応!
ザンッ!
目を離していたストレイボアの腹部へと一撃を加えた!
ゆっくりとその体を横たえさせる。
「アンジュちゃん!」
「ユミエル、あっちの一体を!」
私とユミエルは、共闘して二体目のストレイボアを倒す。
そして……エタルナは……
逃げ出そうとしたボアを二体とも一人で倒した。
エタルナは、バーサーカー化したまま、
岩陰へと隠れていたお兄さんの方へと歩く。
「助けてくれ……」
「―――。」
「待て…俺だ…兄だ。」
「―――分かってる。」
その目は赤く染まっていたが、
真っ直ぐに兄の姿をとられえていた。
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