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【完結】トレジャーハンター三人娘の内緒事~強化魔法?そんなの知らないんだけどっ  作者: あんそに
第一章 ~ トレジャーハンターの日々 ~

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三人娘と、最初の内緒事

死んだ…


振り下ろされるトロールのこん棒を前に、私はそう確信した。

…その時だった。


《感覚二倍―》

脳内に響く、冷徹な声。

――命令のような。


次の瞬間、私の世界は一変した。


◇◇◇◇◇


「あれ…?どうして、トロールは倒れてるの?」


私は、こうして立っている事が出来ている。


目の前には、巨体を横たえたトロールが、ピクリとも動かずに倒れていた。


「ちょっと、どういうことよ!アンジュちゃん、いつからそんなに強くなったの!?」

「す、凄い……!アンジュの動き、めちゃくちゃ速かったぞ!」


背後から慌てて駆けて来たのは、ユミエルとエタルナ。


二人とも、信じられないものを見る目をしている。


まぁ、一番信じられないのは、私自身なんだけど。


手に握った剣が、急にずしりと重く感じられた。

さっきまで、羽のように軽かったはずなのに。


「こんな町の近くの森に、大型トロールが出るなんてねー。いやぁ、びっくりだったね。」

「……う、うん。びっくり、ね。」

ユミエルの軽い調子に合わせて頷きながらも、頭の中は混乱したまま。


返答もどこか上の空となる。


トロールが出たことよりも…

私が、トロールを倒したことの方が、よほど信じられなかった。


「それにしても…どうしたんだ?いつもとは、まるで別人みたいだったぞ。」

エタルナの問いかけに、答えようとした、その時。


肩に…ほのかな温かさを感じた。


…あ。


思い出す。

戦闘の最中、トロールの肩に乗っていた、あの“光る球体”。

いつの間にか、それが私の方へ移動してきて…

そこから、急に体が軽くなった。


「…なんとなく、だけど。」

私は言葉を選びながら口を開いた。


「この光る球体のおかげ、かな。体がすごく軽くなった感じがしたの。」


「は?」

「え?」

二人は揃って首を傾げた。


「アンジュちゃん……何言ってるの?どこか、頭でも打った?」

ユミエルは冗談っぽく笑う。


「光る球体なんて、どこにも無いぞ?」

エタルナは真顔で、心配そうに私を覗き込んできた。


…え?


私には、確かに見えている。

最初はトロールの肩にあったそれが、今は私のすぐそばに浮かんでいる。


――私自身、何が起きたのか、まだ整理できていなかった。

戦闘の記憶が、脳裏によみがえる。


《感覚二倍―》

その声は、どこか冷たく…

ただ、私を“道具”のように扱っている気がした。


そこからだった。

トロールの動きが、信じられないほど遅く感じた。

剣を振る速度も、踏み込みも、すべてが研ぎ澄まされていた。


そうか…


「…ねぇ、ユミエル。私に、強化魔法かけた?」

このパーティで、魔法を使えるのはユミエルだけ。


「え?何言ってるの、私じゃないわよ」

即答だった。


「じゃあ……エタルナ?」

「違う違う。もしそう感じたなら……アンジュ自身がかけたんじゃないか?」


「……え?」

私が?


「強化魔法?そんなの、知らないんだけど。」


言葉にした瞬間、場が静まり返る。


「それにしても……吹き飛ばされた時は、もうダメかと思った。」

「そうそう!なのに急に人が変わったみたいに動き出して、バッサリよ、バッサリ!」

ユミエルが杖を振り回しながら、私の剣さばきを再現してみせる。


「だから……やっぱり、この球体のおかげだと思うの。」


エタルナとユミエルは、顔を見合わせた。

「……前から思ってたけどさ。」

「アンジュちゃん、大丈夫?」


……うん。

やっぱり、信じてもらえないよね。


私の目には、はっきりと見えている。

静かに浮かび、寄り添うように存在する、謎の球体。


「頭なんて打ってないわよ。失礼しちゃう」

ため息を一つ、つき終わると話題を切り替えた。


「それより、このトロール…売れないかしら?」


「素材かぁ…分かんないわねぇ。」

「町も近い。とりあえず、持って行ってみよう。」


エタルナが車輪付きテントを使い、巨体を引きずり始める。


「助かるわ〜。さすがエタルナ、力持ちね。」

「いや……こういう道具の使い方をだな……」


エタルナは、ちょっぴり臆病だけど…仲間思いの盾使い。


おっちょこちょいだけど、実は優秀な魔法使いのユミエル。


そして――

「よしっ!じゃあ、ハンターギルドに行こー!」


……訳の分からない力を持ってしまった、私。



ただ…

この時の私はまだ知らなかった。

この三人の中で——

一番「普通」なのは、誰なのか。



「アンジュちゃん、本当に治療院行かなくていい?」

「大丈夫、大丈夫。」


この球体のことは…そっと胸の奥にしまい込む。


「ねぇ、キミ……一体、何なの?」


球体は、答えない。

ただ——

ほんの一瞬、私の呼吸に合わせるように、小さく震えた。


言えば、きっと変わってしまう。

三人の距離も、私の立ち位置も。


だから…


この秘密は…誰にも言わない。

これは…トレジャーハンター三人娘、最初の内緒事。

~~~~~~~


新連載、始まりました!

100話以上になるお話の予定です。

今のところ、三部構成を考えていますので、お付き合いよろしくお願いします。


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