魂の一作
「悠斗、PV……見たか?」
「……見たよ。3桁いってない」
「……マジか」
星乃悠斗が、ふざけた企画やPV狙いの戦略を一切捨てて、
“自分の書きたいもの”だけを詰め込んだ作品を投稿したのは、3日前。
タイトルは短く、シンプルに『星の声』。
異世界も転生も追放もない——ただ、ひとりの少年と少女が、夜空の下で交わす静かな物語。
「……これが、俺の“本気”だったんだ」
「……わかってる」
◇◇
PV:97 ブクマ:4 感想:0
◇◇
「“泣ける”って言われたくて書いたわけじゃない。
でも、誰かの心に届いてほしかったんだよ……」
「……悠斗」
「“PVがすべてじゃない”って、言いたいけどさ。PVがすべてじゃないって言えるのは、PVがあるやつだけなんだよ……」
奧昌、沈黙。そして――
「……なあ悠斗。次、俺が宣伝する」
「え?」
「“ふざけたやつ”じゃない。“本気のやつ”を、俺が本気で広める。
PVのためじゃない。お前の“本気”が、ちゃんと届くように」
「……お前、たまに本当にいいやつだな」
「たまにじゃない。“毎回”だ」
そして始まる、奧昌の“本気の宣伝”
まず、SNSで「これはバズらせたい」と本気のレビュー投稿。
次に、読者に「これは違う」と伝えるための“あとがき解説”を追加。
さらに、「ふざけてない星乃悠斗も、ちゃんと読んでくれ」と呼びかける。
数日後…
「なんでこんなに静かなのに、こんなに泣けるんだろう」
「今までの作品と全然違う。でも、これが一番好きかもしれない」
「“星の声”、届きました」
「……届いたな」
「届いたな」
思いが届き、PVが3桁には届いた。しかし、一度本気でやってみて思う。
「奧昌のPV伸ばし戦略ってすげぇ…」