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その手があったか


ある日、山羊が報告に来た


「魔王様、ある村で生まれた子供が風と話ができません」

「?、人族の子ではないのか?」

「いいえ、魔王国の子です」

魔王国で生まれた子は祝福として生まれながらに風と話ができる。それが人族の出身者であっても魔王国の国民となれば、その資格を得ることが出来るし、魔王国で生まれた子供は無条件に生まれがらにして風と話が出来る


「理由は?」

「わかりません。ただ、風と話すことの概念をわからないようです」

うーむ、それは何か変だ

「その子を連れて来てくれ」

「承知しました」


暫くすると、赤子を抱えた人族と思われる夫婦が我の元にやってきた

「この子か?」

両親に尋ねる

「そうです、魔王様。風に聞いても、この子は風の声が聞こえていないと言われました」


ふむ、何故だろう。我は愛に相談した


 “愛を愛するものは

 その祝福を受ける

 永遠の螺旋はまることなく続き

 光を現す

 理は理として

 そのをなす”



要するにこの子は魔王国の子だからちゃんと祝福を受けていて、風の声も聞こえていると言うことか。ならこの子自身が聞こうとしていないだけ、と言うことになる


我はその子に問うた

「なぜ風の声を聞こうとしない。ちゃんと聞こえているだろう」

その子は我の顔をジッと見ていたが、やがて答えた

「だって面白くないもん。最初から答えがわかったらまらない」

「答えが知りたくないのなら、そう願えば良い」

「?、どういう意味?」

「お前は自分で答えを見つけ出したいのだろう。ならそう願ってご覧」

その子は暫く考えていたが、愛に願った


「魔王様、この子は大丈夫でしょうか?」

夫婦が尋ねたので

「大丈夫だ。ちゃんと聞こえているが、聞きたくなかったから耳を塞いでいたようだ」

我が答えると、ホッとした様子で二人はその子の頭を撫でている


我はその子に話した

「風はいつも答えを教える訳ではない。体験は自らの感情を感じて受け取ることが大切だ。だからお前がなぜそれはそうなるのかもっと深く知りたいと願うなら、愛はその願いを叶えるだろう。お前が愛が為すべきことを考えて操作する必要はない」

「そうなんだね。愛って凄いね」

「ああ、凄いな」


夫婦はその子を愛おしげに胸に抱き、帰って行った


「願いにも色々あるのですね」

側にいた山羊は感慨深げに言った

「ああ、そうだな。我は人族を知りたいと願ったから魔王になったが、魔族の中にも人族のような願いを持つ者が現れた。これは魔王国として嘆くべきなのか、喜ぶべきなのか。今の我にはわからん」

我はため息しか出なかった


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