第三章、ゆらりと佇む亡霊屋敷 ⑩
【第十話、照らさずの太陽】
「妖夢。 妖夢があいつとどういう関係だったのかは僕には分からない。
でも、これは戦いだ。 迷いは捨てておいてくれ」
「………………まだ彼が生きていることが現実だとは思えません。
ただ………………彼は…………私のせいであんな風に変わってしまったんです。
なら私は………………灯雷を」
「!? くそ!」
「!!!」
「おい、もう始まってんだよ」
灯雷はその黒い炎を操り鬼怒達がいる場所を
焼き尽くした。
「………妖夢! 右からだ!」
「はい!」
鬼怒は炎を避けた反動を利用し、身体強化をした体で
灯雷へ一直線に殴りかかり、妖夢は鬼怒の指示で
鬼怒の右側から灯雷へ斬りかかる。
「おいおい、危ないなぁ」
「妖夢! 足を止めるな!!」
「!? くっ………」
「妖夢! くそ!」
妖夢は刀が外れたとき、足を止めてしまい
鬼怒の攻撃を上手く躱した灯雷が妖夢を殴り、
妖夢は信じられない速度で岩に打ち付けられた。
「ははは! さぁ、あまり俺も我慢できるわけじゃないんでな。
そろそろ…………お前も邪魔なんだよ」
「!? そんなんありか!?」
灯雷は穴から抜け出したときと同じ方法で
鬼怒の上空に浮き上がっていくと、
まるで空が落ちてくるような量の黒い炎を
鬼怒に向けて放った。
「…………ふぅ、なかなかに疲れたな。
さて………………お楽しみの時間だ」
灯雷は焼け焦げた地面を歩き、その足が向かう方向は
岩に叩きつけられ動かない妖夢に向いている。
「ははは………復讐…………俺は、お前を憎んでる。
あの穴に落ちて何があったと思う?
俺がどれだけ苦しんだか分かるか?
………………全てお前のせいなんだ」
灯雷はもう妖夢を殺せる距離まで近づいている。
鬼怒はその姿が見えず、妖夢は動く気配すらない。
「………………俺はお前への復讐だけを考えてきた。
………………じゃあな………………魂魄妖夢。
地獄に落ちることを祈るぜ」
「………………………………くそ……危なかった。
後、少し器の力がもたなかったら死んでたな。
………………は! そうだ、妖夢は!」
灯雷が空をも飲み込むほどの黒い炎を放った時、
鬼怒は器の力を使い自分を守る盾を作っていた。
だが灯雷の炎は恐ろしいほどに強く、鬼怒は
器の力を使い果たして気絶してしまっていた。
「………………俺はお前への復讐だけを考えてきた。
………………じゃあな………………魂魄妖夢。
地獄に落ちることを祈るぜ」
「!? くそ、間に合え!!!!」
鬼怒が意識を取り戻したとき、鬼怒の目に映ったのは
灯雷が妖夢を今まさに殺す瞬間だった。
鬼怒はそのことを理解すると、風よりも早い速度で、
灯雷に向かっていった。
「!? てめぇ、何度邪魔すれば気が済むんだ!!!!」
灯雷は向かってくる鬼怒に黒い炎の壁を作り出したが、
鬼怒は止まらず、灯雷は何度も黒い炎の壁を鬼怒が突破して
いくたびに焦りを感じていた。
そして、灯雷は唯一の切り札を切った。
「いいぜ…………お前がその気なら………食らえばいいさ」
「!? まずい!!!」
「………………黒く暗く孤独な穴には黒い炎が灯るんだ」
一つの黒い炎が灯雷から放たれた。
その小さな黒い炎はやがて人と同程度の大きさになると、
真上に浮き上がっていった。
輝きのない浮き上がった黒い炎は丸みを帯びていて、
それは灯雷があの穴で作り出したもの。
名を【照らさずの太陽】であった。
「これで終わりだ!!!」
照らさずの太陽は灯雷の声とほぼ同時に
浮き上がった場所から地面へと真っ直ぐに落ちてきた。
その衝撃は周りの全てを吹き飛ばし、
その光景は死体の山が転がってないこと以外は
かつての東西南北大戦の悲惨な景色に瓜二つだった。




