第二.五章、あぁ 日常 ①
【第一話、鬼怒君の一人旅?】
「……鬼怒、旅に出てみない?」
「…旅?」
地霊殿での一件が終わり、今はちょうど一か月ぐらいだ。
季節は夏になり、天気のいい日が続いていて穏やかな日々を僕は過ごしていた………………のに、またこの幼女は訳の分からんことを言ってきた。
「えぇ、そうよ。 貴方のおかげで今の幻想郷はとても安定しているわ。 そこで貴方には幻想郷を見てくる時間をあげようかなって思うのだけどどう?」
…まぁ、確かに幻想郷に来たときは色々忙しくてのんびりすることも出来なかったし、せっかく紫がいいって言ってるんだから旅っていうには大げさだが行ってみてもいいかな。
……それに、旅にでたら紫の世話する必要もないしな。
「あぁ、ありがたく行かせてもらうよ」
「本当に!? あ~よかった、助かったわ」
ん? なんか紫のリアクションがおかしい気がするんだが……まぁ、大丈夫だろう。
………………いや、大丈夫だって。
「じゃあ、早速だけど明日の朝、出発してちょうだい!
あと、なにかあったらスキマで向かいに行くから覚えておいて」
「…明日? なんというか随分急じゃないか?」
「いいえ! 思い立ったら行動するのが旅の掟よ!
さぁ、鬼怒はもう寝なさい、明日のためにね」
……僕は紫のことはある程度理解していると思う。
なんだかんだいって僕は紫と一番時間を過ごしてるだろう、
まぁ、その大半は紫のわがままを聞いているだけだけど。
でも……そんな僕だからこそ分かることがある
………テンションの高い紫は鬼より恐ろしい……いや、マジで。
………………昨日ならまだ眠っている真夜中に僕は起きた。 あぁ、トイレに行きたいから起きたわけじゃない……足音が…………するんだ……。
この家は二階建てで、普段僕は一階にある寝室で寝ていて、紫は二階で寝ている。 ただ………紫は家の中でもスキマで移動しているから足音は立てないはずだ、
だから基本的にこの家の夜はとても静かで物音もほとんど聞こえたことはなかった。
………足音が………………止まった?
いや………………僕の寝室の前で止まったのか?
………………え? これどうしたらいいの?
だって、寝室の前にいられたら………もう、だめじゃん。
それになんで器の力を感じないの? もう紫の可能性が消えたんだけど?
………………………………や、やってやるよ。
だいたい? そんな幽霊なんて……寝ぼけた人が見間違えただけだし?
僕は幽霊より恐ろしい鬼とお友達だし? 全然怖くないし?
…………怖くないし?
「………………よし……い、いくぞ………………おらぁ!! 誰だ!?」
自己暗示を存分にかけ、寝室の襖を開ける。
「………はは、ほら、やっぱり………誰もいないじゃないか。
幽霊なんてやっぱりいな{うらめしや~?}うわああああああ!!!」
………………し、心臓が動いてない?
…………あ、動いてた………………な、なんなんだこの子?
この子が足音の正体なのか?
年齢は………………威様と同じか少し上ぐらいだろう。
見た目は長い髪を後ろでお団子みたいに結んでいる……それと口が裂けても威様には言えないが
威様よりかなり胸があるから女の子なのだろう。
格好は着物のようなもので腕の部分は真っ黒だが、体のところは黒をベースに黒、黄色、青の順番に着物を重ね着していて普通は帯で結んでるところは縄みたいなものになっている……あとは眼鏡をしていて少し浮いてることくらいか。
………………もうわけわかんない。
{あ、あれ? ……ねぇ、大丈夫?}
「…………あ、あぁ。 止まりかけた心臓も動き出してきたよ」
{僕の心臓はもう止まってるけどね}
「!?!? ………名前を聞いてもいいかな?」
{え? うん…僕は【最初の幽霊 古戸枝 雫】。
君に取り憑いた、ただの幽霊さ」
…………僕はついにこの幻想郷で出会ってしまった………………
僕と同じ【僕っ子】に!!!!
「いやーやっぱり人生ってめぐり合わせだよな~。
あ、ごめん。 僕は鬼怒、ただの人間だよ。
なんだか雫とは仲良くなれそうだな」
{う、うん………………そうだね、僕も鬼怒君とは仲良くしたいな。
…………ねぇ、鬼怒君}
「ん、なんだ?」
{………これからよろしくね?}
「え? ………あ、あぁ よろしく」
なんだ? 雫の目が赤く光ったような気が…………。
まぁ、気のせいだろう。
「さて、鬼怒! 旅に出る準備はできた?」
「あぁ、大丈夫だ」
今は朝の7時ぐらいか、紫に雫について聞いてみたんだがそんな人は知らないそうだ。
紫が幻想郷を作ったのにその紫が何も知らないというのは不自然だとは思うが、何故か雫はいなくなっており聞こうにも聞けなかった。
「じゃあ、いってらっしゃい 鬼怒!
私の幻想郷がいかに素晴らしかったかの感想も考えておくのよ?」
「それよりも僕の無事を祈ってくれ」
「大丈夫よ、今の貴方なら…………ね?」
…………まぁ、なんだかんだ僕もワクワクしているのは事実だ。
さて、そろそろ行くか。
「じゃあ、行ってくるよ」
「えぇ、気を付けて」
夏の匂いが朝から鼻の中に入り込んでくる。
今日も暑くなりそうだ。
さて、まずは妖怪の山を下りるかな
{………………ふふ、楽しくなりそう}




