第二章、訪れるは孤独な地底世界 ⑪
「第十一話、果たすなら約束】
「……見てるだけでいいのか?」
「邪魔することなんてできないよ。
さとり様があんなに泣いてるところなんて見たことない。
ずっと……感情がないような感じだったからね。
これから変わっていくんだろうね。
さとり様も、この地底も」
「あぁ、変わっていくんだ。
少しずつ…少しずつな」
「…そういえば、私は名前を言ってなかったね。
【火焔猫燐】だ。 みんなからはお燐って呼ばれてるから、
そう呼んでくれ」
「あぁ、よろしくな。 お燐」
「…女の言うことを聞く男は魅力的だな」
「あぁ、モテモテで困ってるんだ」
「ははは! それはいいな!
鬼怒についていれば、仕事が捗りそうだ」
「……?」
さて、あの時黒い霧を吸いすぎてしまい、僕は気を失った。
そして、気づいたときにはさとりとこいしのいる場所から少し離れたところにいたんだが、
どうやらさとりとこいしは自分自身を変えることが出来たらしい。
「…いやー今回は本当に死ぬかと思ったな」
「いや、あんた本当に死ぬとこだったんだよ?」
「……あ…そうなの?」
「うん。 まぁ、私としてはあんたを見つけたとき治療するかどうか迷ったんだけど、あんたがさとり様を変えようとしてたのは見てたからね。 そんな人を見殺しにはできないよ」
「あぁ、うん。 ありがとう」
少しおかしいことを言ってる気もするが、助けてくれたのは事実なんだろう、
お礼ぐらいは言っておかないと。
……少し…というかかなり攻めた賭けだったが成功してよかった。
少し前、僕は黒い霧への耐性をつけるために地底全体の器の力を吸った。
でも、ただ耐性をつけるならそんなことをしなくても妖怪一人から吸うだけで足りる、
僕の目的は耐性を付けることともう一つ…こいしを認識させるためだ。
こいしの器の力は少ない、それだけが原因じゃないがこいしを認識させるには
大量の器の力をこいしの器に流し存在を認識させるのがそのときの僕にできる唯一の方法だった。
まぁ、ああやって二人が抱き合っているということは僕は賭けに勝てたのだろう。
「…さて、私は仕事が残ってるから戻るけど鬼怒はどうする?」
「ここにいるよ……まだ終わってはいないからね」
「…そうかい。 じゃまたね」
「あぁ、助けてくれてありがとう、お燐」
「…はぁ、死に際の人を助けるなんて……」
最後にお燐の言ったことはよく聞き取れなかったがまぁ大丈夫だろう。
…さとりを救うのは完全ではないがきっかけは作れただろう。
後は今のこいしとさとりなら大丈夫だと思う。
……問題は鬼の移住許可とヤマメとの約束だ。
まだ終わったわけじゃない。




