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16.掃除します

うさぎのトイレ掃除の詳細な描写があります。

苦手な方は回避していただくよう、よろしくお願いします。

 取りあえず手に持っていた餌入れをケージに収めて、ヨツバに向き直る。

 ヨツバは背中をペロペロとしきりに舐めていた。しかし首が回り切らないのか、舐め続けている内に徐々に仰け反るように前足が浮き始める。

 転ぶんじゃないか?と心配になった頃、クルリと首を反転させ背中の反対側を舐め始めた。が、段々と熱が入り始めてまたしても短い足が浮き上がり出した。


「ヨツバ」


 出来るだけ優しく声を掛けたのに俺の声が聞こえていないかのように、ベージュ色のぬいぐるみのようなふわふわしたうさぎは、熱心に自らを舐め続ける。思わずジッと見守っていると、背中の毛繕いが一段落したのか前足を下ろして正面を向いた。それから今度は右前足を持ち上げて人間であれば掌に当たる部分を上に向け、そこを熱心に舐め始めた。




 ペロペロペロ……




 うーん、これは……取りあえず放って置いて、この隙にケージの掃除を終えた方が良いな。


 俺は諦めてケージに向き直り、以前ケージの外から手作り滑り台で流し込んだ為にその床に散らばったペレットを拾い始めた。ケージの床はスノコ状になっていて、その隙間から落ちたものもある。だけどそれらは取りあえず諦めて拾える分だけ拾って集めた。そうして先ほど余った餌を放り込んだコンビニの袋に放り込む。


「それから主食の牧草……だな」


 カラーボックスから牧草の入った密閉容器を取り出し、金網状のおそらく牧草入れと思われる場所に新たな牧草を差し込んだ。うん、これでヨシ!……多分。


「後は……水か?」


 ボトルの水はもう少しで尽きそうだった。しかしこちらはヨツバをケージに入れた後からでも容易に補充できる構造になっている。外側から設置するタイプだった。


「じゃあ、うーん……諦めて取り掛かるか」


 気が進まないがトイレ掃除だ。

 あ~……苦手なんだよなー、こういうの。


 ケージの奥に設置されている三角形のプラスチックの入れ物を、軍手を付けた手で取り出す。


「うっ……」


 プラスチックの入れ物には網が敷いてあり、その網をすり抜けて小さな丸いフンが下の受け皿に落ちるようになっている。だけど取り換えるのが遅すぎた所為か、みっちりと大量にコロコロとしたフンが網ギリギリまで詰まっていた。


「やべー、ギリギリだったな」


 これ以上放って置いたら、きっと溢れだしていただろう。

 それにたっぷりとしたこの重さ……下に敷かれているのはペットシーツか?


「うわ~これが匂いの元凶だなっ……!」


 うさぎの尿は結構臭い。マスクをしていない事を俺は悔やんだ。

 俺は目を眇めて、顔をなるべくトイレの容器から遠ざけた。古新聞を広げてその上にトイレを置く。


「これはこまめに変えないと駄目だろ……」


 どうやらペットシーツを取り換える必要があるらしい。カラーボックスを覗くと……それはキチンと分かりやすく保管されていた。


「さすが、みのり」


 シッカリ者の彼女らしい。


 出て行った相手を褒めても何も良い事は無いが、こうして実際作業をしてみると、ケージ横のカラーボックスには必要な物が取り出しやすく作業しやすく整理されているのが体感としてよく分かる。数ヵ月おそらくずっとこの状態だったのに、関心を持たない俺は全くその事に気付かなかったのだ。


 しかし先ず、先にこのフンと古いペットシーツを捨てなきゃな。

  

 軍手のままトイレとなっている三角形の入れ物の網を取り外す。容器に溜まったコロコロしたフンをペットシーツごと新聞紙に慎重に下ろし、ガサッとまるまる包み込む事にした。そうしてコンビニの袋にそれを押し込んで、キュッと口を閉めてしまう。


「ふー……」


 顔を背けながらの作業を終えて、一息吐く。

 うん、袋に入れちまえば匂いはかなり落ち着くな。……でも後で二重にしとこう。


 ペットシーツの横に常備されたウェットティッシュを使って、トイレ容器の汚れを簡単に取り除き、新しいペットシーツを三角形に折りたたんで底に敷いて網を戻した。それからスッキリと綺麗になったトイレを、ケージの同じ位置に戻して―――




「あーっ、やぁっと終わった……!」




 ゴミを纏めて、額の汗をぬぐう。

 ああ……疲れた……。


 振り返るとヨツバが後足で立ち上がり、両手で顔をコシコシと洗っていた。

 その長閑な様子を目にして、再び溜息が漏れる。


「ヨツバよ……少しは俺の苦労をねぎらってくれ」


 まるで俺に感心を示さずひたすら自分の毛繕いに熱心に取り組むヨツバを目にしてふと、既視感を感じた。


 挨拶もまともに出来ない新人が、男子トイレで熱心に前髪を弄っていた様子を思い出したのだ。




「お前身だしなみばっか気にしてねーで……少しは働けよ」

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