表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの使命は、悪役お姉さまを守ることです!  作者: 鳴田るな
承:四天王制圧編~vsモナモリス
57/197

3-2.あれから少し変わったもの、変わらないもの

 キルル先輩の事があってから、先輩関連についてはそれなりに落ち着きました。問題はそのほかの人達のことです。



 まずはお姉さま。

 一番最初に違和感を覚えたのは、強制イベント直後の事でした。

 絶対わたくしが守るって言った言葉を全力で拒絶したわけですから、さぞかしこっぴどく怒られると思ったのに、お姉さまはあの時私が彼女にしたことに何も言いませんでした(かわりとは絶対に思いたくないけど、朕からは簡単に命を投げ捨てるんじゃありませんって怒られた。なんか、納得いかない)。


「無事に戻ってきてくれたのなら、それでいいの」


 ごめんなさいって言った私に対する返事はそれだけでした。拍子抜けして、怒ってないんですか? とおずおず尋ねてみたら、


「……どうして?」


 彼女は天使のように愛らしい微笑みを浮かべ、小首を傾げて私にそう言うのです。お姉さまの笑顔はいつも通り麗しくて、どの人よりも綺麗で、魅力的で、なのに――。


 私は気が付くと思わず反射的に、飛びつくようにしてお姉さまを抱きしめていました。彼女は前と全く同じ、くすくすと笑って私を抱きしめ返して下さいました。


 だけど私は同じじゃいられなかった。お姉さまとのハグなんて幸せなの頂点のはずなのに、なぜか不安で不安でたまらなくて。


 逃げていく彼女をつかまえておこうとでもするように、私はしばらく全身を震わせながらもぎゅっと、彼女の女性らしくまろやかで華奢な身体に縋り付いていたのです。


 わたしはあなたのそのかおをよくしっている。

 そのかおをしたあなたは、だまってとおいところにいってしまう。

 とおくて、とおくて。にどとてのとどかないところへ。

 ――だから、こんなにもわたしは。


 いつの間にか溢れていた涙を、困ったように拭ってもらえるまで。

 ……どうしてあんなに泣いたのか、自分でもわからなかったんですけどね。



 それからのお姉さまは、相変わらず私に優しくて、仕事をてきぱきとこなしていて、お紅茶パーティーで毎回お茶が冷めるのを待っている。攻略対象者たちとも、相変わらず距離を取って静観しています。そうして過ごしていると、前と全く変わらないように思えます。

 けれど、どうしてだろう。私の錯覚なんだろうか。

 同じように過ごしているはずなのに、どこか彼女が遠くなったように感じる。



 次にリオス。


 相変わらず王様業は忙しそうですが、サボりは手慣れてますから、深夜はもちろん、お前今公務中だろって時間でもフラメリオの所に定期的にやってきます。私と鉢合わせるとからかってくるので、当然こっちも黙っておらずに応戦するわけですが。パワーアップしたはずなのに未だに相手の態度が舐めプじみているのが心底イラッと来るところではあるんですが。なぜか技をかけたと思ったら倍返しされていたって状態が今に至るまで続いているんですが。

 えーと、そこじゃなくてですね。


 奴は前ほどお姉さまの話題を出されても露骨な嫌がり方をしなくなったのです。


「お姉さまのこと邪な目で見たら承知しませんからね!?」


 とか、前に私が言うと表情を失くして一瞬黙り込み、それからふっと悪い笑みで私のシスコンっぷりをからかってくるのが定番だったわけです。が、最近はそういうことを言うと、一応眉を顰めたりはするものの、ふーんとか、あーわかったわかったみたいなリアクションなんですよ。その後でシスコンをネタにからかわれて口論から物理的および魔術的どつきあいに発展することは全く変わらないんですが……。


 どう思います、この微妙だけど確かにあるテンションの差。なんか奴に、余裕みたいなものが出てきた気がしませんか?


 不気味なのは、それでも実際のお姉さまに対する態度は同じに見えるんですよ。必要な件でしか近づこうとしないし、会っても二人とも目を合わせようとしないし、業務連絡だけ。ホントもう、彼らの関係ってびっくりするほど冷たいですからね。だから見た目は全然、二人の距離は変わらないように見えるわけです。


 ……気にし過ぎ、なんでしょうか。

 リオスもお姉さまも私が時にはそれとなく、時には直球であっちをどう思ってますかって聞くと、口をそろえてあいつには近づきたくないって言いますし(お姉さまはもうちょいエレガントな物言いしてますが)、私がこっそり二人を物陰から窺ったり面と向かって睨みつけていても、お互いに避け合っている態度は偽りでなく思えます。


 でもやっぱり、何かが二人の間で変わったんじゃないのか。本当に本当に些細なことなんだけど、少しだけ前と空気が違うんです。

 前と同じはず。でも、何かが前と違う。前には感じられなかったずれとかわざとらしさみたいなものがふとした瞬間に感じられて。私の心の扉がまた、とんとんと叩かれる音がします。



 前と同じような生活が続いて、でも何かが前と違っていて。

 私は何かをしなくちゃいけないのに、状況を改善する有効な手段はわからなくて。



 こうしているだけではだめだとわかっているのに。でも、だったらどうすればいいの?



 得体のしれない不安と焦りのようなものがこみあげてきて、わたわたして、時には叫び出しそうになって――。

 フラメリオに電波語で遠まわしに励まされて、肩の力が抜けて落ち着く。ええ、はい。ここのところの私って大体そんな感じです。


 いや、本当に、師匠って揺るがないね。いつでもどこでもマイペース、強制イベントが起きようが起きまいが一貫している。

 あ、一応確認しておきましたけど、寝ている間に魔改造とかされてなかったみたいなんで心底安心しました。


「リオスがうるさいし、吾輩は気長に待っているからね。公平に合意を得てから事に及ぶつもりだよ」


 とのこと。

 うん、後半は聞かなかったことにしよう。師匠がその時開いてた本が、人間の解剖のスケッチだったってことも見なかったことにしたい。写真の様に見えるけど手書きって辺りも知らなかったことにしたい。

 うわああん、深く考えると精神衛生上よくないからなるべくスルーしてるけど、やっぱりフラメリオって頭おかしいよー、怖いよー!

 しかもそんな風に思うと、


「うん、吾輩に対する態度はそれで正解だよ、アデル」


 とかニコニコしながら言ってくるし。だから心を勝手に読むな!


「だったら早く読まれない術を身に付けるんだねえ」


 この怒り、どこにぶつければいいですかね。修行ですか。自主鍛錬ですか、そうですか。わかりました、頑張ります。くっそー、私は本気で怒ってるんですよ、だからその見守る感じの生温かい眼差しはやめるのです、ふぬー!

 そうですよ。何をすればいいかわからないんだったら、私は今まで通り明るくあり、日々己を磨き、来たるべき時に備えるのです。――少なくとも、腐って何もできなかったり自暴自棄になるよりは、その方がずっとましなはずだって、信じて。




 ……あ、あと、その。いや別に、気にしてるってほどじゃないんですけど。気になってるって言えばなってますけど。そんな、お姉さまや朕王のことほど憂慮すべき問題ではないのかもしれませんが。いえ、その、ぜんっぜんね、本当にもう、些細なことだってわかってはいるんですけどね。強制イベント後の対人関係の変化と言えば、もう一つあって。



 最初は気のせいだと思ってたんですよ? でもこう、回数続いちゃうとですね、気が付かざるを得ないじゃないですか? しかもなんか気のせいで済ませられないレベルに露骨だとね?




 なんか私、強制イベントが終わってからずっと、避けられてるみたいなんですよね。

 誰にって、だから、その。

 ……ディガンにです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ