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第2話 ヴァズラエル発進

 ヴァズ何とか、もといヴァズリアント・ヴァズラエルのパイロットに名乗りを挙げたのは、何とYukiさんだった。

「ロボットの操縦とか、一切やったことはありませんけど、でも挑戦してみたいです!」

 そのチャレンジ精神、俺も見習いたい。

「よし決まりだね。じゃあこのスマホを持って乗り込むんだ。乗り込んだらスマホを所定の位置にセット、すぐ分かると思うよ。それから操縦方法はワタシが教えるから安心して」

「分かりました、では!」

 Yukiさんはすぐさまヴァズラエルに乗り込んだ。

「準備出来ました!このレバーを動かせば良いんですよね?」

「その通り、分かりやすいでしょ?」

「これなら出来そうです!」

「では、ヴァズリアント・ヴァズラエル、発進!」

 地上に向かって伸びる出撃用の扉が開き、ヴァズラエルがそこを通っていく。

「モニターを観てごらん。これが今の地上の様子だよ」

 モニターには、地上に出撃したヴァズラエルが映し出されていた。基地内で見た時よりも機体の青色が鮮やかな気がする。そしてもう1機、赤色の機体が立っていた。

「あの赤いロボットは…?」

「あれは『ヴァズリアント・ヴァズレンティノ』、何者かによって奪われた機体だよ。今回の任務はそのヴァズレンティノを奪還することさ」

『こちらYuki、あの赤い機体を倒せば良いんですよね?』

 Yukiさんから通信が入る。この状況で冷静なのも凄い。

「出来れば無傷で持ち帰れれば良いんだけど」

『やってみます』

 それにしても事案発生からここまで、かなり時間があったはずなのに逃げようとしていない。むしろヴァズラエルの出撃を待っていたかのように、ヴァズレンティノは剣を持ってヴァズラエルの方へ向かっていく。

 ヴァズラエルはヴァズレンティノの攻撃を受け止めた。しかしここからどうするんだ?

淡雪(あわゆき)くん、ヴァズレイヤーを召喚だ!左側のボタンを押して!」

『承知しました!』

 その直後、ヴァズラエルの背後から剣が出現し、手元にやってくる。さあここから反撃開始だ。

 お互い剣を使った激しいバトルが繰り広げられる!…のかと思いきや、呆気なく決着が着いてしまった。そりゃあ今日初めてロボットを操縦しているのだからしょうがない。ヴァズレンティノに剣を突き付けられるヴァズラエル。これでトドメかと思われた。

『僕の勝ちだ』

 聞いたことが無い声が通信で入ってきた。

「やっぱり、君は八橋くんだね。今すぐ戻って来るんだ。まだ引き返せる!」

『それは無理な相談だな、阿仁合(あにあい)。この戦いでヴァズレンティノの性能は理解した。僕のやるべきことはここから始まる』

『まだ、やれますッ!』

『ヴァズラエルのお嬢さん、僕のことは追わない方が身のためだ。次に会った時、命の保証は出来ないぞ。じゃあな』

 ヴァズレンティノは天高く飛んでいった。

『このままではヴァズレンティノを取り逃してしまいます!』

「淡雪くん、君はよくやった。だから追わなくて良い、帰ってくるんだ」

『そうですよね、今行っても勝てっこないですよね。承知しました』


 ヴァズラエルは県庁地下の基地に帰還した。ヴァズラエルから降りてきたYukiさんに化学者が話し掛ける。

「淡雪くんがこのヴァズラエルに乗ってくれて本当に助かったよ」

「すみません、ヴァズレンティノを取り逃してしまって」

 Yukiさん、あなたの落ち度ではないと思うのですが。なんという正義感。

「いやこればっかりはしょうがないさ。こっちこそごめんね。突然こんなことに付き合わせちゃって。でもねこれで分かったよ、やっぱりこのヴァズラエルは淡雪くんが乗るに相応しい機体だって」

「そ、そうなんですか?」

「ワタシの見立て通りだったね。実は君たち5人がどの機体に乗るのか、ワタシの中で決めていてね」

 そう言って化学者はホチキス止めされた紙を取り出した。

「ヴァズラエルは淡雪くん、ヴァズリータは薬師堂(やくしどう)くん、ヴァズルカンは稲手くん、ヴァズレンティノは小野くん、ヴァズロルフは八王寺(はちおうじ)くん、って感じ」

 さっきの会話から、『淡雪』というのがYukiさんだと分かるとして、他はどなた?あ、稲手さんも分かるか。でも他はどなた?そして俺の機体はヴァズレンティノだったんだな。強奪されちゃったけどどうすんの?

「あのー、俺からいくつか質問あるんですけど、良いすか?」

「何かな、小野くん」

「誰がどの機体に乗るのか、本名で呼ばれてもさっぱりなんですよ。まあ本人が分かれば良いっちゃ良いんですけど、一応仲間なんで把握したいというか」

「私が淡雪、淡雪紗世(さよ)です」

 Yukiさんの下の名前は『紗世』なのか。素敵な名前だ。あれこれさっき同じことをYukiさんも言っていたな。

「あーしが薬師堂ね、薬師堂愛華(あいか)

 ラブコはそういう名前ね。ふーん。

「…そらは、言わずもがな」

 いなてっちはいなてっちか。

「小生が八王寺(らい)。来、つまり『来い』だから『カモン』なんですよ」

 芸名の由来なんか誰も聞いて無いぞ。

「あ、申し遅れちゃったけど、ワタシは阿仁合新太(あらた)。ヴァズリアントシリーズを開発した本人だよ。そしてヴァズレンティノを奪ったのはワタシと共にヴァズリアントシリーズの開発をした『八橋湧作(ゆうさく)』ね」

「なるほど、だいたい分かりました。まずこの質問が1つと、あともう1つあって、あのですね、俺はヴァズレンティノに乗る予定だったんですか?」

「そうだよ」

「でも今ここにありませんよね?」

「そうだね」

「じゃあ俺はどうすれば良いんですか?」

「うーん、ヴァズレンティノが奪われたのは想定外だったからね、逆にどうしたい?」

「え!?どうしたいも何も…」

「でもここに足を踏み入れたということは、小野くんはもうこちら側の人間だね」

「ということは?」

「補欠、ってことにしようか」

「補欠、ですか」

 それを聞いてラブコがクスクスと笑っている。くそっ、今に見ていろよ。

「補欠だって重要な仕事だよ。欠員が出た時に助かるし」

「そりゃあそうですけど」

「…ドンマイ…」

 いなてっちは俺がギリ聞こえる声量でボソッと呟いた。

「小野くん、質問は以上かな?」

「まあ、はい」

「よろしい、では改めて、秋田県特別PR大使就任おめでとう!君たちは表向きでは特別PR大使だけど、実際はこっち、『秋田県防衛機甲特別部隊』の隊員なのさ。入隊おめでとう!」

 別に入隊した覚えなど無い。もうこれ完全に騙されてますね。

「君たち5人にはこのロボット、ヴァズリアントシリーズのパイロットとして活動してもらうことになる。先ずはヴァズリアントシリーズについて説明しよう。ヴァズリアントシリーズとは、SNSでの『バズ』から生み出される新エネルギー『ヴァズリウム』を動力源とする、まさに『大SNS時代』に相応しいロボットさ」

「SNSのバズりをエネルギーに、なかなかユニークですね」

 何カッコつけて言ってるんだ、カモンは。

「でしょ?で、ヴァズリウムを生み出すためにはSNSでバズらないといけない。今淡雪くんが持っているヴァズリアントシリーズ専用のスマホで各種SNSに何かしらの投稿をして、いいねとか再投稿とか高評価とかコメントなどなど、投稿が拡散されればされるほどヴァズリウムは多く生み出されるんだ。スマホに入っているヴァズリウムが満タンになると、これは個人差出ちゃうんだけどね、ただ移動するだけなら最大12時間も機体を動かすことが出来る。ヴァズリウムを通常より多く消費して速く移動したり、大技を発動したりも出来るよ」

「さっき私、このスマホで何もSNSに投稿していませんでしたが、何故動かせたのでしょうか」

 Yukiさんはスマホを手に取って言う。

「それは予備のヴァズリウムさ。予備でも最大1時間は動かせる。一応ヴァズリウムはSNSでバズらなくても、人工的に生み出せるには生み出せるんだけどね、少量でも精製するの結構難しいんだよ。だから君たち5人の出番ってわけ」

「あーし良く分かんなくなってきた」

 ラブコみたいなバカには分からんだろうな。

「多くのフォロワーを抱える小生たちならヴァズリウムを簡単に、しかも多量に生み出せる。まさに小生たちには持ってこいですね」

「ヴァズリウムを生み出すというのは分かりましたが、私たちがロボットのパイロットである必要はあるのですか?」

 確かにな。

「さっき『個人差が出る』って言ったんだけど、自分で生み出したヴァズリウムを使うことが出来るのは自分だけなんだ。他の人のヴァズリウムを使うことは不可能なのさ。ただし予備のヴァズリウムを除いてね。あれはちょっと特殊で誰でも使えるやつだよ」

「…ヴァズリウムは…地産地消…フフ」

 いなてっち、何が面白かったんだろうね。

「そういえばここは部隊なんですよね?他に隊員はいないんですか?」

 俺の質問に、待ってましたと言わんばかりに3人(男性2人、女性1人)が現れた。

「ワタクシが隊長の将軍野(しょうぐんの)玄矢(げんや)だ」

「ボクはオペレーターの流水(ながれ)青一(せいいち)です」

「同じくオペレーターの風吹(かざふき)(みどり)です」

「隊長って…知事じゃないですか!」

 オペレーターの2人は初めまして。だが隊長はもう見覚えしかない。さっきこの人から委嘱状貰ったよ。

「小野くん、ここでは『隊長』と呼びたまえ」

「失礼しました、隊長!」

 変に細かいな知事、いや隊長。

「さっきはワタシ1人で全部やっちゃったけど、これからは隊長を中心にやっていくつもりだから、よろしく!」

「「「「よろしくお願いします」」」」

 あれっ、俺以外の4人、ロボットのパイロットとして受け入れているのか?「そんなの怖くてやりたくないよー」みたいなのも無いの?完全に受け入れちゃうのかよ。

「小野くんは何か不満かな?」

 何か隊長の目付きが怖い。

「ええ、何か納得いかないんですよ」

 もう言っちゃいます。日本人はみんな流され過ぎ。ここで言っておかないとダメだ。

「みんな、本当に納得して『よろしくお願いします』なんて言っているのか!?ヴァズリウムなんていう変なエネルギーで動くロボットのパイロットとして戦え、なんて言われて怖くないのか?逃げ出したくないのかよ!」

 どうなんだよ、みんな…!

キャラクター紹介!

(2)Yuki/淡雪紗世あわゆき さよ


 一人称「私」、小野次郎曰く「美人」な女性。SNS「インステッドグラム」にてフォロワー200万人を抱える人気インステッドグラマーにして、ヴァズリアント・ヴァズラエルのパイロットでもある。

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